仕事でうまくいかないとき、頑張っているのに結果が出ないとき、どう気持ちを切り替えたらいいのか。女性向けにキャリア支援を行うSHE代表の福田恵里さんは「外見じゃなく、内側からギャルになるといい」という――。

※本稿は、福田恵里『「私なんか」を「私だから」に変える本』(日経BP)の一部を再編集したものです。

■2万人の調査でわかった「人生の満足度」を決めるモノ

「どう生きるか」を決めるのは、誰だろうか。

親でも、パートナーでも、会社でもない。

本来は、自分自身のはずだ。

でも私たちは、気づかないうちに、自分の意思よりも、周りの期待や空気を優先してしまうことがある。

神戸大学と同志社大学の教授が、国内2万人を対象に行った調査では、「自己決定」が幸福度に強く影響していることが分かっている(次ページのグラフを参照)。つまり、「誰かに言われたから」ではなく、「自分が選んだ」と思えること。その感覚こそが、人生の満足度を大きく左右している。

出所=『「私なんか」を「私だから」に変える本』

例えば、何かに挑戦しようとしたとき。

私たちのスクールへの入会を迷う人の中には、「パートナーに反対されるかも」と話す人も少なくない。

でも、そのときに意思決定を他人に委ねてしまうと、もしうまくいかなかったときに、「あの人のせいでこうなった」と思ってしまう。

逆にうまくいったとしても、「あの人のおかげで成功した」となり、自分の力として受け取ることができなくなる。

大事なのは、自分が選んだ道を正解にしていくことだ。自分で選んだ経験は、すべて自分の血肉になっていく。

人生の手綱を、自分で握ること。それが、この本を通じて、あなたに一番伝えたいことだ。

■「人と違う」は欠点ではない

「みんなと同じ」でいることは、思いのほか疲れる。話を合わせ、好みを隠し、少しずつ自分を削りながら、その場に溶け込もうとする。そうやって手に入れた「普通」は、居心地がいいようで、どこか窮屈だ。

誰かと違うことは、ずっと「欠点」として扱われてきた。趣味が変わっている、感覚がズレている、考え方が独特すぎる。そう言われるたびに、人はそっとその部分を引っ込める。

でも、よく考えてみると、世界が動いた瞬間のほとんどは、「ズレた人」が起点になっていた。みんなが当たり前だと思っていたことに疑問を持った人。みんなが諦めていたことに、まだ可能性を見た人。その「ズレ」こそが、新しい視点であり、まだ誰も開けていない扉だった。

価値というのは、希少性に宿る。誰もが持っているものは、それ自体では際立たない。逆に言えば、あなたにしかない感覚、あなたにしか見えない景色、あなただけが持つ問いの立て方――それはそのまま、他の誰にも代替できないものだ。

「人と違う」は、怖れるべき欠点ではない。それは、静かに、しかし確かに、あなただけの輪郭を形づくっている。自分のズレを恥じなくていい。そのズレの中に、あなたにしか生み出せないものが、眠っている。

■心にギャルを住まわせる

「ギャル」と聞いて、何を思い浮かべるだろう。

派手なネイル、巻き髪、「マジ卍」みたいな言葉――そういうビジュアルのイメージが先に来る人も多いかもしれない。でも、ギャルの本質は、見た目ではないと思っている。

写真=iStock.com/ANRiPhoto
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ANRiPhoto

ギャルの一番すごいところは、メンタルのつくり方だ。

他人の目より、自分のテンション。正解より、ノリと直感。落ち込んでも「まあいっか!」と切り替える速さ。他人と比べてどうこうじゃなく、「私が楽しいかどうか」を判断軸にする、あのブレなさ。

それが、マインドギャルだ。

ファッションは関係ない。スーツを着ていても、地味めな服が好きでも、心の中にギャルを1人住まわせておくことはできる。例えば、ちょっと失敗したとき。普通ならぐるぐる引きずるところを、マインドギャルは「あー、やっちゃった! ま、次ね!」と処理する。

誰かの評価が気になりそうなとき。「でも私は私でよくない?」と、ふわっと着地する。

これは、能天気とは違う。自分なりにちゃんと考えた上で、それでも必要以上に引きずらない選択をしている、一種の生き方の技術だと思う。

真面目で、頑張りすぎて、疲れてしまう人ほど、マインドギャルが必要かもしれない。

たまに声をかけてくれる心の中の小さなギャルが、「ねえ、もうちょっと自分に甘くしていいんじゃない?」と、

――そんな存在を、心に1人住まわせておくのはどうだろう。

外見じゃなく、内側からギャルになる。それが、マインドギャルのすすめ。

■「どちらでもない」は優柔不断ではない

世界は、2つに割れたがる。

右か左か。仕事か家庭か。強いか弱いか。正しいか間違っているか。意見が対立するとき、人はすぐに「あなたはどちら側か」を問う。そして、どちらかを選ばなければ、曖昧な人間だと思われる気がして、誰もが少し、急いで旗を持つ。

写真=iStock.com/mesh cube
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mesh cube

でも、本当にそうだろうか。

例えば、「論理」と「感情」。ビジネスの場では論理が正しくて、感情は余計なものだと言われがちだ。でも、論理だけで動く人間はいないし、感情のない判断に人はついてこない。どちらかが優れているのではなく、どちらも、人間の思考の一部だ。

「強さ」と「弱さ」も同じかもしれない。強くあろうとするとき、人はしばしば弱さを隠す。でも、自分の弱さをちゃんと知っている人は、他人の弱さにも静かに気づける。それは、強さの別の顔だ。

二項対立は、思考を速くする。AかBかに整理すれば、判断が早い。でも、速さと引き換えに、こぼれ落ちるものがある。グラデーション、矛盾、どちらでもあること――そういう、割り切れないものの中に、案外、本質が宿っていたりする。

「どちらでもない」は、優柔不断ではない。2つの極の間に広がる広大な余白を、ちゃんと見ている、ということだ。

■バランスではなく、ミックス

私は子育てと仕事の両立にも、この考え方を取り入れている。

ワークライフバランス」ではなく、「ワークライフミックス」という考え方だ。

仕事と子育ては、決して相反するものではない。

仕事で培った思考力は、子どもの「なぜ?」に向き合う力になる。子育てで鍛えられた段取りや想像力は、チームを動かすときに静かに活きる。子どもと過ごす時間が、仕事で煮詰まった頭をほぐすこともある。混ざり合うことで、それぞれが豊かになる瞬間が、確かに存在する。

バランスではなく、ミックス。切り分けるのではなく、溶け合わせる。

それは、どちらかを諦めることでも、どちらも中途半端にすることでもない。仕事も子育ても、自分という1人の人間の中で起きていることとして、まるごと引き受ける、という生き方だ。

「どちらを優先するか」ではなく、「どう混ぜ合わせるか」を考え始めたとき、息苦しい2択は、少し遠くなる。

■まずは1センチでいい

大きく変わろうとすると、たいてい動けなくなる。

福田恵里『「私なんか」を「私だから」に変える本』(日経BP)

人生を変えたい」「もっと自分らしく生きたい」――そう思うとき、頭の中ではいつも、劇的な転換が起きている。

仕事を辞める。引っ越す。全部リセットする。

でも現実には、何も変わらない日が続く。変化のハードルを上げすぎて、最初の一歩が重くなりすぎているから。

1cmでいい、と思う。

いつも頼まない料理を、今日だけ頼んでみる。いつもと違う道を、帰り道に歩いてみる。言いたかったけど黙っていたことを、少しだけ口にしてみる。それは、誰かに気づかれないくらい、小さなはみ出しだ。

でも、その1cmは確かに存在する。「枠の中」にいることに慣れた体は、1cmはみ出しただけで、少し景色が変わることを知っている。怖いと思っていたものが、意外と何でもなかったことに気づく。そして次は、もう少しだけ遠くまで行ってみようと思う。

変化とは、そういうふうに、静かに積み重なっていくものだと思う。革命ではなく、ほんの少しのズレの連続。1cmが2cmになり、いつの間にか、以前の自分が立っていた場所が、遠くに見える。

大きく踏み出さなくていい。まず、1cmだけ。その小さなはみ出しが、あなたの輪郭を、少しずつ書き換えていく。

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福田 恵里(ふくだ えり)
SHE代表取締役CEO/CCO
大阪大学在学中、サンフランシスコに留学し、同世代の起業家を目の当たりにし、起業を志す。帰国後に学生時代に初心者の女性向けのウェブデザイン講座を立ち上げ、300名以上が受講。2015年リクルートホールディングスに新卒入社。17年4月、26歳の時に女性向けにキャリア支援を行うSHE株式会社を設立。主要事業である「SHElikes(シーライクス)」の累計登録者数は25万名を突破。2020年に同社代表取締役CEOに就任。2026年に著書『「私なんか」を「私だから」に変える本 一生ものの自信のつくり方』を出版。主な受賞歴に2021年IVS LAUNCHPAD優勝、2023年スタートアップワールドカップ2023東京予選にて第3位・ジャパネットグループ賞W受賞、2023年ヴーヴ・クリコ「ボールド ウーマン アワード 2023」にてボールド フューチャー アワード受賞、2024年ICCサミット FUKUOKA 2024「カタパルト・グランプリ」にて3位入賞、2025年日本スタートアップ大賞審査員会特別賞受賞、Forbes日本の起業家TOP20に5年連続選出など。
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(SHE代表取締役CEO/CCO 福田 恵里)