『ウルトラマンブレーザー』ワンカット空中戦はこうして生まれた! 田口清隆&小柳啓伍が語る裏話
第14話はメイン脚本で、田口さんとともにシリーズ構成も務める小柳啓伍さんが脚本を手がけ、SKaRDの諜報員的存在であるアオベ エミを中心としたシリアスなエピソードが展開。ワンカット風の演出で描写されたウルトラマンブレーザー&アースガロンVSデルタンダルの空中戦に驚愕したファンも多いはず。
今回は田口清隆さん、小柳啓伍さんの対談が実現。第14・15話を中心に、『ブレーザー』制作の裏話と今後の見どころを伺った!
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◆念願かなってのガヴァドン回◆
――第15話は、田口監督肝いりのガヴァドン登場回でした。
田口 えぇ、念願のガヴァドンでした(笑)。僕のほうで暖めていた話があったんですけど、それがすごく暗い話だったんですよ。ガヴァドンが出るのに。ガヴァドンなら中野貴雄さんに脚本を書いてもらいたいと思って。お願いしたときには気にしなくていいですと言いつつ、「一応僕もこんな話を考えている」と伝えました。それで中野さんが書いてきたプロットが、ほぼ皆さんがご覧になった内容で。「こっちのほうがいい」と、当初考えていた話は全部捨てました(笑)。
――ガヴァドンがだんだん大きくなっていくところが印象的でした。小さいガヴァドンがまたかわいくて。
田口 そうですね。今回の話のベースは初代『ウルトラマン』のガヴァドン回(第15話「恐怖の宇宙線」)と同じですが、子どもたちがガヴァドンAのデザインにこだわりを持っている、というところが違うんです。中野さんが、描いたガヴァドンの絵の大きさに応じて、だんだんサイズも大きくなるというアイデアを出してくださり、「これは面白い!」と思いまして。着ぐるみを特撮だけでなく本編でも使えば、2メートルと50メートルの二段階で出せるなってところで「イケる!」となりました。ただ、時間的な制約などで、個人的にやりきれなかった部分もあるんです。「やっとガヴァドンが撮れる!」と意気込んで、理想が大きすぎたからこそ、思い残すことも多いのが正直なところで……。まぁでも、ガヴァドンかわいかったです。
一同 (笑)
田口 いやー、かわいかった(笑)。
小柳 オブラートというか、ガヴァドンで包み込んだというか(笑)。
田口 ガヴァドンが全てを包み込んでくれました(笑)。
──小柳さんは、第15話の脚本や映像をご覧になっていかがでしたか?
小柳 まず脚本を読んで、あのセリフ回しは自分では書けないと感じました。田口さんもそれを求めて、中野さんにお願いしたとおっしゃっていましたし。今回シリーズ構成として、キャラクターの整合性を取ることにはかなり気を遣っていましたが、第15話の脚本は「こんなに変わってもいいんだ」と驚きました(笑)。
田口 「第15話はいいんです」「中野さんの脚本なんで」みたいな感じで(笑)。
小柳 田口さんから前フリを受けていたんですが、初稿が上がってきて「あ、こういうことか」と(笑)。実際に完成した第15話は、僕としてはすごく良いお話だったと思っていて。観たときにはちょっとホロっときました。第14話もゲントとエミのシーンで涙したんですが、第15話は自分に2歳になったばかりの子どもがいるからか、ジュンの涙にもらい泣きしてしまいました。
田口 それが中野さんテイストなんだよね。セリフが昭和風味だったりするんだけど、そこを変に直すとテイストが崩れちゃう。味付けが繊細というか、世界観が完成されているというか。中野さんの味は、中野さんにしか出せないんです。僕は脚本に対して「もっとこうしたい」と意見を結構たくさん言うほうだと思うんですけど、それが一番少なくなるのが中野さんの脚本。演出する側も、中野さんのテイストをちゃんと映像にするのは多分大変だと思うんですが、僕は結構好きだったりします。結果的に第15話は、僕の担当話では唯一、小柳さんが脚本を書いていない話数になりました。
小柳 いま中野さんの脚本のお話をしましたが、僕も田口さんからは「小柳さんも結構クセあるからね」「なかなか扱える監督はいないと思いますよ」と言われました(笑)。
田口 小柳さんが書いた脚本をちゃんと映像にするのは、まあまあテクニックが必要です(笑)。
――『ブレーザー』は同じ監督と脚本家のコンビで担当されることが多いですよね。何か狙いがあったのでしょうか?
田口 各監督には基本的に一緒にやりたい、コミュニケーションが取りやすい脚本家さんと組んでもらうように、自身で決めてもらっていました。僕が小柳さんにお願いしたみたいに、ほかの監督陣もやりたいことをやるなら脚本はこの人、というのがあるはずで。各監督には自分が思う一番いい話を作ってもらいたいし、そのための脚本づくりで変にモタついたらもったいないと思い、今回はこういうやり方をお願いしました。
小柳 ほかの脚本家の方では、縦軸に近い話数を担当してくださった継田淳さんの脚本は印象的です。読んでいて素で面白いと思うところや、感動するところもあって。嫉妬ではなく純粋に、「いいなぁ」と感じていました。僕たちが手の届かない部分をフォローしてくださった辻本貴則監督(※「辻」は一点しんにょうが正しい表記。)と継田さんには、とても感謝しています。
◆度肝を抜く空中戦の誕生秘話◆
――第14話は、戦闘シーンが凄まじいことになっていましたね。一度も地上に降りず、空中戦オンリーで描き切るという。
田口 小柳さんの空戦好きが出ましたね。確か候補の怪獣から小柳さんに一体選んでもらって、そこから脚本を書いたんだっけ?
小柳 そうでしたね。
田口 それで上がってきた脚本を読んだら、「あれ? 着地しないなぁ、怪獣」と思って(笑)。
小柳 田口さんに言われて、初めて気がつきました(汗)。
田口 「一回着地させないと」って言いかけたときに、「この怪獣(デルタンダル)なら、ギニョール(※手で操作する造形物)と飛び人形だけでイケるんじゃないか?」と気づいたんです。造形部さんに相談したら、「面白いんじゃない?」と言ってくださって、じゃあこれで行くかと。あとは合成カット数の問題。空中戦は全部合成カットになるから、合成のカット数が限られている中、全て空中戦というのは普段なら考えられないことなんです。でも、第15話は逆に、ずっと地面にいるガヴァドンだった。
小柳 確かに!
田口 「第15話は合成そんなにいらないから、第14話に合成カットを全振りすればイケるんじゃないか?」と、今度は合成部さんに相談しました。僕としても、変身してから「シュワッチ!」で帰るまでをワンカットでやりたいと、ずっと前から考えていたんです。そんな機会いままでなかったし、できるわけないと諦めていたんですが、ついにその時が来たぞ、と(笑)。ただ、やりたいことを伝えたら現場は騒然ですよ。
一同 (笑)
田口 絵コンテを見てみんなが「うーん」ってなっているところを、「ちゃんと説明するから話を聞いて」みたいな感じで(笑)。
小柳 書いたことをそのままやらせてもらえて、僕としてはありがたかったんですが……(苦笑)。「降ろしたほうが」と言ったんですが、田口さんが「いや、いいよ」と。
田口 よくウルトラマンシリーズの脚本を書いている方だったら、気を遣って絶対に着地させちゃうと思うんです。「久々に現場のことを考えていない脚本が来たな!」と思いましたね。
一同 (笑)
田口 小柳さんが書いてきたなら、やらないわけにはいけないだろうと。おそらく後にも先にも、こんなこと誰もやらないだろうし(笑)。
――『ウルトラマンR/B』の第5話でもワンカットで空中戦を描いていたので、てっきり田口監督発信のアイデアかと思っていました。
田口 もちろん脚本にワンカットで、って書いていたわけじゃなく、読んで「これは凄いワンカットをやれる!」と思ったんです。さかのぼると『ウルトラマンオーブ』の第1話からやってはいるんですが。そもそも長回しの映像が好きだから、映画を観ていてもカットを割るのをやめた瞬間、ちょっと前のめりになるんです。「これ、どこまでいく?」「あっ、ここで割らなかった!」みたいな(笑)。あと、板野一郎さんが参加した『ULTRAMAN』(※2004年公開の映画)や『ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟』で、ウルトラマン版の板野サーカスをやっていたじゃないですか。あれが僕はすごく好きで、自分でも挑戦しているんです。以前板野さんから、直接お話を伺う機会もあって。第14話の空中戦は、いままでやっていた長回しと、板野サーカス的な演出の総決算だと思って挑戦しました。
――その一方で第14話は、V99を巡る縦軸の物語が本格的に動き出したエピソードでもありました。
田口 そうですね。子どもたちにとっては難しい話だからこそ、戦闘シーンはとんでもないものを見せたいという気持ちもあって。ここから縦軸の要素が色濃く出てきますが、各話完結で毎回を短編SFとして面白くするという、大前提は今後も損なわないようにしているつもりです。
――実際、シリアスな第14話の次がガヴァドン回でしたからね。
小柳 温度差で風邪を引きそうになるというか(笑)。
田口 まぁそれがウルトラマンシリーズ、特に僕が大好きな初代の良さだと思っているので。各監督が切磋琢磨し、自分の個性を色濃く出して作った結果、一本一本が面白いというのが僕の理想です。
――話を戻すと、終盤のエミとゲントのシーンはとても印象的でした。二人の関係性がよく表れていて。
田口 あそこは搗宮姫奈をキャスティングして良かったと、心から思った瞬間でした。エミ(搗宮さん)は、僕が「今回の脚本に何か意見はある?」「疑問に思っていることは?」と聞いても、普段は「大丈夫です!」ってあっけらかんと返す子なんです。
小柳 リアルにエミみたいな方なんですね。
田口 そうそう。だけど、第14話はムードが切り替わる重要な話で、エミには空いた時間に「この話はこういう意図があるんだ」と説明したり、レツさん(加藤雅也さん)と二人で話している場面もあったりして。みんなでエミを手塩にかけたんですが、それに彼女も応えてくれた。ラストのレツさんに歯向かうシーンなんかは、一対一で芝居を作っていて、いい顔をしてくれました。
小柳 朝9時の番組とは思えない、息を?むような表情でした。
田口 ゲント隊長(蕨野友也さん)も、「ここをしっかりやらないと、この先崩壊するからちゃんとやりたい」みたいなことを言ってくれて。レツさんも脚本の納得いかないところを、ズバズバ言ってくださいましたし。みんなで丁寧に作って、この先の流れのいい弾みにもなったと思うので、自分でもお気に入りの回です。
◆成功の計はOPにあり?◆
――個人的に田口さんがメイン監督を務める作品は、OP・EDがどれも作品にマッチしていて、素晴らしい印象があります。
小柳 頭に残るというか、つい口ずさんじゃう曲ですよね。
田口 特撮ヒーローやロボットアニメの主題歌は小難しいものよりも、高らかに名前を叫ぶような曲がいいと思っているんです。やっぱり子どもたちに合唱してほしいじゃないですか。特に『ブレーザー』は少し大人向けな内容だから、OPは子どもたちを引っ張ってくれる熱い曲にしたいと思っていて。あと個人的な好みなんですが、特撮のOPはおじさんが熱唱している感じがいい。おじさんの熱いシャウトが聞きたいな、と。そうしたら、アッツアツのおじさんがやってきた。
一同 (笑)
田口 きただにひろしさんに唄っていただけることになって、「やった!」と思いました。音楽担当のみんなに感謝です。それに、今回はあまり言葉で丁寧に説明しないようにしているんですが、現状、主題歌の歌詞が最も説明しているという(笑)。
小柳 そう、まだ描いていないところまで(笑)。
――OPといえば、映像も大きな話題となりました。
田口 初メインの『ウルトラマンX』の頃からずっと、OP映像はカッコよくしたいと思っているんです。カイル・クーパーさんが作った映像みたいに、OPがカッコいい映画って憧れるんですよね。『Z』はOP映像の前半を、flapper3という会社に作ってもらっていて。「『Z』が上手くいったのはOPがカッコよかったからだ」「今回もそうあるべきだ」と、北浦嗣巳さん(チーフプロデューサー)にプレゼンして、『ブレーザー』にも参加していただきました。メインキャスト紹介パートとさまざまな媒体で報道されている怪獣たちのパートは、flapper3にお願いしています。
――ウルトラマンシリーズのOP映像でサビが怪獣ばかり映っているのは、なかなか衝撃的でした。
田口 あそこは初代の怪獣の影絵のオマージュなんです。要はあれの現代版なんですよね。ウルトラマンシリーズのOP映像って、怪獣の影絵か防衛隊の兵器を映すのが鉄板じゃないですか。僕の中には常に初代があるので、現在の技術で初代をやればこうなるというのを突き詰めれば、その都度新しいウルトラマンになるんじゃないかなと。こだわりという意味だと、文字のフォントもいつもかなり気を遣っているところで、今回も登場人物のフォントは面白くしたいと思ったんです。そうしたら、円谷プロのデザイナー・井野元大輔さんが、名前がギリギリ読めるレベルで切り刻まれている文字を書いてきてくださって。大丈夫かなとも思ったんですが、「カッコいいからよし!」と(笑)。個人的にもお気に入りのOPです。
――EDは前期・後期ともにウルトラマンシリーズ初参加のMindaRynさんが歌唱を担当されています。
田口 MindaRynさんは、OP歌手の候補でも挙げていただいたんです。OPはおじさんシャウトにしたいと言っていたので、「では、EDでどうか」という話になったんですが、これがすごくいい曲になって。アゲアゲな男性ボーカルのOP、カッコいい女性ボーカルのEDというのが、今回ガッチリとハマった気がします。
小柳 後半のEDも素敵な曲でしたね。
田口 劇伴を担当されているTECHNOBOYS(PULCRAFT GREEN-FUND)さんが作っているんですが、よく聞くとブレーザーの戦闘曲のアレンジになっているんです。レコーディングを見学させてもらったとき、「いい曲ができていくぞ!」と感じていました。
――後期EDもファンの方に愛されるとうれしいですね。最後に後半戦の見どころをお願いします。
小柳 ここまでのお話で、SKaRDのメンバーやレツに愛着を持ってくださったと思うんですが、後半は彼らが大変なことに巻き込まれていきます。でも、「この人たちなら大丈夫だ」と、ここまで見た中で感じていただけていると思うし、そういう安心感を抱いてもらえるように作ってきました。そして、ドバシ ユウさんなどの新キャラも登場していきます。
田口 アースガロンにも変化がありますし。
小柳 そうですね。最終話なんかは「こんな名だたる方たちが一堂に?」と思うくらい、凄まじい画面になっているので、期待していただきたいなと。ドラマでは、エミがよりヒロインとして活躍するようになっていきます。ぜひSKaRDと一緒に、ハラハラドキドキしていただきたいです。
田口 ファンの皆さんの感想を見ていると、登場人物それぞれに思い入れを持ってくださっているのがうれしいです。後半戦は、SKaRDのみんなが大きな状況に呑まれていきます。皆さんもそこへついてきてほしいですし、彼らと一緒に考えてほしいなと。とはいえ、今回は”SF短編として面白く”ということが一番のテーマです。単純に一本一本楽しんでほしいですし、話数を積み重ねるうちに、いつの間にかすごいところに連れていかれている……という構成にしているつもりです。ストーリー自体も、世界が非常に不安定な今、それに対して何か一つ投げかけるような物語にしようとしています。今後SKaRDがどうなっていくのか、楽しみにしてください。
<Profile>
たぐち・きよたか1980年5月7日生まれ/北海道出身/代表作に『ウルトラマンZ』(メイン監督・シリーズ構成)、『ゆうべはお楽しみでしたね』(監督)など
こやなぎ・けいご1983年9月25日生まれ/富山県出身/代表作に『盾の勇者の成り上がり』(シリーズ構成・脚本)、『ゴジラS.P<シンギュラポイント>』(脚本協力・軍事考証)など
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