Apple Creator Studioが神コスパ。機能的には万能じゃないけどね…
Apple(アップル)から新しいクリエイター向けスイート「Creator Studio」(月額1,780円/年間1万7800円)が登場しました。
Adobe Creative Cloud(月額9,080円/年間10万2960円)より圧倒的に安いのは、火を見るより明らかです。画像編集、動画編集、音楽制作といったApple謹製のクリエイティブ系ソフトウェアが1つのパッケージにまとまっていて、さらに従来の定番アプリを「フリーミアム版」として提供。しかも学生なら月額480円、年間4,800円と、とんでもなく割引してくれていて、スタバのコーヒーより安くなっちゃってます。
とりあえず先に、Pixelmator Pro、Final Cut Pro、Logic Proなどの新しいアプリアイコン、とりあえずわかりづらいしダサくね?ということは言っておきたい。特にPixelmator Proのアイコンが謎で、レイヤー構造のあるアプリということを伝えたいのはわかるけど、線と四角を並べただけのデザイン。しかもなぜか赤色で、これがアート制作にも写真編集にも使えるアプリということが全然伝わりません。新しいアイコンシリーズの狙いは「統一感」とAppleは説明していますが、まだなじめません。
早々に愚痴ってしまいましたが、従来のアプリはこれまで通り買い切り型で購入可能なので、既存ユーザーはひとまず大丈夫。Creator Studioで新しくサブスクしたとしても、従来のアイコンは「別アプリ」として引き続き利用できます。
Apple Creator Studio
良いところ
・複数アプリをまとめたサブスクとして、価格がとにかくお得
・Pixelmator Pro がiPadで快適に動作する
・さまざまなクリエイティブ系アプリに手軽にアクセスできる
残念なところ
・一部の既存アプリがフリーミアム化された
・KeynoteのAI機能がイマイチ
・LightroomやInDesignに相当する機能がない
Adobeの完全代替にはならない
まず先に伝えておきたいのは、Creator Studioは、AdobeのCreative Cloudの完全な代替にはならないことです。
印刷物などのデザインを行なえる「InDesign」や、高度な写真編集ができる「Lightroom」や、Adobeの生成AI機能「Adobe Firefly」に代わるような機能がありません。
その一方でCreator Studioは、Adobeのようにサブスクで永遠にお金を支払うことなく、引き続き買い切り型のソフトウェアも存在します。Final Cut Proは5万円、Logic Proは3万円、Pixelmator Proは8,000円で、引き続きApp Storeから購入できます。ただし、これらのアプリを1本だけサブスクするというプランは存在していないので、Creator Studioはサブスクですべてまとめて加入するか、加入しないかの2択です。
Appleは1月28日の正式リリースに先立ち、米GizmodoにCreator Studioスイートへの先行アクセスを提供してくれました。そのおかげで、わたしは写真編集でついにAdobeを卒業することができました。Pages、Numbers、Keynoteに追加された謎のフリーミアム機能は正直要らなかったけど、それでも評価できるポイントがたくさんあります。もしAppleが今後もクリエイティブ系アプリの開発に注力してくれるなら、Photoshopのために年間3〜4万円払い続ける必要がなくなりそうです。
Pixelmator ProはiPadで使うのが良さげ
Image: Raymond Wong - Gizmodo US
Pixelmator Proは、UIが刷新されたかのように見せかけて、中身はあまり変わっていません。Liquid Glass風のデザインですが、実際のアプリ画面は比較的すっきりしています。デフォルトのダークグレーの背景に、ツールバーも以前とほぼ同じレイアウトで可読性も十分。背景色をもっと明るいものに設定変更できますが、あまり明るくしてしまうと、作業内容の見えやすさに影響すると思います。
Appleは今どきの「クリエイター」は何でも作れるマルチタイプになるべきと思っているようで、それは専門性の高い作業もDIY(自分でやる)志向になっているということでもあります。つまり、TikTokの映像クオリティなんか誰も気にしてないってことです。こんなことを嘆いても仕方ないんですけどね。
個人的には、自称アマチュアフォトグラファーなので、最近はRicoh(リコー)GR IIIxというコンパクトカメラにハマっているわけですが、だからこそPixelmator Proの写真補正機能のありがたみを感じています。これまではRAW写真の編集のためにPhotoshopに月20ドル払っていたのですが、乗り換えができそうです。
ただし現状では、数百枚のRAW写真に一括で設定を適用できるLightroomのような機能はありません。でも、将来的にAppleがそういう機能を追加してくる可能性はあるんじゃないでしょうか。そうなったら最高です。
Image: Raymond Wong - Gizmodo US
今回の目玉はiPad版のPixelmator Proの登場です。MacとiPadの両方で、iCloudアカウントを通じてシームレスに連携可能です。iPadで一通り触ってみましたが、ツールバーやレイヤーウィンドウのデフォルト配置に至るまで、Mac版とUIはかなり似ています。
大きな違いは、Apple Pencilで描くことができたり、ステンシルを使ったり、アウトラインを引いたりできる点です。iPad向けのUIでスケールなどは諸々調整されていますが、13インチのiPad Pro(M5)で触ってみた限りは、機能不足はまったく感じませんでした。それでも写真編集に関しては、SDカードリーダーにすぐにアクセスできるMacBook Proで行なう方がまだ便利に感じます。
Pixelmator ProがMacBookでもiPadでもどちらの環境でもいい感じに使えるのは、それもそのはず、PixelmatorはAppleに買収される前からiPad向けアプリとしてすでに存在していましたからね。
さらにポスターや履歴書など、テンプレートもプリセットで追加されました。いくつかは使えそうですが、プロレベルのクリエイターが「これだ!」と思うものは多くなさそうな印象です。
Photoshopにもある変形・ワープツールも追加されました。Tシャツやマグカップのデザインのモックアップを作るときなど、デザインイメージをその物体に合わせて貼り付けられるようになります。
ただし、Pixelmator Proの機能は浅く広くといった感じで、「細部に神が宿る」的な機能はありません。大量の写真をまとめてバッチ処理するといったようなLightroom系の機能がないのが残念です。
Pixelmator Proの機能の豊富さで満足する人もいると思いますが、LightroomやIllustratorにはあった「あの機能がない」と不満に感じる人もいると思います。
それでもAppleによる激安サブスク化は、Adobeにとっては最大の危機かもしれません。少なくとも筆者は、Adobeの高価なエコシステムに留まり続ける必要はなくなりました。旅立ちのときです。
「実写風」の画像が生成できるように
Image: Raymond Wong - Gizmodo US
他のCreator Studioサブスクリプションの目玉は、Keynote、Pages、NumbersといったApple製のドキュメント系アプリを「アップグレード」できるという概念です。これらのアプリは無課金Macユーザーでも引き続き利用できますが、サブスク課金することで、さらに「プレミアム」なAI機能が使えるようになります。
とはいえ、ロイヤリティフリーのグラフィック素材を求めていない限り、無課金だからといって損をする、不便になるというわけではないので、心配はご無用です。
各アプリに、カスタムテーマやテンプレートのライブラリが追加されました。定番のデフォルトのテーマのものよりレベルアップしたスライドを作りたい人には役に立つかもしれません。さらにKeynoteでは、AIを使って文章や画像を生成できるようになりました。AppleはこれらのプロダクトにGoogleのGemini AIモデルを採用する契約を結んでいますが、現時点ではこれらのAI機能はOpenAIのモデルが使われています。
試しに「なぜ飲み水はボトルより缶のほうが優れているか」というスライドを作らせてみました。すると、6枚ほどのスライドが自動生成され、缶の方に感じる鉄っぽい味わいのほうが、再利用可能なウォーターボトルより優れている理由を、あれこれ生成してくれました。さらに「Anonymous(匿名)」なる架空の人物が登場し、「缶で水を飲むことは、水分補給を爽やかな儀式へと変える」と、それらしきセリフまででっち上げてくれました。意味不明ですけど。
やはり完成度としてはイマイチで、AIがそれっぽく作ったスライドは、結局はかなり手直しが必要そうでした。ゼロイチを生成する取っ掛かりとしては役に立つかもしれませんが、このまま誰かに披露するにはかなり躊躇するレベルでした。Microsoft(マイクロソフト)のCopilotでもパワポのスライドを作れますが、同じようなレベルなので、まだまだ進化の余地がある領域なのでしょう。
Image: Raymond Wong - Gizmodo US
これまでのAppleのAIツールで生成する画像は、Image Playgroundオンリーで、プリセットのテーマや自分の写真をベースにした、カートゥーンテイストの画像しか生成できませんでした。
今回はこれといったアピールもないままに、しれっとKeynoteやPagesアプリから実写風の画像が生成できるようになりました。それでもNano Banana ProのようなGoogleの最新画像生成モデルほどではなく、OpenAIのモデルで生成された画像は、指が消えてたりプラスチックっぽい肌感だったり、いかにも「AIで作りました感」が拭えません。
そこで今回新しく追加されたContent Hubが便利かもしれません。ロイヤリティフリーの画像やグラフィック、背景素材がたくさん用意されているので、プレゼンとかには使えそう。とはいえ、仕事柄Getty ImagesやShutterstockから離脱できるほどではありません。画像の種類は豊富ですが、使いたい画像がドンピシャで見つかるほどバリエーションはなく、写真よりもクリップアートのほうが多い印象です。
すべてを使いこなせなくても高コスパ
Image: Raymond Wong - Gizmodo US
Final Cut Proにも、今回のタイミングでいくつか機能が追加されました。中でも注目すべきは、文字起こし検索とビジュアル検索です。端末上で動作するAIが搭載されていて、動画のクリップの中から、特定の映像やセリフを見つけ出してくれ、タイムラインに入れたい部分を特定してくれるので、格段に探しやすくなりました。実際にM5搭載のMacBook Proで試してみたところ、動作は高速で、違和感なくスムーズにつかえました。
文字起こしの精度も、実際に取り込んだ動画を見る限りかなり正確でした。音声の全文文字起こしが出てくる機能さえあれば(今はない)、テックジャーナリストとして記事や動画の作成にかなり便利そう。
Image: Raymond Wong - Gizmodo US
さらに、Final Cut ProとLogic Proの両方に、便利なビート検出機能が新たに追加されました。楽曲の中から、それぞれのビートの位置を解析して、タイムライン上にビートグリッドを生成してくれます。ビートに自動でクリップを合わせられるようになり、細かくクリップを調整しながら編集する必要なく、プロっぽいミュージックビデオを簡単に作れるようになります。
Creator Studioにはたくさんアプリがありますが、2つくらいを日々使うようであれば、Adobeに払う金額よりずっと安上がりです。もちろん無料の他のアプリなどでやりくりする方法もあります。それでもAppleのCreator Studioは、iCloudを通じて複数デバイスでファイルをシームレスに編集したり同期できるのが大きなメリットで、乗り換える理由としては十分です。少なくともAppleの6倍もするAdobeのサブスク専用モデルに戻る気はなくなりました。

