Amazon で売っていない商品も検索対象に。AI時代の「最強アシスタント」への挑戦

記事のポイント
AmazonがShop Directを拡大し、40万超の販売業者と1億点超の商品を網羅している。
フィードプロバイダー連携で販売業者の参加障壁を大幅に低減した。
一方、販売業者への実質的メリットは不明確で、アナリストから疑問の声も上がっている。
Amazonは、AIを活用したプログラム「Shop Direct」を拡大している。このプログラムは、Amazon.comで販売されていない商品であっても、買い物客がほかの小売業者から見つけて購入できるようにするものである。
同社は3月11日、サードパーティのフィードプロバイダーを通じて、販売業者がカタログ、価格、在庫を自動的に同期できるようにすることで、Shop Directへのアクセスを拡大すると発表した。
狙いは、ブランドがAmazonの検索結果やAIショッピングアシスタントのルーファス(Rufus)に自社製品を表示しやすくすることである。
この動きは、自社マーケットプレイス以外で最終的に行われる購入も含め、AmazonのWebサイトをすべてのオンライン購入の出発点にしようとする、広範な取り組みの一環である。
Shop Directでは、顧客がブランドのWebサイトにアクセスして購入を完了できる。Amazonが2025年2月に導入したこのプログラムには、同社によると現在40万以上の販売業者と1億点以上の商品が含まれている。
Shop Directのリスティングは、Amazonの標準的な商品検索結果や、ルーファスからのレコメンデーションと並んで表示され、ブランドのWebサイトにリンクする前に明確にラベル表示される。
Amazonによると、ブランドからの関心の高まりを受けてプログラムを拡大したという。販売業者と顧客の双方から好意的なフィードバックを受けており、あらゆる規模の企業からShop Directへの参加を求めるリクエストが寄せられていると同社は述べている。
Amazonのコアショッピング担当バイスプレジデントであるアマンダ・ドーア氏は、同社がShop Directを、顧客体験を向上させながら品ぞろえを拡大する方法と捉えていると語った。
「お客様に提供できる商品ラインアップが拡大したことに、とてもワクワクしている。Amazonはお客様が安心してショッピングをはじめる場所となり、ルーファスが存在するすべての在庫を把握することで、本当の意味で世界最高のショッピングアシスタントになれるのだ」と同氏は述べた。
検索エンジンに近づくAmazonの狙い
Shop Directは、Amazonをより検索エンジンに近い存在に位置づけるものである。
Googleは小売のWebサイトをインデックスし、Web全体の販売業者に買い物客を誘導している。プログラムのフィード形式はGoogleショッピングに似ており、販売業者ができるかぎり簡単に参加できるよう設計されている。
「既存のフィードを使って、Amazon向けに有効化するだけで済むように、できるかぎり簡単で手間のかからないものにしたかった」とドーア氏は述べた。
Amazonによると、本プログラムは販売業者に対して無料で提供される。ドーア氏は、将来的な収益化計画の詳細については言及を避けた。現在のところ、同社はプログラムの収益化よりも商品の品ぞろえ拡大に注力している。
また同社は、フィードが顧客に表示される商品データの品質向上にも役立つと述べている。とりわけ、AmazonがAIを活用したショッピングツールを構築しているなかで、これは重要である。
より質の高いデータは、AmazonがルーファスのようなAIを活用した発見ツールに投資するうえで特に重要だ。
ルーファスは商品情報に基づいてオススメ商品を生成しており、Amazonで販売されていない商品も含めてより多くの商品からデータを取得できるほど、オススメ商品の関連性が高まる可能性がある。
これにより、たとえ顧客が最終的にほかの場所で購入するとしても、Amazonは買い物客のエンゲージメントを維持するのに役立つだろう。
「これにより、インターネット上の公開データから私たちが情報を収集するのではなく、販売業者から直接、完全なデータを簡単に取得できるようになる」とドーア氏は述べた。
「ルーファスがそうした高品質なデータをすべて活用して推論し、優れた商品レコメンデーションを提供し、eコマースの世界で何が手に入るのかを把握できるようにしたいのだ」。
販売業者への価値に残る疑問
とはいえ、Shop Directが、とりわけ現在Amazonで販売していない販売業者にどれだけの価値をもたらすかについては、疑問が残る。
独立系eコマースアナリストのユオザス・カジウケナス氏は、プログラムは主にAmazon自身の商品データを改善するために設計されたものであり、同社がWeb全体から情報を集約しやすくするためのものであるとの見方を示した。
「販売業者にとってのメリットは明確ではない」とカジウケナス氏は指摘する。
「拡大されたShop Directプログラムは、Amazon側のデータ品質を向上させるが、Shop Direct機能が販売業者のWebサイトへのクリック誘導にどれほどの影響を与えているかは明確ではない」とカジウケナス氏は述べた。
Amazonによると、プログラムを通じて販売業者のサイトに顧客を数百万回誘導したという。ただし、取引は販売業者自身のWebサイトで行われるため、Shop Directの紹介が購入完了につながったかどうかを同社が追跡することはできないとしている。
ブランドにとって、Shop Directは「顧客の前でより多くの発見と可視性を得る」ための手助けとなるとドーア氏は述べた。
「Buy for Me」への反発を受けた対応
Shop Directの拡大は、同プログラムおよび関連機能「Buy for Me」に対する一部販売業者からの反発を受けて実施された。
「Buy for Me」は、AIを使って買い物客に代わり、Amazonのアプリを離れることなく購入を完了する機能だ。多くのブランドが、同意なしにこれらの機能を通じて自社製品がAmazon.comに掲載されたと訴えた。
出品者はオプトアウトを申請できるが、販売業者らはModern Retailに対し、Amazonが事前に許可を求めなかったと語った。また、一部の販売業者は、誤った商品詳細や古い在庫情報など、不正確な内容がこれらのプログラムによって表示されたと述べている。
販売業者が自社の商品データを直接提供できるようにすることで、同社はブランドに対し、価格、在庫状況、商品詳細など、リスティングの表示方法をより細かく管理できるようにしている。
これにより、Amazonは以前一部の販売業者を苛立たせたエラーを回避し、製品の表示方法に不安を抱いていたブランドとの信頼関係を改善できる可能性がある。
AIショッピングエージェント時代への備え
AIショッピングエージェントがどの程度広く普及するかはまだ不明だが、Amazonは将来的にそれらがオンラインショッピングの方法においてより大きな役割を果たし得る事態に備えているようだ。同社はすでに防衛的な措置を講じており、AIショッピングブラウザ「コメット(Comet)」をめぐってパープレキシティ(Perplexity)を提訴している。
ドーア氏は、従来のAmazonのファーストパーティまたはサードパーティのマーケットプレイスでは販売していない商品も含め、全商品カタログを紹介したいと考えるブランドから強い関心が寄せられていると述べた。
また、すでにAmazonで販売している既存の出品者のなかにも、現在マーケットプレイスで取り扱っていない商品をShop Directで紹介しているケースがあると付け加えた。
今後について、Amazonはフィードパートナーの追加とプログラムの拡大を継続する予定だと述べた。
ドーア氏は最後に、「私は自分のショッピングエージェントに、1つの店舗の一部だけでなく、世界中に存在するすべての在庫について知っていてほしいのだ」と語った。
[原文:Marketplace Briefing: Amazon expands AI-powered Shop Direct program that lets customers buy from other retailers' sites]
Allison Smith(翻訳、編集:藏西隆介)
