どんな相手であっても、どんな環境であっても、大舞台につなげられることを誰よりも証明してきた男が中東・欧州での豊富な経験を引っさげ、34歳で2度目のW杯に挑む。

 日本代表DF谷口彰悟(シントトロイデン)がキリンチャレンジカップ・アイスランド戦(31日、国立)の前日練習後、報道陣の取材に対応。「チームで充実したシーズンを送れたのが大きかったし、最後は3位が確定してコンディション調整を入れてもらいながらいい状態で今を迎えられた」と手応えを口にしつつ、「本番はこれからなので、明日のゲームからみんなでもう一回精度を上げてやっていかないといけない」と決意を語った。

 31歳で前回カタールW杯を経験した谷口は大会後、初の海外挑戦で選んだカタールの地を経て、24年夏にベルギー・シントトロイデンに移籍。アキレス腱断裂という選手生命に関わりかねない大ケガを経て、昨年10月のブラジル戦(◯3-2)で代表復帰を果たすと、W杯出場国を相手に5試合未勝利(3分2敗)という停滞感に包まれていたチームを5試合連続出場で5連勝に導き、W杯に向けて不安視されていた守備陣の救世主となった。

 W杯メンバーには第2次森保ジャパンで負傷離脱が続いたDF板倉滉、DF冨安健洋、DF伊藤洋輝が揃って選出されたが、その中でも谷口にかかる期待は大きい。固定できていない3バックの展望として「やるべきこと、自分たちが積み上げてきたものは変わらない。どんな人が出ようが、どんな組み合わせだろうがやっていかないといけない。そういう精度を上げていくことが本大会を戦っていく上で非常に大事」と冷静に語る34歳だが、その臨機応変さを実現させたのは他でもない谷口の功績だったからだ。

 31日のキリンチャレンジ杯の相手はW杯出場権を持たないアイスランド。大会直前の相手としては力の落ちる相手という見られ方もあり、この試合でのパフォーマンスがただちに先発争いのアピールにつながるわけではない。一方、長身選手を多く揃えるという点ではグループリーグで対戦するオランダ、スウェーデンとも共通点があるのも事実だ。

 前回カタール大会ではJリーグの川崎フロンターレでプレーしながらW杯メンバーに食い込み、スペインやクロアチアの攻撃陣と互角に渡り合った谷口。どんな相手であっても基準を高く持ち、“水を漏らさない”意識を徹底させてきた姿勢は、こうしたテストマッチでも大いに役立つはずだ。

「基準は変わらない。変えない。たとえ相手にボールを持たれる状況、逆にこっちがボールを持つ時間が長い状況で、やるべきことは多少は変わってくるけど、でも基準としては常に変えない。自分たちが優勝というものを目指している中で、必要なことはどんな相手でもやらないといけない。そこはディフェンダーだけでなく、チーム全体としてそういう意識は強く持っているので、明日もそういうゲームを見せられると思う」

 その中でやはり、本大会に通ずる高さ対策はアイスランド戦の大きな鍵となる。

「セットプレーだとか、前にターゲットマンがいるチームに対してどういうふうにマネジメントするかという点ではいい相手になる。本番を想定してしっかりやらないといけないし、試せる相手ではあるので、その辺は監督・スタッフが考えていることだと思うし、選手としてもどんどんトライしていく試合にしつつ、しっかり勝つ。そこを追い求めていかないといけない」

 そうした準備はピッチ外でも着実に進んでいる。いまの日本代表は練習以外でもコミュニケーションが活発なところが大きな長所。コーチ陣の拡充によってディスカッションの土台も整備されており、練習を重ねながら日々クオリティーが上がっているのだという。

「自分たちのベースがある程度あって、その中で少し変えるのか、もう少し磨いていくのかというのは毎回のトレーニングでやっているし、そこで出た反省を次のトレーニングということでやれている。ゼロからやっていくのではなく、今までの積み上げの中で少し変化を加えていくとか、もう少しいいアイデアがあれば選手からのコミュニケーションもあるし、スタッフと話してという事もある。それはもう常にやってきたことなので」

 こうした積み重ねを最大限発揮できるのは、緊迫感のある公式戦の場だ。

「親善試合だけど公式戦の中で、緊張感ももちろんあるし、そこでないと出てこない課題も間違いなくある。ピッチ内の選手もそうだし、ピッチ外の選手の準備、ベンチワークも含めて大会モードに切り替えていかないといけない。その辺はやっておくべきこと。あとはコンディションがまちまちなので、そのへんでも本大会に向けていい状態を作るのが一番大事かなと思います」。あらゆる側面に目を配り、準備は万端。いまだ右肩上がりのキャリアを描き続ける34歳の世界挑戦第2章が始まる。

(取材・文 竹内達也)