ピアニスト・角野隼斗はなぜ注目を集めるのか。Cateen(かてぃん)としての活動や詳細プロフィールからジャンルを越えた魅力を徹底解説

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【角野隼斗 - 7つのレベルのきらきら星変奏曲 / THE FIRST TAKEを元記事で視聴する】

確かな技術に裏打ちされた音楽性と独自のアレンジ力で、ピアニストの肩書きに留まらない活動を展開している角野隼斗。グローバルに活躍する彼がどうして世界中から注目を集めているのか?これまでの活動を振り返りながら、その魅力を解き明かす。

■ジャンルの垣根を越える唯一無二のピアニスト

角野隼斗(読み:すみの はやと)

・生年月日:1995年
・OFFICIAL SITE https://hayatosum.com/
・X(旧Twitter) https://x.com/maofujita_piano
・Instagram https://www.instagram.com/hayatosumino/
・facebook https://www.facebook.com/hayatosumino#
・YouTube https://www.youtube.com/user/chopin8810

1995年に生まれ、3歳でピアノを始めた角野隼斗。当時よりさまざまなコンクールで受賞を重ねてその才を発揮してきた。そして国内の名門である開成中学・高校、東京大学工学部に進学し、人工知能や音響工学について学ぶ。当時はロックやジャズも愛好したり、ドラムを叩いたり、『東大ピアノの会』で活動したりしていたものの、研究に専念。しかし大学院生のころ、“最後のチャンス”として2018年に国内最大級のピティナ・ピアノコンペティションの最上級レベルである特級でグランプリを受賞したことがきっかけとなり、本格的にピアニストの道に進むことになる。

そのいっぽうで、プロのピアニストとして世に躍り出る前より、勉学や研究に没頭する傍らで2010年にYouTubeのチャンネルを開設。ポップスナンバーやゲーム音楽、ボカロ曲などのアレンジ演奏をアップロードし、『Cateen(かてぃん)』として活動を展開してきた。2020年、コロナ禍でコンサートが軒並み中止になった際により積極的に動画をアップロードすることで、より“Cateen=角野隼斗”の知名度は上がることになり、現在は140万人を超えるチャンネル登録者数を誇る。

▼Cateen かてぃん

2021年には、『ショパン国際ピアノコンクール』に出場。この大会は『エリザベート王妃国際音楽コンクール』や『チャイコフスキー国際コンクール』と並ぶ世界3大コンクールであり、ショパンの作品のみで世界の優秀な若手ピアニストが実力を競うものだ。世界で活躍する若手ピアニストの登竜門でもあり、角野隼斗はこのコンクールのセミファイナリストに選出され、世界で注目を浴びることになった。

▼HAYATO SUMINO - first round (18th Chopin Competition, Warsaw)

2023年、2024年には全国ツアーを実施。24年の最終日は多くのアーティストにとっても聖地的な存在であり、ピアニストとしては異例の日本武道館でライブを実施し、改めて唯一無二の異彩を放った。他にも、ジャズ・ミュージシャンにとっては定番のブルーノート東京や、ロック・フェスでお馴染みの『FUJI ROCK』にも登場している。

▼角野隼斗 - Chopin:Heroic Polonaise (FUJI ROCK 22)

そして2024年、ソニー・クラシカルとワールドワイド契約を締結し、活動を世界に広げた。10月には『HUMAN UNIVERSE』をリリースし、これまでより一層、角野隼斗のパーソナルな部分や独自の美学が垣間見られるような、コンセプチュアルな音源になっている。

またソロ活動だけでなく、東京大学で出会った仲間たちと2019年にバンド“Penthouse”を結成して、そのメンバーとしても活動。シティポップとソウルを融合した独自の持ち味を発揮しており、その音楽性の確立に寄与している。これまでに2枚のアルバムをはじめ多くの楽曲をリリースしており、直近の2025年1月には『ナンセンス』を発表している。

▼Penthouse - ナンセンス[Official Music Video]

現在は、NYを拠点に活動中。クラシックだけでなく、ジャズなどの幅広い音楽を吸収しながら、また新たな音楽を魅せてくれることであろう。

■角野隼斗が注目される理由

◎ピアニストとしての確かな実力

角野隼斗は小学生時代より幾度となくコンクールで入賞を果たすなど、当時から確固たる実力を兼ね備えていた。一度は研究の道に進むものの、『ピティナ・ピアノコンペティション』の特級でグランプリを受賞したり、その後も『ショパン国際ピアノコンクール』のセミファイナリストになったりするなど、国内外のステージでしっかり評価を受けるに値する、ピアニストとして確かな技術を持ち合わせている。

現在は演奏に限らずマルチでジャンルを超えた活動を行なっているが、土台にはそうした確かな実力があるといえる。また、東京大学・大学院やフランスへの留学などにおける音響工学や人工知能に関する研究で培われたアプローチや、ロックやジャズにも傾倒してきたという角野隼斗の飽くなき音楽への探究心が加わることで、独自の音楽性に結びついたと言えよう。

◎YouTubeの活動

角野隼斗は高校生であった2011年、“Cateen(かてぃん)”を名乗りYouTubeに動画をアップロードし始め、今や140万人を超えるチャンネル登録者数を誇っている。そこで演奏されているのは、宇多田ヒカルや米津玄師、YOASOBI、LiSAといったポップスの楽曲や、ジブリの映画音楽など。既存曲が多く、それを角野隼斗が自由な創造性を発揮しながら演奏しているのがYouTubeにおける活動の特徴だといえる。オリジナルの魅力を損なうことなく、角野隼斗の即興性とアレンジ力を付加し、楽曲の新たな可能性や聴きどころを発掘している。

▼one Last Kiss - 宇多田ヒカル (Hikaru Utada) Piano

▼炎 (Homura) / LiSA (Piano)

こうした活動は、2022年に登場した『THE FIRST TAKE』でも活かされている。シンガーソングライターのmiletとともに登場し、「Ordinary days」を披露。変幻自在に音楽を展開しながら、miletの伸びのある歌声を乗せてドライブする大きな船のような存在感を発揮している。

▼milet×Cateen - Ordinary days / THE FIRST TAKE

◎ジャンルに囚われない音楽との向き合い方

もともとはクラシックをベースにピアノを始めた角野隼斗。しかし、その興味はロックやジャズなどにも向かい、大学時代にはバンドサークル“東大POMP”にも所属したり、現在もシティポップとソウルをメインにした“Penthouse”の活動を続けたりするなど、ジャンルレスな活動を展開している。

ソロの演奏では、クラシック音楽に長らく取り組むことで培われた技術をベースに、得意としている即興演奏や興味のあるジャズも取り入れているため、ガーシュウィンやカプースチンといったジャズやポップス要素の強い作曲家の音楽にも強い。最新アルバム『Human Universe』では、アコースティック・ピアノを用いてクラシック作品を弾いているが、空間の広がりを感じさせる響きの拡張や、編曲による独自のハーモニーやリズムの味付けなど、そのジャンルに留まらない工夫を多く施していることがわかる。

▼​​Human Universe

■『THE FIRST TAKE』で披露した「きらきら星変奏曲」

そんな角野隼斗が『THE FIRST TAKE』に登場。先述したように、彼はすでにmiletと一緒に演奏を披露しているが、単独で登場するのは初めてのことである。

▼角野隼斗 - 7つのレベルのきらきら星変奏曲 / THE FIRST TAKE

演奏したのは、「7つのレベルのきらきら星変奏曲」。“きらきら光る”でお馴染みの「きらきら星」をもとに変奏されていて、かつてモーツァルトが書いた「きらきら星変奏曲」からもインスパイアされたものだと見受けられる。本来の旋律をもとに、角野イズムがふんだんに盛り込まれながら旋律が変化していく。モーツァルトに劣らぬ多彩なアレンジ力を感じさせるナンバーだ。すでに2020年にYouTubeでも演奏がアップされていたり、最新アルバムにも収録されたり、アンコールでも演奏されたりするなど、角野隼斗にとって大切な作品でもある。

▼7 levels of “Twinkle Twinkle Little Star”(きらきら星変奏曲)

今回は、『THE FIRST TAKE』のために新たなアレンジを散りばめて演奏。特徴的なTシャツを着ながら、幾分かリラックスしながら演奏を始める角野隼斗。ムーディーかつエモーショナルな第2変奏やジャジーな第3変奏、妖艶で幻想的な第4変奏を経て、急速に演奏に熱量と帯びてくる。

スピード感とともに音の表情は目眩く変化していき、先走る列車のようなダイナミックな疾走感とともに演奏を終える。少しだけ登場する小さなトイピアノが、いいスパイスになっているのもまた粋だ。

■角野隼斗をもっと知るなら!観るべき、聴くべき作品5選

◎情熱大陸

▼【未公開動画】ピアニスト角野隼斗がショパンを奏でた “ある日” まさかの出来事。

ショパン国際ピアノコンクールを控えた、2021年のとある公演日の舞台裏に密着したもの。角野隼斗が意識しているという音のタッチのポイントや、演奏する上で日頃意識している師匠の教えなど、ラフでありながらつぶさに語る貴重な演奏前の舞台裏を映し出している。それを踏まえた上で後半にフルバージョンで収録されているショパンの練習曲第11番「木枯らし」を聴くと、より角野隼斗の演奏を深掘りできるだろう。また、本番前に発覚した“うっかりミス”も、ステージでは見られない素顔として楽しめるに違いない。

◎3分クッキングを壮大に弾いてみた

角野隼斗のYouTubeで時折登場するお馴染みのトイピアノと、アコースティックピアノの2台で、『キユーピー3分クッキング』(日本テレビ)のテーマ曲を演奏している。聴き慣れた弾んだサウンドは童心あふれるトイピアノで弾き、3拍子のリズムはアコースティックピアノに任せることで、まるでおとぎ話を語るかのような作風に。徐々にアコースティックピアノだけでスケールアップし始め、最後はドラマチックな音楽を聴かせる。聴き馴染みのある旋律がまったく表情の異なる変奏曲に変身している。

◎米津玄師 - 地球儀 (Piano)

2023年の夏に公開されたジブリ映画『君たちはどう生きるか』(宮崎駿監督)の主題歌となった米津玄師の「地球儀」を独自アレンジで演奏したもの。オリジナル本来がもつバラードならではの着実な足取りやエネルギーの強さはそのままに、強弱や音色の緩急を自在にコントロールし、歌心を溢れさせながらアレンジして演奏している。アレンジ力に長けている角野隼斗だが、本来の楽曲の持つ味わいを生かしながら演奏されている動画だといえるだろう。

◎Chopin: Piano Concerto No. 1 in E minor, Op. 11 (Live) - Hayato Sumino

2022年、ポーランド国立放送交響楽団が23年ぶりに来日。その際にソリストとして登場したのが、角野隼斗だった。演奏したのは、ポーランドが祖国であり、その前年にコンクールで角野隼斗が精力的に取り組んだショパンによる、ピアノ協奏曲第1番。第1楽章からいたって慎重に音を構築し、堂々とした作品に合わせてダイナミックな演奏を聴かせる。第2楽章では角野隼斗の最大の持ち味といっても過言ではない、澄み切った美しい弱音も堪能できることだろう。そして第3楽章は、オーケストラまでも引っ張っていくような存在感あるベースの音が印象的。角野隼斗の原点のひとつにクラシック音楽があることがよくわかる映像だ。

◎Hayato Sumino - Ravel: Boléro

本来であればオーケストラで演奏されるラヴェルのボレロは、同じリズムと旋律を楽器が代わる代わる演奏しながら、音楽の規模を拡大させながら進行していく作品だ。“管弦楽の魔術師”とも呼ばれるラヴェルだからこそ成し得た作品と思いきや、角野隼斗はこれをピアノのサウンドだけで演奏。スタジオに並ぶのは、大きなグランドピアノと、おそらく内部の弦に何かしらの細工を仕込まれたであろうアップライトピアノ。その2台で同じ旋律を多彩でバリエーション豊かな音色やダイナミズムで何度も繰り返し、最後は有頂天を成すかのように締めくくっている。

■角野隼斗最新情報をチェック!

現在、映画『角野隼斗ドキュメンタリーフィルム 不確かな軌跡』が上映されており、2025年にはNYにある音楽の殿堂・カーネギーホールでのリサイタル、2026年にはフィラデルフィア管弦楽団との共演が決まっている角野隼斗。今後の活動からも目が離せない。

TEXT BY 耼田 萌

▼角野隼斗最新情報はこちら
https://www.thefirsttimes.jp/keywords/6936/