楽天東急プランニングによるオンラインとオフラインを融合した壮大な都市実験! デジタルマーケティングで目指すモノ

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●楽天と東急が「楽天東急プランニング株式会社」を共同で設立
楽天および東急は8月31日、データマーケティングソリューションを提供する「楽天東急プランニング株式会社」を共同で設立すると発表しました。

楽天東急プランニングの設立は、
・eコマースやキャッシュレス決済サービスなどに強みを持つ楽天
・沿線事業と商業施設運営に強みを持つ東急
このように、両企業が蓄積してきた「オンライン」と「オフライン」のメリットやデータを相互に活用していくことを目的としたものです。

楽天と東急の縁は、実に20年以上も昔にさかのぼります。
楽天が本社機能を東急・二子玉川駅直結の「クリムゾンハウス」に移転したのは2015年ですが、さらに以前から、
・楽天市場への東急百貨店の出店
・物流事業
・旅行事業
・スポーツ関連事業
・エンターテインメント事業
これらを中心に、強い協力関係を築き上げてきました。


楽天と東急の関係について語る、楽天東急プランニング株式会社 代表取締役社長 笠原和彦氏


そのような中、スマートフォンの普及に伴うオンラインショッピングの拡大と定着によって消費者の消費スタイルも大きく変化し、ニーズも多様化してきました。

また、新型コロナウイルス感染症問題(コロナ禍)も大きな変革の要因となりました。
外出と密を避ける新しい生活様式は人々の購買行動をよりオンライン化し、一方でオフラインでの生活には、より機能的かつ効率的な導線を求めるようになりました。

これらの点について、楽天の三木谷浩史社長は楽天ポイントカードや楽天Payを東急グループ各店舗で利用可能にすると発表した上で、

三木谷浩史社長
「消費者ニーズを可視化し、利便性の高いサービスを提供してより良い生活へ。
オンラインとオフラインのハイブリッド型の生活。新しい価値体験の提供をしていく」

このように語り、東急グループとの連携や提携をより強化していくことを表明しています。


●実証実験を行う場としての新会社
楽天と言えば、楽天モバイルによる通信業界への参入や各国企業の買収による世界展開など、非常に大きな視野と野心を掲げる企業という印象が強くあります。
そのような楽天が、営業エリアが鉄道沿線に限られる東急と強い協力関係を結び、新会社まで共同で設立することに違和感を覚える人もいるでしょう。

これには、楽天東急プランニングという会社の立ち位置が重要な意味を持ちます。

楽天東急プランニングは、確立された新サービスや新事業を行うための会社ではありません。
楽天が持つオンラインデータを、オフラインであるリアル店舗でどう活用していくのか?
これを模索することを目標としています。

つまり、今後行われる予定となっている、実証実験としての店舗サービスやデジタルサイネージ事業などは、
東急グループのエリアに限定して展開すれば検証と成果が的確に計れるため、非常に理にかなっていたのです。


三木谷社長が東急沿線にかける想いと期待は非常に強い



オンラインとオフラインのデータをどのように集積し活用していくのか。まずはその模索から始まる


具体的な手段などは公開されていませんが、
・2020年10月から2021年3月:東急ストアでの「データに基づく顧客層別の情報配信方法と情報配信による購買変化の検証」
・2020年11月から12月:二子玉川エリアでの「デジタルサイネージの広告接触から購買に至るまでの顧客データ取得および効果計測の検証」
こういった実証実験がすでに予定されています。

楽天は現在、東急・二子玉川駅の構内にデジタルサイネージを展開するなどの事業を行っていますが、楽天東急プランニングが行う実証実験は、それらをさらに発展させたものとなります。
・スマートフォンへの顧客データに基づく適切な情報配信
・顧客が興味を示した広告をデータ化する広告接触トラッキング
こういったものが具体的な手段となるでしょう。


デジタルマーケティングを活用した消費行動の最適化は、物流の効率化や物流コストの低減にもつながる



●壮大な都市実験が始まる
楽天東急プランニングの設立とその目的には、既存のビジネスや概念を破壊し、常に新しい技術やビジネスにチャレンジしてきた楽天らしさを強く感じます。

コロナ禍が収拾の兆しも見せない中でオンラインビジネスに特化させるのではなく、敢えてオフラインである地域ビジネスや物流の新たなチャンスを模索する点にも、近視眼的ではない楽天のビジネススタイルが色濃く見られます。


さまざまな業種や業界を巻き込む楽天の巨大経済圏。新会社とその事業は、経済圏を動かすエンジンの1つとなるのかもしれない


オンラインとオフラインの融合を目指す楽天および東急の模索は実を結ぶのか。
ウィズコロナ時代における消費者ニーズの把握と消費行動の回復は可能なのか。

コロナ禍によって人々の生活が変革していく中、壮大な「都市実験」が始まろうとしています。


執筆 秋吉 健