「これは素人じゃなくても声が出る」 楢正剛が絶賛、FC東京GK連続セーブの心理状態
DAZN月間表彰「4月のベストセーブ」にFC東京GKヤクブ・スウォビィクを選出
スポーツ・チャンネル「DAZN」とパートナーメディアで構成される「DAZN Jリーグ推進委員会」との連動企画で、元日本代表GKとして活躍した楢正剛氏は2022シーズンのJ1リーグ、4月の「月間ベストセーブ」にFC東京のGKヤクブ・スウォビィクが第9節の北海道コンサドーレ札幌戦で披露した連続シュートをセーブしたシーンを選出した。(取材・構成=藤井 雅彦)
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元日本代表GK楢正剛氏が4月の月間セーブに選んだのは、リーグを代表するGKの連続ファインセーブだった。
「移籍直後の時期は少なからずプレッシャーを感じるもの。周囲に気を遣い過ぎて本来の力を発揮できない選手もいます。チームメイトとの信頼関係を築くためには時間が必要ですが、彼は高いレベルのパフォーマンスでチームの一員として認められていると思います。序盤戦のインパクトでみんなの心を掴んでいますし、プレーで納得させることができるのは能力の高さに他なりません」
彼とは、FC東京のGKヤクブ・スウォビィクだ。
今シーズン、ベガルタ仙台からFC東京に移籍加入したポーランド人はここまでリーグ戦全11試合(※5月6日時点)に先発フル出場。圧倒的なシュートストップでチームの窮地を救い、すでに確固たる地位を築き上げている。
楢氏がベストセーブに選んだのは4月16日に行われた北海道コンサドーレ札幌戦での78分のシーンだ。
札幌の右CKを合わせたのは絶賛売り出し中のFW中島大嘉。この打点の高いヘディングシュートを右手一本で弾いたスウォビィクはすぐさまセカンドアクションへ。こぼれ球に鋭く反応したMF荒野拓馬のシュートもストップし、絶体絶命のピンチを防いだ。
素人なら思わず声を上げてしまうようなビッグプレーに楢氏が「これは素人じゃなくても声が出ますよ」と笑って前置きした上で、具体的な動作と心理状態を紐解いてくれた。
「まず1本目のシュートはGKが正しく動いたセービングです。188cmの長身選手が打点の高い位置から放ったヘディングシュートで、しかも下に叩きつけるような軌道でした。GKとしては、立っている体勢から素早く体を倒してセービングする動作は簡単ではありません。言葉にするのは簡単ですが、それをしっかりできているのは基本技術の高さです」
荒野のシュートを止めたセカンドアクションについては「2本目に関しては、このプレーしかなかった」と絶賛する。
「最初のシュートを防いで、セカンドボールへのリカバリーも早かった。ただ次のシュートに対して起き上がる時間はないとすぐに理解したのでしょう。そうなったら体をできるだけ大きく見せて防ぐしかありません。だからGKができる精いっぱいのプレーで、0コンマ何秒の世界で最善を尽くしたセービングです。それから後ろ側に腕を伸ばしていたらボールがゴールラインを割っていた可能性もあるので、自身の位置を正確に把握しながらプレーしていることも大きなポイントです」
単なる好セーブ以上の意味「勝ち点1を獲得したことにも価値がある」
連続して訪れた難易度の高いセービングを完璧にやってのけたスウォビィク。現役を引退して指導者に転身している楢氏は、この場面から普段のトレーニング風景が目に浮かんだという。
「連続した動作を求めるGKトレーニングでよくあると思います。すぐに思いつくのはフィジカルコンディション目的の高い練習かもしれないですが、このように実戦におけるシチュエーションで役立つ場合も多々あります。一つひとつの動作を整える練習と、体勢が整っていない状況でも守り切る術を得る練習はとても大切。ただ厳しい練習をしているのではなく、自然と体を動かせるようにするという意味合いもあります。リアクションや反射といった要素を伸ばすために反復動作は欠かせないですし、幼少期であればGK練習以外のスポーツや遊びから得られることもあるでしょう」
もともと備わっている身体能力が、日々の鍛錬によって実戦で役立つスキルに変わっていく。それは移籍でユニフォームを着替えても変わらない能力だ。
そして新監督就任でスタイルチェンジを模索しているFC東京において、最後尾にスウォビィクが控えている意味とは。
「この試合はドローという結果でしたが、重要なセーブで勝ち点1を獲得したことに価値があります。無失点に終えられた試合でも、押し込まれた展開での無失点やピンチが多くある無失点もある。だからこの札幌戦での無失点は充実感を得られる類だと思いますし、勝利できなかったものの前向きな気持ちで次の試合へ向かえるでしょう。仮にチームとして不安定な試合内容が続いたとしても、スウォビィク選手のように個人として安定したパフォーマンスを発揮できて乗れていないチームをカバーできるのはとても大きい」
2019年夏から日本でプレーしているスウォビィクの名前はJリーグに轟き渡っている。その存在感は首都クラブでより一層の輝きを放つ。
「高いレベルのパフォーマンスをシーズン通して発揮できるGKだからこそ価値がある。所属チームの結果次第で、スウォビィク選手がベストなGKと言われるシーズンになるかもしれません。名古屋のランゲラック選手と似たようなスタイルで、彼らはそのレベルに到達しているクラスの選手だと思います。個人的には、日本人選手が負けじと奮起してくれることにも期待しています」
リーグを代表する守護神が試合を引き締め、Jリーグ全体のレベルをさらなる高みへ導く。
まぎれもなく月間ベストセーブだ。
(藤井雅彦 / Masahiko Fujii)
