高市は「(予算委員会で)具体的な事例を挙げて聞かれたので、その範囲で私は誠実にお答えをしたつもりだ。ただ、(存立危機事態は)実際に発生した事態の個別具体的な状況に即して政府が全ての状況を総合して判断する」と、従来の政府見解を繰り返した。

 野田は党首討論後、「従来の見解を上書きするような答えだった。事実上の撤回をしたと受け止めた」と語り、追及の矛を収めた。というのも、予算委員会で高市から台湾有事を巡る答弁を引き出したのは立憲民主党議員で、その後、交流サイト(SNS)などでは「誘導質問だった」「しつこい追及だ」という質問議員への非難が渦巻いた。高市の支持層がかみついた格好だったといえる。

 ただ、野田は党首討論で野党にとっての新たな追及材料を引き出していた。野田は与野党が国会提出している企業・団体献金を見直す政治資金規正法改正案に関して「この国会で通したいと思っている。首相の見解をうかがう」と指摘。これに対し高市が「そんなことよりも、ぜひ(国会議員)定数の削減をやりましょうよ」と応じたからだ。

 野党側は、まず公明党代表の斉藤鉄夫が「企業・団体献金の規制は『そんなこと』なのか。そこに政治改革への取り組み姿勢に疑問を感じざるを得ない」とかみついたのをはじめ、「『政治と金』の問題はもう決着がついたと思っているのか」「政治資金問題を軽視した発言だ」などと一斉に反発した。

 さすがに、高市は「内閣総理大臣(与党党首)側からも質問できる委員会なので、申し上げたかった話に転換を図りたかったということで、定数の問題の方が重要かとか、政治資金の問題の方が重要かとかではない」などと釈明。政治資金規正法改正案と自民、日本維新の会両党が提出した衆院議員定数削減法案の対応は国会に委ねることで収束を図った。

 そうした中で、国民民主党幹事長の榛葉賀津也は11月28日の記者会見で、高市の「そんなことよりも」発言を批判する他の野党勢力に対し「揚げ足を取る政治はやるべきではない」と苦言を呈した。

 早くから政党活動にSNSを取り入れ、若者に浸透してきた国民民主党の幹部だけに、「スキャンダル追及」一辺倒で敵失につけ込む政治手法では、若者の共感は得られないと判断したようだ。榛葉は続けて「高市さんはそういう政治家ではない。意図があって言った言葉ではないと思いますから、すべての問題に真摯に取り組むべきだと思います」とも強調した。

 若い世代に推され、高い支持率を維持している高市を野党勢はなかなか突き崩せそうにない。そうした状況から、自民党内には「国会議員の定数削減を掲げ、『国民民主党とも連立を組むから国民の信を問う』といって衆院解散・総選挙に打って出ればいい」と早期解散を望む声も広がりつつある。



政界ジンクスの影

 高市政権に不安材料がないわけではない。

 衆院は11月28日、衆院会派「改革の会」が解散し、所属していた衆院議員の斉木武志、守島正、阿部弘樹の3人が会派「自民党・無所属の会」に入会したと発表した。これで与党は衆院過半数の233議席となり、「少数与党」を脱することになった。

 法案審議などの国会運営で優位に立つことができ、高市に追い風が吹くとみられたが、自民と維新の関係が微妙になった。3人は9月に維新を離脱した議員だったからだ。しかも、3人の与党入りを維新サイドに根回ししていなかったため、自民党に対する不信感が広がった。

 維新代表の吉村洋文(大阪府知事)は12月1日、政府与党連絡会議後、記者団に「鈴木俊一・自民党幹事長からもう少し丁寧に話をすればよかった、という話があった。このことについて、私はそれ以上コメントすることはありません」と淡々と語った。