広末涼子

写真拡大

活動再開を発表

 4月1日、女優の広末涼子が活動再開を発表した。新東名高速道路で追突事故を起こし、搬送先の病院で看護師にけがを負わせたとして逮捕され、その後は芸能活動を休止していた彼女が再び動き出そうとしている。【ラリー遠田/お笑い評論家】

 ***

【写真】深夜の西麻布、夜遊びする「20歳のヒロスエ」

 この復帰に関して世間の反応は割れている。彼女のファンからは歓迎する声がある一方で、復帰はまだ早すぎるのではないかという意見もある。というのも、騒動後に彼女が「双極性感情障害および甲状腺機能亢進症」と診断されていたことが判明したからだ。

 病気を公表している以上、まずは静養を優先すべきではないかという心配の声があがっている。また、あれだけ大きな騒動を起こした後で、失われた信頼を取り戻すのは簡単ではないという冷静な見方もある。ただ、この問題を考えるには、単に「復帰しても良いのか、まだ早いのか」と問うだけでは足りない。そもそも広末涼子とはどういう人物なのか、という根本のところに立ち返って考えなければいけない。

広末涼子

 広末涼子がデビューしたときの衝撃は大きかった。ショートカットの清潔感、素朴で飾らないたたずまい、手の届きそうで届かない透明感を備えていた彼女は、単なる人気アイドルや若手女優ではなく、1つの時代の空気を象徴する存在だった。

 ただ、彼女は最初からそつのない優等生タイプではなかった。明るく親しみやすい一方で、どこか落ち着かず、危うさを感じさせるところもあった。そして、その不安定さこそが彼女の魅力の一部になっていた。広末は完全無欠のスターというよりも、揺らぎを抱えたまま人を惹きつけるスターだったのである。

 彼女は仕事で着実に実績を重ねながらも、私生活ではたびたび熱愛や奇行が報じられ、世間を騒がせてきた。並みのタレントなら激しくバッシングされるようなトラブルを起こしても、彼女の場合は「広末らしさ」としてややポジティブに受け止められてきた面がある。危なっかしいからこそ目が離せない。若い頃はその危うさが、儚さや奔放さとして魅力的に感じられていた。

無理のないペースで仕事を

 しかし、そのような世間の受け止め方にも限界があった。年齢を重ねて、大人としての責任や落ち着きが求められる立場になったことで、かつては魅力に見えていた不安定さが、次第に本物のリスクとして顕在化してくるようになった。直近のトラブルは、まさにそれが現実の形を取ってしまった出来事だった。

 しかも、今回は単に本人が責められるだけのスキャンダルではなかった。大きな交通事故を起こしていて、一歩間違えればさらに重大な被害が出ていたかもしれない案件である。加えて、逮捕という重い事実があり、さらに本人が病気を抱えていたことまで明かされた。ここへ来てようやく、多くの人が「広末らしさ」として受け止めていた危うさが、現実の社会的な問題として具現化してしまった。これまでの騒動とは重みが違っていた。

 難しいのは、これから広末涼子というタレントの本質をどう捉えるかだ。今回の騒動を経た後では、単に「危なっかしさも含めて魅力的だった」という無邪気な見方をすることはできない。ただ、その要素を完全に切り離してしまえば、広末という人物の実像も見失われることになる。

 今後の広末にとって重要なのは、今回の件をなかったことにして元の場所へ戻ろうとしないことだろう。もちろん、俳優として復帰するのが最も自然な形ではあるのだが、それを急ぐべきではない。必要なのは華々しい復活劇ではなく、地味で慎重な再始動のプロセスである。自分の特性を理解し、それを周囲も共有し、無理のないペースで仕事をしていくのが最善策なのではないか。

 彼女の女優としての将来は、必ずしも悲観一色ではない。彼女が抱えてきた危うさは、今後の仕事で生かされる可能性はある。特にトラブルもなく平穏に生きてきたタイプの人には出せない陰の部分が彼女にはある。壊れやすさを抱えたまま生きてきた人間の複雑さを引き受けた上で、それを表現に変えていけるなら、広末にしか出せないものはまだ残っているはずだ。今後の彼女に問われているのは、彼女自身がこれまでの自分をどう引き受けて、どう変わっていけるかということなのだ。

ラリー遠田(らりー・とおだ)
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『松本人志とお笑いとテレビ』(中公新書ラクレ)など著書多数。

デイリー新潮編集部