クローブの意外な使い道とは

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湿気や暑さは不快に感じさせる要因のひとつだが、さらにゴキブリをよく見かけるようになり、さらに不快感を覚える人も少なくないだろう。

定番の駆除方法と言えば駆除剤の散布や捕虫器の設置だが、こうした薬剤を使用しない方法としてインターネット上で見かけるのが「クローブ(丁子)をゴキブリが出やすい場所に置く」というものだ。

これだけで忌避剤としての効果があるとされ、薬剤に拒否感を持つ人が使用しているようだが本当にクローブでそんな効果があるのだろうか。エビデンス(科学的根拠)があるのかを調べてみた。

ワモンゴキブリ、チャバネゴキブリで効果を確認

昆虫学や公衆衛生分野の学術誌をいくつか調べてみると、ハーブなどから抽出される精油を害虫に対する忌避剤として使用した場合の効果を確認する研究は非常に多い。

ゴキブリに対する効果を検証した論文も存在し、例えばオープンアクセスの学術誌「African Journal of Biotechnology」電子版では2013年にクローブから抽出された「クローブ油(丁子油)」を使った、サウジアラビアのキング・アブドゥルアズィーズ大学の研究者らによる研究結果が掲載されていた。

この研究では、4匹のワモンゴキブリを対象にクローブ油を混ぜた水を噴霧、あるいは燻蒸することで殺虫効果や忌避効果があるかを確認するというもので、比較対象としてごま油やローズマリー油を使用している。

結論から言うと、いずれの油も殺虫効果はほとんどなく、高濃度のクローブ油水溶液を連続して直接ゴキブリに噴霧し続けた場合は死亡が確認されたようだが、あまり現実的な使用方法ではない。

しかしクローブ油の忌避効果はかなり高く、10%のクローブ油水溶液を噴霧したエリアは約48時間ゴキブリを寄せつけなかった。燻蒸した場合は空気中のクローブ水溶液濃度が1リットルあたり17.5マイクロリットル以上になっている場合、噴霧と同等の効果が確認されたという。

さらに、2017年4月1日にオクスフォード大学が発行する学術誌「Journal of Economic Entomology」には、米ニューメキシコ州立大学によってクローブそのものの忌避性や毒性を検証した結果が発表されている。

これによると、クローブが若いチャバネゴキブリに対し毒性を示し、置くことで忌避効果を示したという。ただし、その効果はタイムやシトロネラなどのハーブオイルと同等で、他の忌避効果が期待できる精油などよりも高いわけではないようだ。

クローブより効果のある成分も

実はクローブよりもゴキブリに対して高い毒性や忌避効果を発揮し、殺虫剤などに使用されている植物由来の精油成分が存在する。シソ科の植物に含まれている「チモール」だ。聞きなれない成分かもしれないが、殺菌・消毒効果もあることから日本では医薬品や医薬部外品にも使用されている。

前述のニューメキシコ州立大学の研究でも、燻蒸、散布、直接噴霧などの使用法を問わず最も高い効果を発揮する成分としてチモールが挙げられている。

日本で販売されているいくつかの殺虫剤を確認してみると、ゴキブリ用には含まれていないようだが、庭などに散布するムカデやアリ、ナメクジなどの駆除剤にはチモールを含むものがあった。