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株式上場で注目の的に

「リビアンとは、どんな会社なのか教えてほしい」

【画像】どんなクルマがある?【リビアン製EVを見る】 全23枚

去る2021年11月11日、日本のテレビやネットなど、さまざまなメディアから筆者に問い合わせが来た。


リビアンR1T

なぜ、この日なのかといえば、EV(電気自動車)ベンチャーのリビアン・オートモーティブが米ナスダック市場に上場し、時価総額が10兆円を超える場面があったからだ。

アメリカの各種報道によると、ナスダック上場企業の上場初日の時価総額としては、過去6番目の高額だという。

なぜ、これほど高値をつけたのか?

背景にあるのは、ESG投資によるEVバブルの後押しだ。

ESG投資とは、財務情報だけではなく、環境、ソーシャル(社会性)、ガバナンス (企業統治)を加味した投資を指す。

この環境というキーワードから、カーボンニュートラルにつながり、そしてEVベンチャーへの投資や集まる、という図式が出来上がった。

テスラも時価総額で、トヨタを初めとした日系全メーカーの合計値を超える規模まで拡大するなど、世はまさにEVバブル真っ只中である。

だからこそ、投資家とすればこの時期、「第二のテスラ」を探そうと思うのは当然だ。

そこにちょうど、リビアンがハマった、というイメージだろう。

では、リビアンはこれから、テスラを猛追することができるのだろうか?

リビアンとは何者?

世界各国で「テスラの再来か?」と称されるリビアンは、いったい何者なのか?

リビアンは、米フロリダ州生まれのエンジニア、ロバート・スカーリンジ氏が2009年にメインストリームモータースを設立し、2011年にリビアン・オートモーティブに社名変更した、今年で創業11年目の企業である。


リビアンR1S

2011年といえば、アメリカではオバマ政権の初期にあたる。

オバマ大統領の目玉政策といえば、「グリーンニューディール」がある。

それに伴い、米エネルギー省は、次世代車をアメリカ国内で製造する企業を支援するため、10年間の低利子融資を実施した。

これに、日産、フォード、テスラ、そしてフィスカーが申請して許可を得た。その額は、1社あたり数百億円〜数千億円に上った。

この資金が、その後のテスラ急成長の基盤となる。

このほか、米エネルギー省は、返済不要の補助金によるエネルギー関連政策も施行し、EVやリチウムイオン電池開発を行うベンチャー企業に対して数十億円単位で税金をばらまいた。

こうした、2010年代前半のEVバブル期には、リビアンが表舞台に出てくることはなかった。

当時、筆者はアメリカ国内でテスラを筆頭とした、さまざまなEVベンチャーを定常的に取材していたが、リビアンとの接点はなかった。

テスラに似た動きが?

その後、2010年代半ばのアメリカでは、ラスベガスで開催される世界最大級のテクノロジー展「CES(コンシューマ・エレクトロニクス・ショー)」で、アメリカと中国と連携したEV投資話が乱立した。

ここでもまだ、リビアンの存在感は薄かった。


テスラ・モデル3

リビアンが一気に注目されるようになったのは、2016年9月にイリノイ州にあった三菱自動車の生産拠点跡地を購入したときだった。

この際の資金は、ベンチャー企業に対するさまざまな投資によって賄ったが、投資家の間ではこのとき、「リビアンは第二のテスラになるかもしれない」という期待が高かったに違いない。

なぜならば、テスラは同年3月、「モデル3」を発表し、発表から約1週間でグローバルでの受注台数が30万台を突破するという、異例の状況となっていたからだ。

テスラもトヨタから、北カリフォルニアの工場を買収して、EV製造用に大幅改修したが、リビアンがそうしたテスラに似た事業プランを進めたことを、投資家は好意的に捉えたといえるだろう。

さらには、アマゾンがリビアンに輸送用車両10万台購入を打診し、さらに同社への直接投資をおこなうことが報道されたことで、リビアンの株式上場へのお膳立てが整っていった。

「第二のテスラ」 懐疑的な見方も……

アメリカ市場全体の6割がライトトラック(ピックアップトラックとSUV)で占められている。

そのピックアップトラックのEVについて、リビアンが大手を指し置いて初めて「R1T」の量産を開始した。


大手アマゾンがリビアンに輸送用車両10万台購入を打診し、同社への直接投資をおこなうことが報道されたことで注目が高まった

フォードは「F150ライトニング」量産モデルを公開し、またGMもCES2022で「シルバラードEV」を初公開するも、それよりリビアンが先んじたのだ。

一方のテスラ「サイバートラック」は、2022年内に生産開始になるかどうかという状況だ。

そうした中、リビアンでは第2弾としてSUVの「R1S」も公開し、またイリノイ工場に次いでジョージア州内での数十万台規模の生産能力のある生産拠点の新設を発表した。

ただ、こうしたリビアンの急激な事業拡大に対して、投資家からは同社の将来性に懐疑的な見方もある。

2021年の生産台数は1000台程度であることから、「事業拡大のスピードが経営実態にそぐわないのでは?」という懸念が株式市場で浮上。そのため、株価は最高値時の3分の1程度まで下落している。

さらに、2022年1月に入り、アマゾンが輸送トラックを他社にオーダーする可能性があるとの報道があり、そのすぐ後にリビアンのCOO(最高執行責任者)が辞任することが明らかになった。

果たしてリビアンは第二のテスラになれるのか? 今度の市場動向を注視していきたい。