公園で遊ぶ園児らに声をかける作業療法士の奥秋さん(3月、東京都荒川区で)=松本拓也撮影

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 保育所などで障害や発達上の課題を持つ子どもの受け入れが進んでいることから、こども家庭庁は4月から、作業療法士や言語聴覚士ら専門性の高い職種を「みなし保育士」として保育所などに配置可能にする取り組みを始めた。

 個人の特性に合った細やかな対応をできることが期待されるが、子どもと接する経験が浅い専門職もいるため、一般の保育士などとの連携が重要になりそうだ。(増田知基)

運動機能発達

 「足元に気をつけてね」「体力がついてきたね」

 3月上旬の朝。東京都内の公園で走ったり遊んだりする園児たちに目配りしながら、作業療法士の奥秋優太さん(36)が声をかけていた。

 作業療法士は日常動作や姿勢の改善などを図る国家資格の専門職。奥秋さんは「北千住どろんこ保育園」(足立区)に併設する児童発達支援事業所の施設長で、日頃から園児と接している。この日は4、5歳児計32人を連れ、保育士とともに園と公園を結ぶ約5キロを徒歩で往復。障害を持つ子も含め、みな疲れた顔も見せずに昼食へ向かった。

 障害がなくても、体幹の支えが弱く、背筋を伸ばすのが難しい子も多い。園では上履きも靴下もはかない「はだし保育」を実践しており、奥秋さんは園児たちに足指で地面をつかんで歩かせることで、土踏まずの形成や運動機能の発達を促している。「土手などの上り下りにもコツがある。重心のかけ方を伝えると多くの子ができるようになり、成功体験を積み上げられる」と奥秋さんは強調する。

負担減

 保育現場で障害のある子どもらの受け入れが進んでいることを受け、政府は2023年度、保育所に併設された児童発達支援事業所について、職員の交流や部屋の共有を認める制度を導入した。奥秋さんもこの制度を活用して園児らを支援してきた。

 さらに、こども家庭庁は保育所の配置基準を改正し、作業療法士や、けがなどのリハビリを支援する理学療法士、発語の遅れなどを訓練する言語聴覚士などの専門職を、保育士の資格がなくても「みなし保育士」として4月から配置できるようにした。運動や認知に課題のある子らに専門職が対応することで、より充実した保育サービスの提供や保育士の負担軽減などにつなげるのが狙いだ。

 北千住どろんこ保育園の運営法人の担当者も「発達障害のある子への接し方に悩む保育士は多い。保育士にとっても、発達上の課題などについて専門職とともに考えられるメリットは大きい」と話す。

職種間の連携カギ

 こうした専門職は必ずしも保育経験があるわけではなく、配置を進めた場合、限られた人員で保育をどう分担するかが課題となる。

 同庁によると、すでにみなし保育士として配置が進んだ看護師や保健師は、園児の健康管理や医療的ケア児の対応などが主で、担任に就くことは想定されていない。新たに加わった専門職も同様で、保育士を補助しながら特性のある子どもらと向き合うことが期待されている。

 保育園長を務めた経験もある日本言語聴覚士協会の赤壁省吾理事は、専門職は支援対象者と1対1で接することが多く、最初からクラス全体を見渡す力を備えているわけではないと指摘。「円滑な園の運営のためには、保育士らと指導計画を共有するなどの協力が欠かせない」と語る。

 同庁は経験豊富な保育士が新たな専門職をサポートするよう全国の自治体に通知しており、担当者は「課題をクリアしながら各保育現場に広げていきたい」と話している。

「包括的保育」推進で受け入れ急増

 共働き世帯の増加や、障害の有無で区別しない「インクルーシブ(包括的)保育」の推進などに伴い、保育現場で障害などを抱える子どもたちの受け入れが広がっている。

 こども家庭庁によると、保育所や認定こども園などに通う身体・知的障害児や発達障害児は2014年度に5万6096人だったのが、24年度に11万2040人に倍増。また、日常的な医療行為が必要な「医療的ケア児」も16年度の323人から、24年度には1535人と5倍近くに増えた。

 同庁は「支援が必要な子も同じ場で過ごすことで、互いの違いを認め合う心を幼少期から育める」としており、引き続きインクルーシブ保育を進める方針だ。