この4月から新生活がスタートした人も多いと思いますが、新しい出会いもあり楽しい一方、人間関係がうまくいかず「疲れた」と思っている方もいるのではないでしょうか。そんなときは、人との付き合いを、一度軽〜く考えてみることも必要かもしれません。今回は、江戸っ子に学ぶ「人との距離感の取り方」をご紹介します。


江戸っ子の粋な距離感「束の間付き合い」とは?



限られたスペースの中に、たくさんの人がひしめき合っていた江戸の町。
そんな中でお互いが不快な思いをしないように、江戸では人間関係における独特のマナーが生まれました。

すれ違うときに傘がぶつからないように倒す「傘かしげ」。
狭い舟などで隣り合うときは、こぶし1個分腰を浮かせて相手が座りやすくする「こぶし腰浮かせ」。
こうした日常の行動におけるマナーはもちろん、江戸っ子は人付き合いにおける「距離感」もとても大事にしたのです。
それを表わす言葉が「束の間付き合い」というもの。

たまたま、一緒の舟に乗り合わせた人。
たまたま、お店で隣になった人。
江戸っ子は、こうした縁をとても大事にし、必ず挨拶を交わしたそうです。
その会話の内容は、「いいお天気ですね」「どちらへ行かれるんですか」などといった他愛もないもの。

決して名前や職業などは聞きません。
これが、江戸っ子の距離感の取り方です。
踏み込んだ話はしないけれど、せっかく隣り合わせた縁だから、束の間のお付き合いをする。
一瞬の間だけ心を通わせ、情報を交換し合うのです。

こうした江戸っ子の行動の根本には、「見知らぬ人も仏の化身」という考えがありました。
他人はすべて仏様の化身なのだから、無下にしてはいけない。
「袖すり合うも多生の縁」と言いますが、まさにすれ違った人は、前世や来世、どこか別の人生で縁があったお方かもしれないのです。

他人を仏様と考え、束の間の付き合いを大事にしながらも、お互いの距離感は保つように努力するのが、江戸の粋。
現代の私たちが未だ持っているような気もする一方、失くしてしまったもののような気もします。

文/岡本清香

TOKYO FM「シンクロのシティ」にて毎日お送りしているコーナー「トウキョウハナコマチ」。江戸から現代まで、東京の土地の歴史にまつわる数々のエピソードをご紹介しています。今回の読み物は「江戸っ子の距離感を表わす『束の間付き合い』」として、5月24日に放送しました。

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