キャッチコピーってどう作ればいいの? WEBライターがコピーライターに聞いてみた
WEBライターは文章が下手だ、という批判が話題になったことがある。何をもって下手とするかは置いておいて、確かに新聞社などで教育を受けてない人も多い。そこで、より文章を上達させるために、WEBライターがプロのコピーライターに習ってみることにした。

挑戦するWEBライターは地主恵亮氏だ。



妄想を得意とし、彼女がいる風に自撮りした記事がイギリスの新聞で「世界でもっとも気持ち悪い男」として紹介されるなど、日本を代表するWEBライターの一人だ。

教えていただくのは、「こやま淳子」さん。



「13歳で結婚。14歳で出産。恋は、まだ知らない」(公益財団法人プラン・ジャパン)、「人生の谷間だって、美しくしたい。」(ワコール人間科学研究所)、「エールフランスなら、 飛行機のなかからフランスです。」(エールフランスKLM)などを生み出したバリッバリのコピーライターである。

頼んでおいてなんだが、よく受けてくれたものだ。本当にありがたい。

習うにあたり、練習のお題として選んだのが「LINEモバイル1周年」だ。



「LINEモバイル」はいわゆる格安SIMと言われるもので、主要SNSのデータ通信量をカウントせず、速度制限にかからない「カウントフリー」や、月額500円から使えるなどの特徴がある。このサービスが今年9月に1周年を迎えた。

LINEモバイルといえば女優の「のん」さんが出演するCMで使われる、「愛と革新。」というキャッチコピーが印象的なのではないだろうか。

【公式】LINEモバイル: TVCM 〜 愛と革新。(デビュー)篇 〜


今回は1周年にフォーカスし、「LINEモバイル1周年」を記念したキャッチコピーを作ろうと思う。素晴らしいキャッチコピーが生まれれば、1周年がよりめでたいものになるだろう。




できたコピーをジャッジするために、LINEモバイルの社長「嘉戸(カド)彩乃」さんにも加わってもらった。




この3人で、1周年をよりめでたくするキャッチコピーを考えてもらう。



そもそも「1周年」のキャッチコピーを作るってどうですか?


ダメですね。ユーザーには何周年でも全く関係ないので




いきなりダメだしする、毅然とした表情のこやまさん。ガチだ。



1周年のキャンペーンは、やっています!


キャンペーン内容をコピーに入れると良いかもしれませんね


7大キャンペーンというのを行っていて、例えば2回線目以降の登録事務手数料が最大無料になったり、1周年記念LINEスタンプがもらえたり、LINEポイントをプレゼントしたりしています


内容をコピーに入れると長くなりそうですね




「…」



ワコール人間科学研究所の50周年の新聞広告で「人生の谷間だって、美しくしたい」というコピーを作りましたが、これも50周年という言葉はおさえのコピーに入れただけでメインコピーには入れていません


もし50周年を入れると、「谷間を作って50周年!」とかですかね


嫌な感じしかしない!


ちょっとゲスいですね


無理やり入れるとしても、「おかげさまで1周年」とかしか言えないので、1周年は入れなくてもいいですね。これまでとは別の角度でLINEモバイルを表現してみたらどうでしょう




「1周年」を封じられて困惑する地主さん



そういえば、こやまさんの「13歳で結婚。14歳で出産。恋は、まだ知らない」というコピーはすごく印象に残っています。強い言葉はないのに強く感じる。


あんまり怖いことを言ってもダメなんですよ。「見たくない」とスルーされてしまうので。そのようなことを考えながら作りました


ギリギリを狙わなきゃダメなんですね。このような悲しみ系のコピーはよくありますか?


商材にもよりますが、ネガティブなだけだと、商材の売り上げに結びつかないし、クライアントさんも嫌がることが多いですね。ユーザーに刺さったとしても、ネガティブな商品となって買ってくれないんです。それよりも、行動を変えるコピーが大切です


行動を変えるコピーってどういうものですか?


たとえば、「恋はまだ知らない」のコピーはあんまり納得させすぎてもダメ。「どういうこと?」って思わせて、検索してもらえるようにしています。言い切っちゃうと納得して終わっちゃうんですよね


想像の余地とかスキをつくったほうがいいんですね!


そういうことになりますね


そこで考えました!!!






「30歳で童貞。34歳で無職。恋は、まだ知らない。そんなあなたにも LINEモバイル」。どう?




「……」



急にドヤ顔で「どう?」と言われても、ダメとしか言いようがありません


LINEモバイルと関係なくないですか?最後に会社名を入れれば良いというものでもないですから


いい線いってると思うんですけどね、悲壮感もあって


悲壮感よりもポジティブなものがいいです!LINEモバイルはコミュニケーションを促進しようとしているので


だろうな、とは思ってました




「思ってたんかい···」と思わずつぶやく嘉戸社長



そもそもLINEモバイルのキャッチコピー「愛と革新。」はどうでしょう? これを作った背景は?


通信の本質ってコミュニケーションだから愛だよね、というのと、契約内容が複雑になりがちな通信サービスをシンプルにして、今までのやり方を変えていこうと思っての「革新」です


なるほど


のんちゃんのCMの「何にもしない、何も言わない」というのも、目立っていましたね




「競合他社のCMに張り合うなら突き抜けた面白さが必要だし、ガンガン露出しないとだめです。そこでホームランを狙うには、逆張りで行こうと」



そういうのは必要です。露出量によって企画とかも変わります


コピーも露出量で変わるんですか?


露出量が少ないと、おもしろコピーとか強い共感を誘うコピーなども有効ですが、露出量が多すぎるとしつこくなっちゃう場合があるので、太くてどっしりしたコピーが必要になってきますね


太くどっしりしたコピーというのは?


覚えてもらいやすい、口の端に上る言葉と言えばいいでしょうか


声に出して言いたくなるようなやつですね


そうですね


じゃ、これはどうでしょう。




「そうだ、LINEモバイル使おう。」




ふたたび静かになる二人



声に出して言いたいじゃないですか! 「そうだ 京都、行こう。」に影響を受けました


影響というか、そのままです。パロディーである時点で小さく見える。偽物にしか思えない!


じゃあ最近の人気映画でよく出てくる「強い女性」をモチーフにして、「もっと私は強くなれる。LINEモバイル」はどうですか


だからLINEモバイル関係ないじゃないですか!あと「女性の強さ」って表現は今多くなりすぎていて、もっと具体的に言わないと響かないんです


じゃ、「LINEモバイルはすごく女性を優遇します!」はどうでしょう?


具体的すぎる!それっていいんですか?




「ダメに決まっているじゃないですか! 男性も女性も同じように使っていただきたいですから」



実際にそうでないものをコピーにしてはダメです


なるほど、じゃ、「LINEモバイルは東京オリンピックを見に行きます」は?


応援じゃないんですね。「行けば?」ってなりますよ!ちょっとおもしろいけど


スポンサーしてないから見に行くしかないという


OK出せない!


クライアントを通らなきゃダメですからね、そこも大事です。あと1周年のコピーなのに、東京オリンピックはまだ先ですから!


コピーは時事性を持たせた方がいいんですか?


3カ月しか流れないCMであれば大切です。今回も1周年なので時事性があってもいいかもしれません


世界陸上なら2年に一度だからいいかもしれないですね! 「LINEモバイルは世界陸上を見に行きました」とか


社長が乗ってきた!


ダメです!




地主さんにつられて怒られる嘉戸社長



ストレートな表現はどうですか? LINEモバイルは満足度No1※1なので、「満足度No.1のSIMカード」とか


何に対しての満足度ですか?


満足度が特に高いのは、コスパとかですね。通信サービスは乗り換え等も面倒なことが多くて長く使えるものを求めているので、みんなが良いと言っているものに対して正当性を感じる傾向があります。それを踏まえると「満足度No.1」みたいなことになりがちです


もっと具体的に言った方がいいですね


データ通信量フリー、SNS使い放題・速度制限なしとかですかね。あとはお子様にLINEモバイルを持たせることもありますね。500円からですし、親と子供のやりとりだけをするには適しています。LINEの通信量はフリーなので、祖父母とビデオ通話などしたり


情報が多いですね…。ムービーで伝える方が適しているかも




「思い切って1億くらいかけてムービー撮りませんか?」



そんなお金があったら、そもそも地主さんを呼ばずに、こやまさんだけを呼んで考えます!


社長のその厳しい感じ、好きです!




だんだん冷たい目線になる嘉戸社長



でも、500円からというのはいいですね!


コピーに数字を入れるのは強いんですか?


そうですね。最初に話した「13歳で結婚。14歳で出産。恋は、まだ知らない」も数字が入っています。やっぱりほわっとした言葉より、数字が入ったほうが具体的になるので伝わりやすいです


なるほど、じゃ、これどうですか!



「弊社社員の50%が利用しています、LINEモバイル」




ガックリ肩を落とす社長と苦笑するこやまさん。ウケてはいるが…



いや、良くないですね。数字が入っているからいいってわけじゃありません。自分と関係ないって感じだとダメですね。LINEモバイル500円は自分と関係あるけど


それよりも、その50%って数字はいま地主さんが適当に言っているだけですからね


自分と関係あること…。そうなると満足度ですよね。じゃ、「弊社社員の50%が利用し、67%の満足度です、LINEモバイル」は?


だから、適当な数字を言わないで! そして満足度は67%ではなく、9割を超えています


ダメか、、、


「私の年収低すぎ?」ってあったじゃないですか?


一時期すごく見ましたよね。自分に関係あるって思っちゃうので、思わずクリックしたくなる。やはり自分に関係するものがいいですね


じゃ、これはどうでしょう?




「友だち付き合い500円〜」はどうでしょう?



わりといいかもしれない…!!






本当ですか!


お金払わないと友だちできないっていうモヤっと感はありますけど


ただ印象に残るコピーです!


ありがとうございます!プロが言っているので間違いないです!このコピーで1周年キャンペーンの画像作ります!


1時間ほど真面目な会議を行い「友だち付き合い500円〜」という素晴らしいコピーが生まれた。LINEモバイルなら500円から1GB+LINEデータ通信量ゼロなのだ。

嘉戸社長はネガティブに捉えていたけれど、現代においてのコミュニケーション手段が500円は安いのではないだろうか。

ということで、画像を作った。





どうですか、社長! 友達が500円で買えるみたいでしょ! しかも、500円で友達を作るとキャンペーンに応募できるみたいでしょ! 安い金で買った安い友達と安い友達付き合い! 安さを表現するために場末のスナックっぽいデザインにしました!




「おい、私が言っていたネガティブがまんま来てるじゃないか!」



やっぱりそうなりますよね! ただこの怒られる感じ好きです!


ということで、プロのコピーライターを呼んでまで作ったコピーは全てボツになり、コピーなしの通常のキャンペーンとなった。



ただ、キャンペーン内容は豪華なのでぜひチェックしてみよう!

ありがとうこやまさん!


■関連リンク
LINEモバイル1周年キャンペーン



※1: 格安SIMアワード2017上半期より
提供:全力コラボニュース(livedoor×LINEモバイル)
※執筆:地主恵亮 撮影:横山マサト 企画・構成:谷口マサト