誰もが魅せられ、誰もが試される。オーガスタの魅力は語り尽くせない(撮影:ALBA)

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これまでテレビ越しに見てきた憧れの舞台に、人生で初めて足を踏み入れた。実際に目の前に広がっていたのは、言葉では言い尽くせないほど美しい景色と、まるで別世界に迷い込んだかのような特別な空気。オーガスタ・ナショナルGCを初取材した記者が、その魅力をお届けする。

【写真】マスターズオリジナルのコースメモ

◇人生初のオーガスタ取材。恥ずかしながら、想像をはるかに超えるアップダウンと硬い地面の影響で、両足の裏に大きな水ぶくれができた。歩き終えた後には、足の裏が少し強くなったようにさえ感じたほどだ(笑)。筆者は、ジュニア時代にはプロを目指して競技に打ち込み、その後もゴルフ関係の仕事に携わっていたこともあり、マスターズの中継だけは見続けてきた。中継や写真で見てきたオーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブは、どこかフラットな印象があり、最終18番の打ち上げ以外に大きな高低差はないものだと思い込んでいた。しかし実際はまったく違った。2日目に難易度1位、3日目に2位タイとなった1番パー4は、ティショット地点から一度下り、そこから上って元の高さに戻るレイアウト。3番はグリーンへ緩やかな下り、4番は大きな打ち下ろし、5番、6番も同様に高低差が続く。9番はセカンドから打ち上げ、さらにバックナインもフラットなホールは少なく、特に上がり2ホールは上りとなる。
グリーンはヨコに長い形状が多く、遠近感がにぶるようにも見えた。手前に構えるバンカーや、グリーン上の強いアンジュレーションも相まって、距離感をつかむのは容易ではない。さらに森林に囲まれたコース特有の風向きの変化も加わり、タテ距離の精度とクラブ選択の重要性を強く感じた。
他に印象的だったのは地面の硬さだ。ラフは短く、ほとんど存在しないに等しい。ロープ外でさえも地面は硬く、日本のコースとの違いを痛感した。フェアウェイには傾斜が多く、洋芝特有の“ターフが取れやすい”イメージとは裏腹に、弾かれるような感覚すらある。ショットの入れ方も、このコース仕様に順応する必要があると感じた。
また、見る方向によって芝の色が大きく変わるのも特徴的だ。1番ティから見ると、1番ホールは濃い緑、左隣の9番は淡い緑に映る。基本的にグリーンからティへ向かって刈り込まれており、グリーンに向けて逆目の芝が続く。さらにグリーン手前10〜15ヤードでは別方向に刈られている箇所もある。左右で色が異なるホールもあり、グリーンを外した後の芝目の影響も無視できない印象を受けた。グリーンは初日こそ硬く速かったが、好天が続いたことで徐々に焼け、色も淡く変化。ラインも“切れそうで切れない”状態となり、2日目以降は、多くの選手がカップの横をすり抜けるシーンが目立った。
レイアウト面では、フェアウェイは全体的に狭く感じられた。特に1番、2番、5番、8番、18番ではキャリー300ヤード付近にバンカーが配置されており、ただでさえ狭いランディングエリアがさらに絞られる。そのバンカーはフチにラフがなく、切れ味の鋭い形状。入ると、選手の首や胸の位置ほどのアゴの高さとなり、グリーンを狙うのは容易ではない。それでも正確にグリーンを捉える選手たちのプレーに、改めてPGAツアーのレベルの高さを実感した。
ドッグレッグは左に曲がるホール(2番、5番、9番、10番、13番、14番)が多く、右は18番のみ。全体的にドローヒッターが攻めやすい設計だ。一方で、傾斜のあるフェアウェイは落としどころ次第で林へと転がり込む場面も見られ、さらに林に囲まれた地形特有の風向きの変化もあって、イメージ通りのショットを打つ難しさがあるように映った。ひとたび林に入ると、地面には枯れた松葉が大量に積もり、足場は滑りやすい。その不安定な状況のなかで、正確なショットを放つ選手たちの技術には圧倒される。実際に、松山英樹は9番パー4で左の林から木の間を通し、バンカーを越えてピン上約6メートルにつけた。さらに3日目には同ホールで右の林へ。アドレスした体の左側に木が立ち、スイングも制限される難しい状況だったが、わずかにキャリーが足りず手前のバンカーに入れたものの、内容の濃い一打を放っていた。そのプレーからは、世界トップレベルの技術の高さが強く伝わってきた。
ちなみに、各ホールに設けられている「CROSS WAY」と呼ばれるパトロンの通行エリアにボールが入ると、待機している競技員が対応し、無罰での救済を受けることができる。多くのパトロンが行き来することで芝生が傷みやすいエリアでもあり、そうした配慮がなされている点も印象的だった。選手が最高の舞台でプレーできるよう、細部にまで行き届いた環境づくりがなされているように感じられた。
グリーン上には複雑な傾斜や段、マウンドが点在し、ひとつのグリーンの中に複数の“面”が存在する。その一つひとつの面は狭く、わずかなズレが大きなミスにつながる。松山が手応えのあるショットを放っても、着弾点が少しずれればボールは厄介な位置へと転がっていく。それでも狙い通りに落とせばピンに絡み、アプローチでも傾斜を巧みに使って寄せる。そんな世界最高峰の技術を間近で実感した。そのなかで松山のアプローチを見ていると、普段の中継で目にするような強いスピンは、あまりかかっていないように感じた。基本は転がしが多く、グリーン手前の傾斜にワンバウンドさせて寄せる場面が目立つ。好天が続いた影響か、芝はやや長く、ボールもわずかに浮いているように見えた。そのためフェースの上部に当たりやすく、スピンが入りにくくなっていたのかもしれない。あるいは、グリーンの硬さがスピン量を抑えていた可能性もある。
どれも筆者の見解だ。明確な答えは分からない。それでも、見た目だけでは測れない難しさが、このコースには確かに存在する。だからこそ、ひとつひとつのプレーに想像が膨らみ、見ていて飽きることがない。そんな奥深さを感じさせる舞台だった。(文・高木彩音)
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