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エンジンなしの状態で買手は見つからず

ギルバーン・シボレーGTは、1966年には現役を退く流れにあった。オーナーのケン・ウィルソン氏はV8エンジンを降ろし、自身のパワーボートへ換装してしまう。2年後に売りに出されるが、エンジンなしの状態では買手が見つからなかった。

【画像】小さなボディが包んだV8エンジン ギルバーン・シボレーGT 往年のキットカーたち 全141枚

ウィルソンは1974年に心臓発作でこの世を去り、ギルバーンのディーラーだったエース・モーターズ社が10年以上も車両を保管。処理に悩んだ代表は、この存在を伝えるべく、ギルバーン・オーナーズクラブへ1982年に手紙を送る。


ギルバーン・シボレーGT(1965年/ワンオフモデル)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

救世主になったのは、デビッド・エリソン氏。その時点での走行距離は、1425kmほどだったという。

彼はロータスの1.6Lツインカムエンジンを手配し、1990年からクラシックカー・ラリーなどへ参戦。しかし1993年以降、レースへ出ることはなかった。2011年にV8エンジン化を計画するものの、それも実現しなかった。

フェンダーからチラ見えするレーシングタイヤ

5年後に売りに出され、1人のオーナーを挟み、現オーナーのマイク・ランプロー氏が購入したのは2023年。ヒストリックカー・レースへ参戦できるよう、彼はすぐにレストアを始め、1965年にウィルソンが走らせたのと近いスペックで仕上げられた。

ボディは前後が切り立ち、ホイールベースは短い。ダンロップのレーシングタイヤが、フェンダーからチラ見えする。ボンネットにはエアインテークが開き、テールフィンは控えめ。スタイリッシュとは呼べなくても、好戦的な出で立ちだ。


ギルバーン・シボレーGT(1965年/ワンオフモデル)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

現代の参戦規制に合わせて、完全に当時へ忠実というわけではない。シートは、ティレット社製の深いバケット。センターコンソールには、現代的なスイッチ類が並ぶ。ドアの内張りや助手席側のシートは、オリジナルのままだという。

ホイールは、BRMのスチールを再現。配線関係はすべて引き直され、燃料タンクは現代的なレース用が載る。

エンジンは5.7Lへ 車内へ充満する轟音と熱気

ヘッドがアルミ製のV8エンジンは、60年前の4.6Lではなく、更に大きい5.7Lのスモールブロック。計測では、リアタイヤへ約350psの最高出力が届けられているらしい。トランスミッションはジャガー由来の4速MTで、クラッチも強化品が組まれている。

ランプローは、まだセッティングは完璧ではないと話すが、コースインできる状態にはある。ギルバーンの創業者、ジャイルズ・スミス氏とバーナード・フリーゼ氏の2人が、テスト走行していたであろう、カッスルクーム・サーキットでの試乗へ胸が踊る。


ギルバーン・シボレーGT(1965年/ワンオフモデル)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

ロールケージをくぐり、パッドの薄いカーボンシェル・バケットシートへ身体をはめる。ペダルは右側へオフセットし、左足はV8エンジンと4速MTを覆う、巨大なトンネルに当たる。短いシフトレバーは、ストロークが長い。

ステアリングコラムは延長されているものの、腕はまっすぐ伸ばすスタイル。リンクが渋く、変速はしにくいが、太いトルクで3速と4速があれば不満なし。発進直後から、轟音が車内へ充満する。V8エンジンが放つ熱も。

サウンドは骨太 今でもパワフルでスリリング

シボレーのV8スモールブロックらしく。サウンドは骨太。騒音規制をできるだけ遵守するべく、タコメーターの針が4000rpmを越えないよう、気を使う。それでもボリュームは、数周すれば耳が痛くなるほど。耳栓をするべきだった。

エンジンルームとの境界は薄い鉄板だけだから、コクピットは真冬でも熱帯並みの暑さ。中域までしか使わずとも、圧倒的な速さに言葉を失う。広いサーキットを使い切れるほど、今でもパワフルでスリリングなマシンにある。


ギルバーン・シボレーGT(1965年/ワンオフモデル)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

アンダーステアは殆どなし。重いエンジンが後方寄りに載り、路面が乾いている限り、シャシーバランスは優れる。高速コーナーでは大きめのボディロールを伴うが、安定感は想像以上。低速コーナーでは、テールを軽く流しながら旋回していける。

このワンオフ・レーシングカーが、60年前に充分な進化を遂げられなかったことは悔やまれる。だが新たなオーナーの元で、再び表彰台を奪える機会は巡って来たようだ。

協力:マイク・ランプロー氏、カッスルクーム・サーキット

ギルバーン・シボレーGT(1965年/ワンオフモデル)のスペック

英国価格:995ポンド(新車時/GT 1800)/7万ポンド(約1470万円)以下(現在)
生産数:1台
全長:3900mm
全幅:1500mm
全高:1300mm
最高速度:241km/h(予想)
0-97km/h加速:6.5秒(予想)
燃費:−km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1100kg
パワートレイン:V型8気筒4638cc 自然吸気 OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:305ps(予想)
最大トルク:−kg-m
ギアボックス:4速マニュアル/後輪駆動


ギルバーン・シボレーGT(1965年/ワンオフモデル)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)