高市首相とも面会を重ねる

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 自民党本部には、歴代首相もこぞって助言を仰ぐ「影の幹事長」がいるという。80歳にして、いまなお現役の事務方トップを務める元宿仁事務総長のことである。党内の“カネと情報”を握り、「大臣クラスより格上」と称される影響力を持つこの人物の正体とは。

※「週刊新潮」2026年3月26日号掲載の記事【自民党に君臨する80歳「党職員」の正体】(「新潮QUE」で配信中)を再編集したものです。肩書や年齢等全て当時の情報です。

「私なんて本当に取るに足りない、何かの記事になるような人間ではありませんよ。ただ長いこと、自民党の事務方をやってきたものですから、色んなことを見てきたのは確かです。いわば“歴史の生き証人”というところでしょうか」

高市首相とも面会を重ねる

 取材に応じるのではなく「雑談だ」と断りを入れた上で、おもむろにそう語り始めたのは、自民党の元宿仁事務総長である。

「自民党の金庫番」や「影の幹事長」とも呼ばれる元宿氏について、自民党関係者がこう話す。

「佐藤栄作首相時代の1968年に党本部職員となった後、経理畑を長く歩み、資金面での実務を一手に担ってきました。党のカネの流れを知り尽くし、歴代首相もこぞって頼りにしてきたのが彼です。傘寿を迎えてなお、党内に隠然たる影響力を誇ります」

 元宿氏が経理部長と兼務する形で、事務方トップの事務局長に就いたのは2000年。その後、事務局規定にはなかった事務総長に就任するが、09年の民主党政権誕生の翌年に退職。しかし12年、第二次安倍政権が発足したのを機に復職し、現在に至る。

 本人が言うには、

「これまで少なくとも十数回は、党に辞職願を出しました。ただその度に、何かと理由をつけて呼び戻され、気がついたらまた事務総長をやっているという繰り返し。一度は趣味の絵画を勉強するため、フランスへ留学しようと辞職を申し出ましたが、党から“送別会をまだやっていないので、少しだけ事務局に顔を出してもらえませんか?”と言われ、行ってみたら何だかんだと懇願されて結局、辞められなかったこともありました」

唯一、“カネと選挙”の両方が分かる人物

 退職したはずの元宿氏を三顧の礼をもって呼び戻したのは、ほかならぬ故・安倍晋三元首相だったといい、先の党関係者によれば、

「元宿さんは党のカネを握っているだけでなく、選挙の時にはそれを差配する才覚も備えていました。党職員約190人の中で唯一、“カネと選挙”の両方が分かる人物として、余人をもって代えがたい存在となっていたのです。だからこそ、一代限りの政治任用である事務総長という役職が彼のために新設された。安倍さんだけでなく、菅義偉(77)、岸田文雄(68)、石破茂(69)元首相らも選挙になると、必ず元宿さんに助言を求めていました」

 高市早苗首相(65)も昨年12月23日、党本部で元宿氏と面会したが、

「解散を考えていた高市首相が相談したところ、逆に諫められたといいます。仮に衆院で勝っても、参院対策や連立工作など課題が山積していたのが理由です。そのアドバイスを無視して冒頭解散に突き進んだのは、いかにも人の話を聞かない高市さんらしいと評判になりました」(政治部デスク)

「元宿調査」の実態

 時の総裁だけでなく、麻生太郎副総裁(85)や、24年に政界引退した二階俊博元幹事長(87)からの信頼も厚かったという。

「特に二階氏については、元宿さんの働きかけによって党本部に専用室が用意されたことがありました。22年、当時の岸田首相へ“功労者である二階さんに部屋を提供するべきだ”と彼が進言し、党本部5階に国土強靭化推進本部長室ができたのです。その元宿さんを、かつて二階氏は“5、6回生議員よりも力がある”と評したことがあった。つまり大臣クラスよりも格上だということです」(党本部OB)

 元自民党幹部がその力の源泉をこう明かす。

「選挙になると、公認料や選挙運動資金、広報費などとにかくカネがかかります。そのお金を管理しているのが元宿さんですが、2年前の総選挙で裏金問題により非公認となった候補者たちに2000万円が配られた一件も、彼と森山裕幹事長=当時=(80)の差配だったとされます。ただし元宿さんはカネだけでなく“情報”も握ることで、唯一無二のポジションを占めるようになりました」

 自民党は選挙があると、独自の情勢調査を行なうが、

「調査をやる・やらないは元宿さんの判断によるところが大きいため、党内では“元宿調査”と呼ばれています。しかも上がってきた数字を、彼が独断でイジった上で各所に流していると言われます。実際、先の衆院選で、例えば武田良太元総務相(57)は十分に勝てると見られていたのに、党の調査ではまさかのCマイナスを付けられた。それを見た武田さんが“元宿は鉛筆を舐めすぎだ”と怒る一幕がありました」(同)

 優位であっても、接戦のように数字を“調整”し、候補者が慢心することのないよう発破をかける意味合いがあるという。

 衆院選の大勝の裏側には、「影の幹事長」にしかできない芸当があったというわけか。

デイリー新潮編集部