犬猫の死骸の山と風呂場生活を送っていた愛護団体代表 逮捕1週間前に「一頭でも預かって」とLINEが…里親が見た異変
犬29匹と猫10匹を劣悪な環境で飼育し虐待したとして、警視庁保安課は5月20日、東京都品川区の動物愛護団体「一般社団法人 保護犬猫の家ななちゃんのおうち」代表理事、丸ノ内留実容疑者(47)を動物愛護法違反容疑で逮捕した。
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【写真を見る】「落ち着くまでどの子か預かってもらえないでしょうか?」…丸ノ内容疑者が逮捕一週間前、女性らに送ってきたLINE
昨年12月、品川区から鳴き声や悪臭についての通報があり発覚。今年4月に家宅捜索したところ、丸ノ内容疑者の自宅である施設内には糞尿が床に高く積み上がり、30〜100匹ほどとみられる犬猫の死骸や骨が散乱していたという。
保護された39匹のうち半数以上には目などに疾患が確認されており、適切な治療を受けさせず放置していたものとみられる。丸ノ内容疑者は「すぐ治療が必要な個体はいなかった」と容疑を一部否認。死骸を食べて生きながらえた犬もいたことなども報じられている。

共同通信によると、警視庁が4月に測定したアンモニア濃度は133ppmを記録していたという。これは悪臭防止法で住宅地に適用される基準値1ppmの133倍で、喉への激しい刺激、頭痛、吐き気を催し、防護マスクなしでの長時間の滞在は困難とされるレベル。こうした環境が、いかに犬猫に負荷をかけていたかは想像に難くない。
丸ノ内容疑者は「火葬費用が高いので放置した」「同居していた息子が家から出ていき、自分1人で世話をすることになったが、片づけるのがばかばかしくなった」などと供述しているというが、愛護団体「しあわせにゃんこ」の山本紀之代表は、
「保護活動をめぐるトラブルでは、個人レベルの“みなし団体”が問題視されるケースは珍しくない。しかし、法人格を持つ団体でここまでの惨状に至った例は異例。本当に許しがたい行為です」
と驚きを隠せない。一方、丸ノ内容疑者には“熱心な保護活動家”としての一面もあったようだ。
「普通の保護団体に見えた」という証言
今回、およそ1年前に丸ノ内容疑者の団体から保護犬を譲り受けたという女性に話を聞くことができた。「当時は問題のある団体とは思わなかった」と振り返る。
「『ななちゃんのおうち』のサイトで、気になる犬を見つけて問い合わせをしたのがきっかけでした。それから、丸ノ内さんと数回面談した後に契約書を交わしてトライアル。本譲渡の際も改めて契約書を結びました」
女性はこれまでにも2度、別の保護団体から保護犬を迎え入れた経験があり、「流れとしては他の保護団体と大きく変わらず、むしろきちんとした団体だなという印象」だったという。
「犬を引き取ったあとも、LINEで写真を送るとすぐに返信がありました。“今、長野に引き渡しにきています”とか、“譲渡した犬が迷子になって千葉で探しています”など、活動報告も頻繁にあり、一生懸命に保護活動をしている人に見えましたね」
逮捕される一週間前の5月13日には、丸ノ内容疑者からこんな連絡があったという。
「『頭数制限に引っかかり、行政の手が入ることになった。犬でも猫でもいいから、一頭でも預かってほしい』『一時的に犬猫達を安全な場所に置きたい。最悪な場合、連れていかれる事もあると聞き、それを回避する為にお願いした次第です』とLINEが来たんです。小型犬なら知人に頼めるかもしれないと返したところ、“詳細を送ります”と来て、連絡が途絶えた。その後、逮捕のニュースを見て本当にびっくりしました」
女性から送ったメッセージには現在も既読が付かないままだという。
「玄関だけで対応」すでに崩壊していた現場
一方で、施設を訪れた際には違和感もあった、と女性は振り返る。
「譲渡希望の犬と2回目の面会の時、丸ノ内さんは玄関口で対応し、室内には入れてくれませんでした。奥の部屋からはたくさんの犬の鳴き声が聞こえて、うるさいほど。会話が聞き取りづらいため、やりとりを記録しておくため動画撮影をしました。その時はマスクをしていたのですが、それでも臭いが強烈で、正直ウッとなりました。アンモニア臭というより獣臭ですね。中の犬たちも相当つらかったのではないでしょうか」
団体のホームページではスタッフ7人体制だと紹介されていたが、実態は見えにくかった。
「最初の面談も、“預かった猫を病院に連れて行っているので、息子が代わりに行きます”と、丸ノ内さんの息子さんが代理で駅まで迎えに来てくれました。ほかにスタッフらしい人は見たことがありません。保護などの実務を担当する人はいなくはなかったようですが、実際には人手が足りていなかったのでは」
丸ノ内容疑者の息子が自宅を出て行ったのは、昨年12月とも報じられている。
「息子さんがいなくなって、犬も猫もたくさんいて、疲れて燃え尽きてしまったのでは。うちの犬も彼女を怖がっていなかったので、そこまで悪い人とは思えないんです」
現在は削除されているが、「ななちゃんのおうち」のサイトの《幸せ報告》では、多くの保護犬猫が里親のもとで順調に暮らす姿が掲載されていた。また《活動内容》ページでは、飼育放棄や虐待、ネグレクト、多頭崩壊に胸を痛めるさまが綴られてもいた。
「助けたい一心」“アニマルホーダー”という病理
報道によれば、丸ノ内容疑者は犬猫のために部屋を明け渡し、自身は風呂場で生活していたという。この状況は単なる“善意の暴走”だけでは説明しきれない、と指摘するのは、
精神疾患や依存症治療に詳しく、長年アニマルセラピー研究にも携わってきた東京・世田谷「あいわクリニック」の横山章光医師だ。
「この事件は、典型的なアニマルホーダーによるケースといえます。他の部屋を動物に明け渡し、自分は風呂場で暮らしていたという時点で、通常の判断能力から大きく逸脱しています」
アニマルホーダーとは、飼育能力を超えて犬猫を抱え込み、適切な世話ができなくなっても手放せなくなる人を指す。本人には「保護している」「助けている」という強い使命感がある一方、客観的には虐待状態に陥っていても、その異常性を認識できないケースが少なくない。背景には孤立、承認欲求、発達特性、知的障害、強迫傾向など複数の要因が絡むとされ、2013年には米精神医学会の診断基準「DSM-5」に“ため込み症(ホーディング)”が追加された。近年、日本でも社会問題化している。
アニマルホーダーの根深い問題は、逮捕だけでは終わらない点にある。
「刑事処分だけでは根本的な解決になりません。本人が“自分は悪いことをしている”という認識を持てないまま、出所後に同じことを繰り返すケースもある。叶うことならば、容疑者の生い立ちや家庭環境も含めて丁寧に聞き取り、現在の知能や認知能力の検査なども実施した上で、継続的な診察と治療につなげたい。すべてのアニマルホーダーは、福祉や医療につなげる必要があると強く感じます」(横山医師)
前出の女性も丸ノ内容疑者の身を案じる。
「以前の彼女と変わってしまったのでは。はじめからあんな人ではなかったと思います。犬猫がどんどん増えて大変なことになって、それを見たくなくてお風呂場で過ごしていたのかもしれない。逮捕後、残された犬猫はどうなったのでしょうか。1匹しか救えなかったと思うと胸が痛みます。もっと早く“助けて!”と声を発してほしかった」
動物愛護の現場では近年、行政の引き取り制限強化などを背景に、民間の保護団体に負担が集中している。SNSを通じて個人でも“保護活動家”として発信できる時代になった一方、十分な資金、人員、医療体制を持たないまま活動規模だけが膨張するケースも少なくない。
「アニマルホーダーも、個人の献身に頼りすぎる保護活動も、もっと社会全体で考えなければならない問題。どこかでだれかが介入できていたら、この悲劇は生まれなかったかもしれない。このままだと何度も同じことが繰り返されると思いますよ」(横山医師)
デイリー新潮編集部
