血管に炎症が起きて様々な症状が表れる血管炎の治療薬を服用後、その副作用とみられる肝機能障害を起こして死亡した患者が相次いでいる。

 2022年に薬の販売が始まって以降、死者は20人に上る。

 この薬は米国製の「タブネオス」という飲み薬で、欧米では安全性に限らず、効果にも疑義が生じて承認撤回を求める動きがある。

 一方、日本での販売を担うキッセイ薬品工業は、患者への投与は慎重に行うよう医師に呼びかけているが、それで万全の対応と言えるのか。薬を承認した厚生労働省も対策を急ぐ必要がある。

 亡くなった患者の多くは、薬の服用を始めて3か月以内に重い肝機能障害を起こしていた。中でも、肝臓の胆管がなくなる「胆管消失症候群」により、死亡した患者は13人に上っている。

 薬を開発したのは米製薬大手アムジェンの子会社だ。日本では年に8500人が服用しているとされる。死亡例と薬の因果関係は明確ではないが、深刻な事態だ。

 タブネオスは、血管炎の中でも国が難病に指定している重い疾患の人を対象に投与されている。

 こうした患者には従来、ステロイドを大量に投与する治療が行われてきたが、体への負担が重く、タブネオスはそれを軽減することが期待されてきた。患者は切実な思いで服薬していただろう。

 死亡例が相次いだことで、販売元は国の指示を受け、重大な副作用が起きた場合に発出する「安全性速報」を、医療関係者に配布した。服用中の患者には肝機能検査をすることなども求めている。

 被害が拡大しないよう周知徹底が重要になる。医療機関も、服薬中の患者に薬のリスクを丁寧に説明し、今後の治療方針について話し合ってもらいたい。

 タブネオスを巡り、欧米では有効性にも問題が浮上している。

 米食品医薬品局は、承認前の治験の段階で、薬の効果に関するデータを操作したり、隠蔽(いんぺい)したりした疑いがあるとして先月、米国での承認撤回を提案した。欧州医薬品庁も、データの整合性に疑問があるとして調査している。

 そもそも有効性の根拠とされたデータに虚偽があるとすれば、重大な問題になる。

 キッセイ薬品工業は、責任を持って開発企業に事実関係を確認する必要がある。政府も欧米の規制当局から情報収集し、独自に調査すべきだ。対応の遅れから、日本の患者がさらに不利益を被ることは許されない。