日曜劇場でも「リボーン」でもない意外なナンバーワン「春ドラマ」 「波瑠」の演技力だけではない“好調の要因”とは
春ドラマの人気ナンバーワンは、日曜劇場の「GIFT」(TBS)でも高橋一生が主演の「リボーン〜最後のヒーロー〜」(テレビ朝日)でもなかった。波瑠と麻生久美子がW主演する「月夜行路(げつやこうろ)―答えは名作の中に―」(日本テレビ)だという。
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仕事漬けの夫と生意気盛りの子どもたちにないがしろにされる専業主婦の沢辻涼子(麻生)。彼女は夫の浮気を疑い、ひょんなことから入った銀座のバー「マーキームーン」で文学オタクかつ自称作家志望のオーナーママ・野宮ルナ(波瑠)に出会う。
ルナは鋭い洞察力で涼子の家族構成から夫の職業、さらに元彼にまつわる後悔まで当ててみせる。その元彼に会うため強引に連れ出された大阪で、2人は事件に巻き込まれていく――というのが初回のストーリーだ。視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区・世帯:以下同)は5・3%だった。日テレ関係者は言う。

「直近の第7話は5・0%でした。今期の日曜劇場『GIFT』は初回9・4%に始まり第7話で7・5%。高橋が主演の『リボーン』も初回6・1%から第7話では5・0%に落ちている。そんな中で健闘していると言っていいでしょう。なにより『月夜行路』は配信で数字を上げています。TVerでは第6話の再生回数が200万回を超え、初回からの推計再生数は1300万回を突破。お気に入り登録数は5月27日現在で71・6万と今期のドラマでは第1位なんです」
ちなみに「GIFT」のお気に入り登録数は69・2万、「リボーン」は62・5万だ。「月夜行路」の魅力はどこにあるのだろう。
キャスティングとスタッフの妙
「まず波瑠と麻生のW主演でしょう。波瑠は2015年後期のNHKの朝ドラ『あさが来た』のヒロインを務め、今世紀最高の平均視聴率23・5%を記録しました。また、麻生はシリアスものからコメディまで何でもこなせる俳優で、お茶の間でも安心できる顔です。ほぼこの2人でストーリーが展開するので、キャスティングが多過ぎて誰を見ていいのかわからないということにもならない、とて見やすいドラマです」
確かにスッキリしている。
「そして“痛快文学ロードミステリー”と名付けているように、名作文学の知識で事件を解決する知的エンターテインメントを貫いています。タイトルはもちろん志賀直哉の『暗夜行路』のモジリで、たとえば、初回にモチーフとなったのは谷崎潤一郎『卍』、近松門左衛門『曽根崎心中』、アガサ・クリスティー『オリエント急行殺人事件』、江戸川乱歩『犬神家の一族』と、視聴者も“こんなインテリなドラマを見ている私って素敵”と知的好奇心を満たしてくれるところもあるのでしょう」
さらに、作り手の変化も大きいという。
「秋吉理香子さんの小説『月夜行路』(講談社)をTBSの『夜行観覧車』『リバース』で知られる脚本家の清水友佳子さんがテレビ向けの謎解きエンターテインメントとして仕立て直しました。さらに、日テレのプロデューサー・小田玲奈は情報番組の出身ながらバカリズム脚本の『ブラッシュアップライフ』と『ホットスポット』でドラマ賞を総なめにした若手のやり手です。さらに、同じく日テレのバラエティー班から『THE突破ファイル』や『沸騰ワード10』の演出家・水嶋陽を招き入れたのも大きい」
なぜバラエティー班をドラマに?
崖っぷちの戦略
「『突破ファイル』の再現ドラマは本物のドラマ以上の出来という評価もありますからね」
なぜそんな人選が生まれたのだろう。
「日テレの水曜22時台は1985年から続くドラマ枠で、同枠で歴代最高の40・0%を記録した『家政婦のミタ』(11年)はじめ『ごくせん』(02年)、『ハケンの品格』(07年)、『ハコヅメ〜たたかう!交番女子〜』(21年)など人気作を放送してきました。しかし、フジテレビが真裏にドラマ枠を設けたことで24年に撤退。昨年4月に復活したものの4作連続で平均3%台が続き、再撤退が囁かれるほどでした。また、日曜ドラマ枠では23年末の『セクシー田中さん』ショックもあり、日テレのドラマ部はしょげ返っていたこともあります。そんな崖っぷちの中で、別部署からの人材投入が新しい風を吹き込んでくれたと思います」
とはいえ「月夜行路」の視聴率は5%台である。
「だとしても前作まで3%台だったのですから、ドラマ部はお祭り騒ぎと聞いています。この勢いを日テレが勝負をかける10月期の『俺たちの箱根駅伝』(主演・大泉洋)で爆発させようというわけです」
さらにその勢いを、来年正月に開催されるリアル「箱根駅伝」に持って行こうという魂胆か――。
デイリー新潮編集部
