横浜DeNAベイスターズの相川亮二監督

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 DeNAが正捕手の山本祐大を放出し、ソフトバンク・尾形崇斗、井上朋也の1対2の交換トレードが成立したことを今月12日に発表した。松尾汐恩を正捕手で起用し、投手力を強化することが狙いだったが、DeNAの球団内部でもこの衝撃的なトレードに疑問の声が上がっている。これ以外にも、DeNAでは昨シーズン以降、不可解な“補強”例が続出。24日には昨夏獲得したばかりのビシエドが引退し、衝撃を呼んだ。中心選手の相次ぐ離脱に、再び「暗黒期」へと突入するのではないかとの懸念も出ている。

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フェイクニュースかと

 DeNAの中堅選手は「山本祐大、ソフトバンクにトレード移籍」の一報を聞いて、驚きを隠せなかったという。

横浜DeNAベイスターズの相川亮二監督

「ネットニュースで知って……びっくりしましたよ。最初はフェイクニュースかと思いましたから。でも本人が報道陣の取材を受けている写真を見て本当なんだと。トレードはこの世界にいればどの選手にでも起こることですが、今回はまったく想像できなかったですね。祐大には頑張ってほしいです。球界を代表する捕手に絶対なれる。一緒にプレーした選手たちは誰もが思っていますよ」

現場への配慮がない

 フェイクニュースと疑っても無理はないだろう。山本祐はDeNAの主力選手だった。ドラフト9位で入団すると、23年に盗塁阻止率.455を記録。同期入団の東克樹と最優秀バッテリー賞に選出されると、24年は108試合出場で打率.291、5本塁打、37打点をマークしてゴールデングラブ、ベストナインを受賞した。同学年の牧秀悟と共にチームを引っ張る存在だったが、球団フロントの思惑は違ったようだ。将来を見据えた時にドラフト1位の松尾を正捕手に育てたい。山本祐が早ければ来年中にFA権を取得する背景も今回のトレード劇に影響していたのかもしれない。出場機会を求めてFAで他球団に移籍するなら、松尾を早い段階で正捕手に据えた方がスムーズにチーム作りできる。松尾の可能性に賭けたトレードと言えるが、球団OBは「DeNAは編成の人間が野球を知らなすぎる」と苦言を呈する。

「阪神は坂本誠志郎、伏見寅威、梅野隆太郎と3人の捕手を起用している。巨人も大城卓三、岸田行倫、小林誠司、甲斐拓也、山瀬慎之助と正捕手クラスが5人います。現代野球は捕手の併用が主流で能力の高い捕手は何人いてもいい。来年から指名打者制が導入されますし、山本祐と松尾の同時起用が可能な中で、なぜこんな不可解なトレードをするのか。山本祐は27歳、松尾は21歳で世代が違うことも頭に入れなければいけません。松尾が一本立ちするまでにまだまだ時間が掛かりますし、山本祐をトレードに出すことで1軍実績のある捕手が戸柱恭孝しかいなくなる。昨オフに桑原将志がFA移籍した際に人的補償で捕手の古市尊を獲得したので、『この時点で山本祐のトレード放出を考えていたのでは』という報道を見ましたが、それなら昨オフに捕手の伊藤光(楽天)が出場機会を求めてFA権を行使した際、なぜ引き留めなかったのか。トレードを行った時期も現場への配慮がなさすぎます。これから交流戦でソフトバンク戦を控えているのでサインをすべて変えなければいけない。首脳陣、選手に掛かる負担を考えたら、交流戦後にトレードを敢行するべきでしょう」

久々に誕生した大黒柱

 DeNAは昨年シーズン途中に藤浪晋太郎、ビシエド、フォードを緊急補強。制球難の藤浪に関してAIを駆使して改善に自信を見せていたが解消できず、今年は開幕からファーム暮らしが続いている。昨オフには攻守の中心選手だった桑原将志がFA権を行使して西武へ、伊藤光も出場機会を求めて楽天にFA移籍した。影響力の大きい選手が次々にチームから去っていく。そして、山本祐もまさかの形でトレード放出された。

 松尾に掛かる期待は大きいが、正捕手が抜けてチームが一気に弱体化したケースが過去に何度もあった。DeNAの前身・横浜時代に谷繁元信がFAで流出したことにより、暗黒時代に突入したことを記憶しているファンは多いだろう。正捕手に成長した谷繁は1998年に38年ぶりのリーグ優勝、日本一に導き、その後のシーズンもAクラス入りしていたが当時の森祇晶監督とソリが合わず、01年オフに中日にFA移籍。横浜は02年以降の10年間で8度の最下位と暗黒時代が続いた。一方で谷繁を正捕手に据えた中日は落合博満監督の下で黄金時代に。当時の横浜でプレーした球団OBは、

「シゲがいなくなって、チームがガタガタになりましたね。捕手の若返りがうまくいかず、投手が育たない。『グラウンド上の司令塔』と呼ばれるポジションの重大性を痛感しました。捕手は数値化したデータだけでは測れない影響力がある。レギュラーは明け渡すものでなく、奪い取るものです。シゲがいなくなって以後、横浜の捕手として初めてベストナインやゴールデングラブ賞を受賞するなど、久々に誕生した大黒柱が山本祐大でした。まさかトレードで手放すとは思わなかったですけどね。再び暗黒期に突入しなければいいですが……」

 と懸念する。

 24日には昨夏に獲得したばかりのビシエドが、わずか1年足らずで引退するという異例の事態が起きた。

続く「山本ロス」

 DeNAでは、近年、現場に対してフロントの権限が強まっている。今回の件を受けても、2018年まで編成のトップを務めていた高田繁GMの時代であれば、藤浪は絶対に取らなかったし、山本も出さなかったはず、との声が聞こえてくる。そうした評判は球界に広がっていて、DeNAでの指導者就任に二の足を踏む元選手も出ているほどだ。ちなみに高田氏より後のDeNA編成トップはみな、選手OBではない、親会社から出向してきたなどの「背広組」だ。

 フロントが主導にしてチーム編成を行うことは理解できる。現場の監督が代わるたびに強化方針が変わっていてはチーム作りがブレてしまう。ただ、現場の首脳陣、選手たちが理解に苦しみ、士気を下げるような戦力刷新は本末転倒だ。山本祐がトレード移籍してから数日後、DeNAのあるコーチは「選手たちは簡単に気持ちを切り替えられないですよ。それぐらいショックが大きい」と胸中を察していた。

 24日現在、借金2の4位と低迷するDeNA。ファンの間でも「山本祐大ロス」が続いている。松尾が正捕手として一本立ちし、トレードで獲得した尾形、井上が活躍する青写真は実現するか。

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デイリー新潮編集部