W杯なぜ今回は「3か国共催」? 1か国では困難な肥大化…世界が注視する「危うい関係」
北中米ワールドカップがついに開幕
史上最大規模のワールドカップ(W杯)が現地時間6月11日に開幕した。
参加チームは過去最多の48、開幕から決勝まで最長の39日間、そして初の3か国での共催。北中米大会の開幕戦はメキシコで行われ、決勝戦はアメリカ、そしてカナダでも試合が開催される。
複数の国が共催するのは、2002年の日韓大会以来で2度目。3か国共催は初となる。日韓大会はFIFA主導で決まった。日本と韓国の招致争いがFIFA内部の権力抗争にまで発展したことが影響した。しかし、今回の北中米大会は最初からアメリカとメキシコ、カナダが共同開催で立候補。異例の3か国共催が決まった。
もともとは、それぞれ単独の立候補を模索していた。22年大会を招致しながらカタールに敗れたアメリカは早くから26年の招致に意欲的だった。カナダとメキシコも、それぞれ協会会長らが立候補の意志を口にしていた。
直近2大会の開催地(22年カタール、18年ロシア)の大陸からは立候補できないため、26年大会は北中米カリブ海連盟、南米連盟、アフリカ連盟、オセアニア連盟の争いだった。仮に北中米から3か国が立候補すれば、票が割れる可能性もある。そこで、3か国はより確実に招致を成功させるために共催を選択したのだ。
結果的に立候補したのは共催する3か国とモロッコだけ。18年6月のFIFA総会での投票で共催組が開催地に決まった。アメリカは1994年大会以来2回目の開催、カナダは初開催、メキシコは70年、86年大会に続き、初の3回目の開催となった。
3か国の広域開催には国境を超える移動があるなど課題も少なくないが、開催地決定の前年に参加チームを48まで拡大することが決まった大会にとっては都合が良かったのかもしれない。現実的に1か国で開催するには難しい規模まで大会は成長を続けているからだ。
2002年大会は日本と韓国が対等の立場で共催したが、今回はアメリカが主導している。試合が行われる16都市のうち11会場はアメリカ、メキシコは3会場、カナダは2会場。開幕戦こそメキシコだが、決勝を含めて準々決勝以降はすべてアメリカの会場で行われる。開催国はアメリカで、カナダとメキシコは補助開催国という形だ。
3か国での共催は、肥大化したW杯の今後に向けての貴重なテストケースになる。次回2030年大会はモロッコ、スペイン、ポルトガルと大陸をまたいだ3か国の共催が決定済。34年大会の開催地はサウジアラビアだが、今後は共催がスタンダートになりそうだ。
ただ、今回の共催には不安もある。アメリカとカナダ、メキシコの関係は貿易や移民などの問題で決して良好ではない。昨年12月にアメリカのワシントンで行われた抽選会ではトランプ大統領とメキシコのシェインバウム大統領、カナダのカーニー首相が笑顔で並んだが、政治的な問題を残したままの共催になる。
初の3か国共催が成功するか否かは、今後のW杯の在り方にまで影響する。危うい関係の3か国がW杯を通して1つになれるのか、純粋に母国を応援し、試合を楽しめる大会になるのか…。火種を抱えたままの3か国の共催に、世界中が注目している。(荻島弘一/ Hirokazu Ogishima)
