日本郵政が“不動産デベ”に変貌中、次々消える一等地にある郵便局
日本郵政が“不動産デベ”に変貌中、次々消える一等地にある郵便局
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郵便料金値上げと不動産で赤字を解消10月1日から郵便料金が値上げされる。ハガキが現在の63円が85円に、84円、94円の封書(定形郵便)が110円に統一されるなどおおよそ30%高くなる。利用数の減少や物流コストの上昇というのが値上げの理由だ。その一方で、日本郵政と傘下の日本郵便(JP)が不採算事業である郵便局の売却や再開発に余念がなく、その跡地にはマンションや商業ビルが次々と建設されている。その象徴的な物件が麻布郵便局の跡地に建てられた日本一の超高級億ションでもある「麻布台ヒルズ(森JPタワー)である。また、賃貸住宅の取得・提携では「JP noie」などのブランドで、小石川、目白、三田、恵比寿、広尾等、人気の住宅地に進出。文京区小石川、江東区木場、新宿、西早稲田などでも不動産事業に乗り出している。新たなランドマークになった「麻布台ヒルズ」(上)/重厚な造りだった「麻布郵便局」こうしたマンションや商業ビル建設ためにグループ内に日本郵政不動産やビル管理のJPビルマネジメント、住宅管理のJPプロパティーズなどを設立。検討されている開発(最終的に売却可能性も含む)物件は数多い。実際、東京都内に限っただけでも麹町、九段、日本橋、京橋、芝、高輪、赤坂、外苑前、世田谷中町、中野など一等地に郵便局がその候補地とされている。なかでも郵便事業の発祥地のひとつの銀座郵便局は、築地市場跡地の再開発で注目されている。さらに、郵便局以外でも、メルパルク東京(芝)や白金社宅などが日本郵政案件の目玉物件になりそうだ。もちろん東京以外でも、札幌、横浜、名古屋、京都、神戸、松山、福岡、長崎、鹿児島などの拠点都市の大型物件が再開発される見込みだ。さらに不動産開発だけでなく、杉並区や港区では、老人ホーム等高齢者施設を新規に取得。保育園、保育所も都内を中心に10カ所程度、取得している。加えて高齢者施設の再開発も進めようと台東区日暮里で底地の取得にも乗り出した。京都府では学研やベネッセ、ニチイ学館と協力して物流施設も手に入れている。ここまでくるともはや、郵便会社ではなく、収益的には不動産デベロッパーというのがいまの日本郵政株式会社の実態なのである。その広がりはマンションや福祉施設だけにとどまらない。KITTE(キッテ/日本郵政グループの日本郵政不動産が大都市のターミナル駅前で展開する商業施設のブランド)は、商業中心の複合ビルで、東京、名古屋、博多の駅と直結。すでにオープンしている商業ビルは東京駅前のKITTE丸の内をはじめ、JPタワー名古屋、飯田橋グラン・ブルーム、札幌三井JPビル、JR、JP博多ビルなどが好調で、7月31日にはJR大阪駅と直結した「KITTE大阪/JPタワー大阪」が開業した。大手デベから熱い視線を浴びる日本郵便の都内の関係物件日本郵政では、5年間に5000億円規模の不動産投資を行い、2025年度は900億円程度の営業収益を目指している。こうした日本郵便が抱える不動産は、明治以降、国鉄による鉄道便時代の縁から、各都市の駅前の郵便局がそのまま同社の資産になっている。さらに同社の不動産資産は、全国主要都市にある社宅も加わり、いまや「JPの社宅を見たらマンションに化けると思え」という不動産業者もいるほどだ。なかでも世田谷の中町社宅、港区の白金社宅、愛知県の高見寮、福岡県の福岡泉寮などが大手デベロッパーから熱い視線を浴びている。前述の「JP noie」ブランドの賃貸マンションは、小石川、目白、三田、恵比寿、広尾等、人気住宅地に進出中だ。このほか、文京区小石川・江東区木場・新宿・西早稲田等でも乗り出している。この背景には、手紙を運ぶ郵便事業の市場の縮小がある。7月25日、日本郵便が発表した2023年度の郵便事業収支は、営業損益が896億円の赤字(前の期は211億円の赤字)。2007年の郵政民営化以降、初めて赤字に転落した22年度に続き、2年連続での赤字となった。原因は郵便物の減少と集配や運送の委託費が増加したことによる。こうした中で経営の立て直し策が不動産事業への進出なのだ。日本郵政の増田寛也社長は就任早々の記者会見で「よい土地がいっぱいある。そこでの展開をもっと進めたい」と発言。いま、まさにそれを遂行しているに過ぎない。昭和初期を代表する建築といわれた「旧東京簡易保険支局」(左)/工事中の様子(右)とはいえ、郵便局のある一等地の不動産は、元は国民の財産だ。しかも、こうした日本郵便関連の建物のなかには、戦前に造られた名建築もある。その1つが三井不動産に850億円で売却された旧逓信省東京簡易保険支局(前かんぽ生命保険東京サービスセンター)だ。この再開発をめぐっては、日本郵政や小池百合子東京都知事、開発する三井不動産に、部分保存を求める市民団体や建築学会から意見書が数々出された。しかし、出来上がったものは、外観やエントランスのごく一部に往時の装飾などが残されたものの、こうした意見を聞き入れたとは思えるものではなく、むしろ、開発されたマンションに箔をつける装飾として利用されている感が強い。その効果なのか1戸45億円という超高級物件を含む「三田ガーデンヒルズ」に姿を変えている。完成した「三田ガーデンヒルズ」2001年誕生した小泉純一郎内閣は「聖域なき構造改革」「民間にできることは民間に」「地方にできることは地方に」「改革なくして成長なし」をキャッチフレーズに「郵政民営化は改革の本丸」とされた。そして、郵政民営化民営化の是非を問うとして、05年に衆院を解散、郵政選挙が行われ、小泉自民党が大勝利。それに反対した自民党議員は落選、当選しても自民党を追われた。その結果、郵政の民営化が行われた。もちろん、改革を否定ものではないが、民営化した日本郵政は、国民の知らないところで、元は国有財産の日本郵便関連の不動産、郵便局が売却したり、取り壊され文化的価値のあるものがひっそりと姿を消している。そして、こうしたことが報道されることはほとんどない。小泉純一郎元首相(左)/小池百合子東京都知事東京都内ではさまざまなところで再開発が進められているが、そのなかには神宮外苑や日比谷公園の再開発もあるが、こうした再開発と郵便局の跡地の再開発も無関係ではないように思う。これら多くの再開発に関わるのは大手デベロッパーの三井不動産なのである。ちなみに、郵政民営化に反対する自民党候補者に対する象徴的な刺客になったのは東京10区の候補者に名乗り出た今の小池百合子都知事だった。