観光・防災で一石二鳥だけど…進まない無電柱化
なかなか進まず…官民一丸で加速狙う
無電柱化はロンドンやパリといった欧州の主要都市や、香港・シンガポールなどアジアの主要都市ではおおむね達成されている。無電柱化が進めば、景観が良くなるほか、災害時の電柱倒壊による災害防止、歩道の快適性確保などが期待できる。
開始から30年以上が経っても無電柱化が思うように進まないことについて、国交省道路局環境安全・防災課は「コストが高いため」と明快だ。
1キロメートルの無電柱化には、電柱化の約20倍となる5億3000万円もの費用がかかるとされる。内訳は電力事業者など電線管理者の負担が1億8000万円、地方公共団体や国の負担が3億5000万円だという。
古河電気工業の小林敬一社長は、「(空中に)電線を張るのと地中に埋めるのではだいぶコストが違う。国や我々(メーカー)の方向感が一つになれば、進み方も早くなる」と期待する。
住友電気工業は電線の地中化需要が増えれば、埋設用の電力ケーブルやケーブル接続材料の販売が増えると見ている。子会社が手がける受変電装置の販売増や敷設工事の受注増も期待する。これら製品群を需要に応じて提案していく考えだ。
日本電線工業会も無電柱化について「更新需要が増えると認識している」とする。
取り組みを加速しようと国交省が4月に策定した「無電柱化推進計画」では、18年度からの3年間で約1400キロメートルの新たな無電柱化の着手を目標に掲げる。
同計画によると、電線管理者が緊急輸送道路で無電柱化をする際に、新たに取得した電線などにかかる固定資産税を減免する特例措置を講じる。
さらに、国の直轄国道で道路上空に設置されている電線を撤去して道路地下に埋設した電線などについて、「占用料」の減額措置を実施する。そうした取り組みは地方公共団体にも周知し、同様の減額措置の普及を促進している。
技術開発も進む。例えば電線を地中に埋める上では、ケーブルの保護管を積み上げる「多条多段配管」が有用とされ、コンパクトに多条配管できるケーブル保護管のニーズが高まっている。
古河電工は、多条多段配管に適したケーブルの保護管「角型エフレックス」の拡販を狙っている。外形が角形のため、積み重ねやすい。工具を使わずに製品同士を接続できるため、施工の手間が減り、コスト削減に貢献できる。多条多段配管をコンパクトにできる合成樹脂製の多孔管「孔多くん」の拡販も目指す。
また、東京都は無電柱化のコスト削減に向けた官民会議を開催しており、東京電力パワーグリッドやNTT東日本、東京ガスが参加するなど、模索は続く。
景観や防災上、必要と認識されながら進まない無電柱化。官民挙げてコスト削減や技術革新の促進とともに、政府はより一層の政策誘導を進め、自治体や事業者を支援する必要がある。
東京都の推進計画―環状7号線内側に重点
政府の無電柱化施策を受け、地方自治体も独自に推進計画を策定している。東京都は3月に10カ年計画「東京都無電柱化推進計画」をまとめた。全国初の施行となった「東京都無電柱化推進条例」に基づくもの。世田谷区や杉並区、葛飾区などを通る環状7号線の内側を18年度から27年度まで重点的に整備。技術開発を進めることで、整備コストを3分の2に抑える。

