NHK大河ドラマ『べらぼう』にはまっています。吉原遊郭と江戸中期の吉原に生まれた“出版人”の蔦屋重三郎を描くというチャレンジングな設定で、「わっち」「ありんす」「くださんし」「ござんすねー」など廓言葉が効果的に使われて、江戸情緒あふれる舞台設定とスリリングな展開がたまりません。伝説の花魁、五代目瀬川(小柴風花さん)が吉原を去る時に言った「おさらばえ」にぐっときた方も多いのではないでしょうか。いよいよこれから後半戦。浮世絵師の喜多川歌麿がついにメジャーデビュー、東洲斎写楽や葛飾北斎は登場するのか、誰が演じるのか、などなど楽しみはつきません。

浮世絵と言えば歌川広重の「東海道五十三次(天保5年、1834年ごろ)」が一般的にはなじみ深いですね。同テーマは広重だけでなく北斎も描いており、広重にさかのぼること30年ほど前に東海道シリーズを出しています。ということで、今回は夏休み「富士山グルメ」第2弾。「べらぼう記念」と題し、広重と北斎の足跡をたどりながら東海道の3つの宿、沼津宿(静岡県沼津市)、吉原宿(同県富士市)、由比(ゆい)宿(静岡市清水区)を巡り、絶品グルメをご紹介したいと思います。この界隈には海の幸の名店が軒を並べていますが、3エリアに共通するのが「漁港直営の食堂」があること。それぞれの名産と富士山の絶景をお楽しみください。

沼津・内浦港の『いけすや』はアジフライが絶品

東から西にまいりましょう。最初にご紹介するのは沼津宿にある漁港直営食堂です。日本橋を出ると次は品川宿、川崎宿、と続き、駿河(静岡県)の国に入って最初が三島宿(三島市)、その次が沼津宿となります。

沼津と言えば多くの漁港がありますが、中でも市の南部にある内浦港はアジの生産出荷量で全国有数とか。ならばと、直営のお店でアジを食べたくなるのが人情というもの。あるんです内浦に。その名も『いけすや』。

いけすや

注文したのは「活あじふらい」を単品で、追加で「活あじのわさび葉寿司」を頼みました。アジフライってなんでこんなに人を幸せにするんですかね。当店も身がふっくらで、泣きたくなる美味しさ。あわせたお寿司は、わさびの爽やかな香りがアジフライの油っこさにぴったり。他にも「活あじ丼」や「干物定食」などアジを中心に地元のお魚を味わうことができます。最後に同地から見える海超しの富士山をお楽しみください。

いけすや(活あじふらい)

いけすや(活あじのわさび葉寿司)

『いけすや』界隈から見た富士山


名物は「しらす」の『田子の浦港 漁協食堂』

沼津を出て、富士山を右に見ながら西に移動すると、ほどなく吉原宿に到着します(冒頭記した吉原と地名が一緒ですが、これはたまたまのようです)。当地にも『田子の浦港 漁協食堂』という直営店があります。

田子の浦港 漁港食堂(富士山を望む)

田子の浦港 漁港食堂

名物は何と言っても「しらす」です。この界隈はしらすが有名で、「富士しらす街道」という道もあるくらい。注文したのは生しらすと釜揚げしらすを両方食べることができる「ハーフ丼」。筆者のようなワガママな客向けにこういうメニューがあるのは嬉しいですね。出来上がるまで場内をぶらぶらしたら、生牡蠣を売っているではないですか。北海道産らしく、見た目からしてめちゃくちゃ美味しそうです。少々値は張りますが、メイン料理を前にビールと牡蠣で大満足の前菜となりました。

田子の浦港 漁港食堂

ほどなくして「ハーフ丼」が出来ました。ご覧のとおり、見事なしらすのハーフ&ハーフです。同店は漁港がそのまま食堂になったようなつくりになっています。目の前に船揚場が見える立地でいただくしらす丼。美味しくないわけがないですね。店内には、北斎が書いた「東海道江尻田子の浦略図」が展示されていました。解説を読んでみると、同浮世絵はしらす漁の場面という説があるようです。昔からこの界隈はしらすで栄えてたんですね。帰り際、食堂と富士山をパチリ。

田子の浦港 漁港食堂(ハーフ丼)

ちなみに田子の浦と言えば、奈良時代の歌人山部赤人が「田子の浦に うち出でて見れば 白妙の 富士の高嶺に 雪は降りつつ」と詠んだ場所です。日本人なら誰でも知っている地名ですが、実は赤人のころの田子の浦はもっと西の由比宿のあたりだったようです。

田子の浦港 漁港食堂(牡蠣)

田子の浦港 漁港食堂(船揚場をのぞむ)

由比は日本一の桜エビ!『浜のかきやげや』

その由比界隈にも漁港直営の食堂があると聞き、いてもたってもいられず、すぐ翌週に向かいました。吉原から20キロ弱で由比という宿に到着します(北斎、広重の浮世絵では「由井」表記)。当地から次の宿である興津(こうず)の間に立ちふさがるのが有名な「さった峠」。赤人のころはこの界隈を田子の浦と呼んだとされる説が有力で、広重の浮世絵「由井」でもさった峠から見た綺麗な富士山が描かれています。広重とほぼ同じアングルで撮影した筆者の写真をご紹介します。

浜のかきあげや(さった峠から富士山をのぞむ)

浜のかきあげや

さて、由比と言えば「桜エビ」が名物で、JR東海道線の由比駅前には「日本一の桜エビ」の看板があるほど。そして当地にある漁港直営の食堂が『浜のかきやげや』です。場所は少しわかりにくいですが、駅からほどなくして太平洋を目の前にのぞむ食堂に到着します。

いただいたのは「ミニ生桜えび丼」と単品で「かきあげ」。やはり両方食べてしまいました。生の桜えびはプリっとした触感がたまりませんし、かきあげの甘い味わいも最高です。さった峠からの桜エビツアー、ぜひ夏休みにいかがでしょうか。ちなみに筆者は自転車で峠に登りましたが、なかなかの激坂でした。赤人から北斎、広重まで、昔の人の健脚に驚くばかりです。

浜のかきあげや(ミニ生桜えび丼)

浜のかきあげや(かきあげ)

今回は、東海道の漁港直営食堂をご紹介しました。それにしてもアジもしらすも桜えびも罪な食材です。生あじ丼かアジフライか、生しらすか釜揚げか、生桜えびかからあげか。これほど選択に困るメニューもありません。江戸時代はどんな食べ方をしていたのか、北斎や広重に聞いてみたいものです。

文・写真/十朱伸吾

おとなの週末Web専属ライター。旅と食とビールと競馬をこよなく愛する。ツーリングとゴルフも趣味。ツーリングの成果でダイエットにも成功。

【画像】漁港直営食堂3選のまちがいなく旨い海鮮料理の数々(14枚)