「太陽系第9惑星」は実在するか?
1月20日、米カリフォルニア工科大学の研究チームが、「太陽系に9番目の惑星が存在する」と発表して、世界中から大きな注目を浴びた。
現在、存在がはっきり判っている太陽系の惑星は、水星・金星・地球・火星・木星・土星・天王星・海王星の8つ。子供のころ、「すいきんちかもく……」と昔覚えた人も多いだろうと思う。以前は冥王星まで合わせて9つあったが、冥王星はその他の惑星に比べて明らかに小さいこと(地球の月よりも小さい)、さらには冥王星サイズで、同じように太陽の周りを回る天体がいくつも見つかったこと(中には冥王星を上回る大きさがあると考えられるものもある)などから、その扱いが議論の的になっていた。
結局、2006年の国際天文学連合で「惑星」の定義が細かく決められ、その結果、冥王星はいわば「リーグ落ち」して、現在は「準惑星」という地位にある。
さて、今回話題の「9番目の惑星」とは、もちろん、冥王星が惑星に復活するなどという話ではない。
質量にして地球の約10倍、天王星(地球の14.54倍)に近いクラスのボリュームを持つ大きな惑星が、冥王星よりはるか外側の軌道を回っている、というのだ。
とはいえ、その姿がしっかり確認できたというわけではなく、これは、あくまでもシミュレーションによって「存在の可能性」が導き出されたもの。発表を行ったのは、カリフォルニア工科大学のコンスタンティン・バティジン氏とマイク・ブラウン氏で、「アストロノミカル・ジャーナル」誌で論文を発表しただけでなく、それを一般にも簡単に紹介する動画を作成して、youtubeでも公開している。
近年、天体観測技術の発達により、海王星の軌道よりも外側を回る「太陽系外縁天体」が次々に発見されている(冥王星も現在はこれに含まれる)。その中には、惑星と呼ぶには小さすぎるものの、冥王星クラスのものはいくつもある。
今回のシミュレーションは、そうした太陽系外縁天体の軌道から導き出されたものだ。手掛かりとしたこれらの天体は、非常に離心率(中心の偏り)や軌道傾斜角が大きいが、その偏り具合には、なぜかある種の傾向がある。中心の偏った楕円の軌道が、どれもおおよそ同じ方向を向いているのだ。それは、現在発見されていない別の天体の重力の影響によるのではないか――というのが、シミュレーションのキモの部分。
付近には、エッジワース・カイパーベルトという微小な天体群も存在しているが、指標とした天体群の軌道のズレは、もっと大きな、単一の天体がなければ生じないという。それが、「未知の第9惑星」というわけだ。前述のように、シミュレーションから導き出されたこの第9惑星の質量は地球の約10倍で、半径はおそらく3倍程度。さらに、平均して海王星軌道の20倍という恐ろしく遠い軌道を、1万年から2万年かけて公転しているのだという。
ちなみに、「すでに見つかっている天体の軌道のわずかな誤差から、未知の天体を見つけ出す」という手法は、これが初めてではない。そもそも現在最遠の惑星とされている海王星も、天王星の軌道のわずかなズレから予想軌道が算出され、それに基づいて発見されたものだ。さらに海王星発見後も、天王星や海王星の軌道になおわずかな誤差があることが指摘され、それが冥王星の発見につながっている。ただし、冥王星はその誤差を説明するにはあまりに小さすぎたため、なおも外側に未知の惑星があるのでは、という説はその後も続いた。
当時は冥王星が9番目の惑星とされていたため、この「未知の、仮定の惑星」は、「第10惑星」とか「惑星X」と呼ばれた。しかし近年になり、惑星探査機による詳細な観測で外惑星の質量がこれまで考えられていたより小さいことがわかり、「軌道の矛盾はこれで解決できる」として、「惑星X」の存在可能性は急速にしぼむことになった。
しかし、それに入れ替わるように登場したのが、従来考えられていたよりはるかに遠くの軌道に「未知の惑星」があるのでは、という仮説。その最新のものが、今回のカリフォルニア工科大チームの発表というわけだ。
とはいえ、計算のとおりとすれば、この「第9惑星」は、最も太陽に近付いたときでも、地球・太陽間のおよそ200〜300倍も隔たっているという。最も遠いときは600〜1,200倍にもなる。それだけ遠距離となると太陽の光もわずかしか届かず、それなりの大きさがあったとしても、発見するのは至難の業だ。今後、「すばる」など、高精度の望遠鏡がシミュレーションに基づいて「第9惑星」を追うことになるが、果たして見つかるかどうか。それこそ「天文学的」に微小な可能性に向けての、しかし、非常に興味深い挑戦になりそうだ。
