食後に眠くなる人は「糖質老化」が進んでる? 血管の傷みが全身の臓器ダメージへとつながる「メタボリックドミノ」を引き起こす食後のメカニズム
食後に眠くなる、だるくなる、食べたのにすぐに小腹が減る――思い当たる人も少なくないだろう。著書『糖質疲労』『脂質起動』が累計24万部を超える糖尿病専門医の山田悟氏は、こうした状態を「糖質疲労」と名づけ、健康への影響について警鐘を鳴らしている。
糖質が老化を招くメカニズムと正しい食べ方を最新の科学的エビデンスをもとに解説した、山田氏の最新刊『糖質老化』(サンマーク出版)より一部抜粋、再構成してお届けする。
血糖値を下げるために欠かせないホルモン
糖質を摂取すると、血糖値が上昇します。血糖値を下げるために、すい臓からは「インスリン」が分泌されます。この仕組みはご存じの方も多いでしょう。
最近の研究で、この「インスリン」そのものが、からだの老化の進み方にかかわる可能性があるとわかってきました。
インスリンは、血糖値を下げるために欠かせない大切なホルモンです。血糖値が上がると分泌され、血液中の糖を細胞に取り込ませてエネルギーとして使わせます。
しかし、インスリンがたくさん出る状態が長く続くと、細胞の中では「成長し続けるモード」が強くはたらきます。
本来、細胞は必要なときに成長し、必要でないときに休むことでバランスを保っています。ところが、この〝成長モード〟がはたらきすぎると、細胞はだんだん疲れ、傷みやすくなり、老化が早まることが動物実験などで確認されています。
慢性的な高血糖が、内臓を「細胞レベルで」変化させる
反対に「インスリンのはたらきを弱めると寿命が延びる」という現象が、線虫やハエ、マウスなど様々な生き物では見つかっています。これは、インスリンが少ない状態のほうが、細胞がゆっくり使われ、長持ちする可能性を示しています。
人間でも、空腹時のインスリン値が高い人や、インスリンが効きにくくなっている人(効きにくさを補うため、インスリンの分泌量はむしろ増えます)は、心臓病や認知機能の低下、さらには死亡率が高い傾向があることが報告されています。
インスリンが「出すぎる状態」が長く続くことは、老化に関係している可能性が高いのです。
ランチを取った後に眠くなる、食事の後にだるい、頭痛がする、満腹にならないといった、「糖質疲労」を感じていながら、糖質を減らす食べ方にまだ取り組まれておらず、食後高血糖が続く状態は、細胞や臓器に変化を起こします。
「食後眠い」とか「ランチの後にボーッとする」といった「糖質疲労」がいわば感覚的なものである一方で、「糖質老化」とは、そんな食後高血糖が長く続くことによる、細胞や臓器の悪しき変化とお考えください。
食後高血糖状態が慢性的になると、からだの中では「糖化×酸化」により糖質老化が始まります。
糖質より脂質を有効活用する「脂質起動」ができていない人も──書籍『脂質起動』に、糖質疲労を解消する食べ方の詳細を書きました──これから糖質老化が本格化する恐れがあります。
糖尿病(2型)も糖質老化によって生じるものと言えるかもしれません。実際、日本人では、糖尿病の患者さんの平均寿命は、そうでない人と比べて男性で約7年、女性で約10年短いと言われています。それだけ老化が早いと言えるのです。
「食後高血糖」と「血糖値スパイク」が糖質老化を起こす
100歳以上の百寿者の研究をしている慶應義塾大学医学部百寿総合研究センターによると、百寿者には糖尿病が少ないこともわかっています。
普段の生活で無意識に糖質老化を避けているため、老化スピードが遅くなり、100歳を超えても元気に暮らせている可能性があります。
「糖質老化」を引き起こす要因は、糖質疲労の要因と同じ、前述の「食後高血糖」と「血糖値スパイク」の2つです。
糖質を含む食事をすると、血糖値は誰でもある程度上がります。食後高血糖とは、その血糖値が上がりすぎる状態。通常は100㎎/㎗前後の血糖値が、食後1時間前後で140㎎/㎗を超えるのが食後高血糖です。
中国で行われた大規模な研究では、成人のおよそ2人に1人が食後高血糖を起こしていると報告されています。日本を対象とした詳しい調査はまだありませんが、中国人と同じ東アジア人である日本人でも、成人の2人に1人が食後高血糖を起こしている可能性は十分考えられます。
食後高血糖と併発しやすいのが、血糖値スパイクです。
血糖値スパイクとは、食後高血糖の直後、インスリンが過剰に追加で分泌されることで、血糖値が下がりすぎて、血糖値がスパイク状に乱高下することをいいます。
書籍『糖質疲労』でも『脂質起動』でも、「メタボリックドミノ」を紹介しました。
メタボリックドミノとは、生活習慣の乱れが、様々な不調や病気へと連鎖していくプロセスを表したもので、ドミノのもっとも上流には、次の図のような、糖質の過食による食後高血糖があります。
下流に向かうにつれて、ドミノが次々と倒れるように「糖尿病」「高血圧」「肥満」「脂肪肝」などが連鎖しながら、最終的には「心臓病」「脳卒中」「認知症」といった健康寿命を縮める病へとつながります。
やがて全身の臓器にダメージが広がる
このドミノで説明するならば、メタボリックドミノで「ドミノが倒れる」ことこそが、糖質老化にほかなりません。つまり、糖質過多を控えて食後高血糖が防げたら、ドミノがやすやすと倒れることはなく、糖質老化は避けられるのです。
経過した暦時間は巻き戻せませんが、メタボリックドミノのうち、糖尿病、高血圧、高脂血症、肥満といったいわゆる「メタボ」、脂肪肝までなら、まだ元に戻れます(これを「可逆的」といいます)。糖質老化を避けるような食生活を送っていれば、時間を巻き戻すように生物学的年齢が若返るのです。
そこを越えてしまうと、たとえその後に糖質を控えたとしても、倒れ始めたドミノを止めることはできません。からだに起きた変化が元に戻らなくなってしまうのです(これを「不可逆的」といいます)。
糖質によるダメージが積み重なると、まず血管が傷つきます。
太い血管で起こるトラブルを「マクロアンギオパチー」といいます。血管の内側が傷つき、だんだん狭くなっていくことで(これを動脈硬化といいます)、心筋梗塞や脳卒中といった命にかかわる病気のリスクが高まります。
一方、細い血管、つまり毛細血管で起こるトラブルを「ミクロアンギオパチー」といいます。腎臓や目、神経など、からだのすみずみに張り巡らされた毛細血管が傷むと、腎臓のはたらきが落ちたり、視力が低下したり、手足がしびれたりといった問題が起こります。
つまり、糖質老化が進むと血管が傷み、やがて全身の臓器へとダメージが広がっていくのです。
「今日がいちばん若い」という言葉がありますが、糖質老化も早期に発見し、早期に対処しなければ、後戻りできない日がいつか来るのです。
文/山田悟
糖質老化
山田 悟

2026/4/30
1,540円(税込)
224ページ
ISBN: 978-4763142870
お昼を食べた後に眠くなる=「糖質疲労」、
放ったままにしていませんか?
糖質疲労を放置していると起こる
「細胞や内臓の変化」。――すなわち、これぞ「糖質老化」です。
糖質老化を防ぐために……
◎避けるべきその1:カロリー制限
最新研究で判明! カロリー制限でやせると、結果的に太り、老けます。
◎避けるべきその2:すべての元凶「果糖」
お酒を飲まない「脂肪肝」、「心不全」が異常に増えている犯人は「果糖」。
からだじゅうを「脂肪まみれ」にしてしまう、この「果糖」の怖さに迫ります。
エビデンスの「質」に圧倒的定評のある、糖尿病専門医・山田悟医師による、
世界最先端の「糖質とうまく付き合う方法」とは!?
「老けない食べ方」も、本書でご紹介しています。
「“糖質過剰摂取”を、次の世代の負の遺産としてはいけない」
という山田医師の強い思いから生まれた
『糖質疲労』『脂質起動』『糖質老化』の3部作、
糖質が、疲労感だけでなく「内臓の変化」「つくはずのないところへの脂肪」
といった健康被害をもたらすことを、懇切丁寧にご紹介。
「小見出しがたくさんで、とことん読みやすい健康本」と評判の本書で
ご自身やご家族のための、ただしい健康知識をアップデートしてください。
<目次より>
甘いものへの欲求を我慢せず
太らず、老いず、
内蔵を長持ちさせる「食べ方」があります。
・中年太りの人は「すい臓疲労」している
・「果物は低GIだからOK」は勘違い
・心不全パンデミックの陰に「果糖」?
・痛風も「プリン体」より「糖質」が原因
・内臓脂肪を超える悪玉?「第3の脂肪」とは?
・お酒の飲みすぎではなく、「果汁ジュースの飲みすぎ」で脂肪肝に
・「甘いものがやめられない人」がまず真っ先にすべきこと
