カナダ・トロントで行列ができる人気ラーメン店 野菜ポタージュのような鶏白湯ラーメンは日本では味わえない美味しさ 「ラー博」伝説(35)
全国のラーメンの名店が出店する「新横浜ラーメン博物館」(ラー博)は、年間80万人以上もの客が訪れる“ラーメンの聖地”です。横浜市の新横浜駅前にオープン後、2024年3月に30年の節目を迎えましたが、これまでに招致したラーメン店は50店以上、延べ入館者数は3000万人を超えます。岩岡洋志館長が、それら名店の「ラーメンと人が織りなす物語」を紡ぎました。それが、新刊『ラー博30年 新横浜ラーメン博物館 あの伝説のラーメン店53』(講談社ビーシー/講談社)です。収録の中から、北米カナダ・トロントで行列を成すラーメン店「RYUS NOODLE BAR(リュウズ ヌードル バー)」を紹介します。
北米カナダの行列店をラー博に逆輸入
私たちがカナダのラーメン調査に行ったのは、2015年でした。バンクーバーとトロントの2都市を訪れましたが、想像以上にラーメン店の数も多く、人気が定着していました。そんななか、私たちの目に留まったのが、トロントの行列店「RYUS NOODLE BAR(リュウズ ヌードル バー)」のラーメンでした。
ラー博では2013年より、「日本にお店がなく」「海外で独自に誕生し」「地元で支持を得ている」ラーメン店を誘致・紹介する“逆輸入ラーメン”の企画をスタートしていました。その間、世界21カ国38都市のラーメンを調査し、第5弾として着目したのが北米のカナダです。
トロントの「RYUS NOODLE BAR」店主の高橋隆一郎さんは、はやりのスタイルに左右されることなく、自分が作りたい味を追求されていました。ジャンルでいうと鶏白湯なのですが、日本の鶏白湯とは違い、クセがなく甘みが前面に出た個性的な味わいでした。海外ということもあり、約2年間の準備期間を経て、2018年10月から、ラー博にご出店いただきました。
【「RYUS NOODLE BAR」過去のラー博出店期間】
・ラー博初出店:2018年10月17日〜2021年6月20日
・「あの銘店をもう一度」出店:2024年2月1日〜2024年3月3日

“逆輸入ラーメン”企画の第5弾としてカナダからラー博に出店したのが「RYUS NOODLE BAR」。和名の屋号は「麺や颯」。2018年から2021年まで出店=2018年
バブル期以降、日本のラーメン店がカナダ進出
カナダにあるラーメン店は日本やアメリカからの進出が多く、バンクーバーやトロントで成功した店が地方都市に進出する傾向があります。また、ラーメン店のスタイルは、ニューヨークやヨーロッパのレストラン形式とは異なり、日本のファストフードに近い形式です。2024年現在、カナダ全土には150店前後のラーメン店があり、最初のラーメン店は1989年に日本からバンクーバーに進出した「えぞ菊」と、いわれています。当時は日本のバブル絶頂期で、日本企業の駐在員や旅行者がお客さまの中心でした。
しかし、カナダのラーメン事情が大きく変わったのが2010年。北海道は旭川発祥の人気ラーメン店「山頭火」が、バンクーバーに進出した頃からです。アメリカではすでに、ニューヨークやロサンゼルスを中心に、本格的なラーメンブームが起こり始めていました。
カナダの経済の中心地トロントという街
カナダの国土はロシアに次いで世界2番目の広さで、その面積は日本の26・4倍に相当します。その中心都市であるトロントは、人口約4010万人のカナダのなかで最も人口が多い都市です(2023年)。周辺を含めた大都市圏の人口では約590万人。カナダ経済の中心であり、観光ではアメリカとの国境に広がるナイアガラの滝が、世界的に有名な観光地として知られています。
トロントとは先住民のヒューロン族の言葉で「出会いの場所」という意味があり、その名のとおり、さまざまな土地からの移住者によって構成され、“人種のモザイク”ともいわれてきました。一方犯罪率は低く、英国経済誌が発表している“世界で最も住みやすい都市ランキング”では、常に上位にランクインしています。

シグニチャーメニュー(看板メニュー)は「RYUS鶏白湯ラーメン」。鶏と野菜を弱火で長時間煮込み、一晩熟成させ、翌日強火で炊き上げて白湯に仕上げる
カナダ人に愛されている味覚の甘みを生かす
「RYUS NOODLE BAR」の店主、高橋隆一郎さんは、日本の飲食店で6年間働いたのち、2009年にカナダ・バンクーバーへ留学。その後、バンクーバーの飲食店で働き、永住権を獲得しました。2013年に独立したのを機にトロントへ移住し、「RYUS NOODLE BAR」を開業しました。和名の屋号は「麺や颯」。目指すラーメンは、「本格的な日本のラーメン」と「カナダ人が好む味覚」の融合。

創業者の郄橋隆一郎さんは2009年にカナダへ留学し、その後は飲食店で働き永住権を得て、2013年に独立開業
“人種のモザイク”であるトロントでは、さまざまな食文化が存在し、味の嗜好性は、北米特有のバーベキューソースなどに代表される、甘みや、辛みなど、味がはっきりしたものが好まれます。
高橋さんによると、「甘みは、とくにカナダ人に愛されている味覚です。しかし単純に砂糖などで甘さを出すのではなく、野菜を中心とした食材が持つ甘みを最大限に生かすのです。カナダ人の味覚になじむように研究を重ね、なおかつ日本人が食べても、おいしいと思える味わいを目指しました」―とのこと。
実際、カナダの料理はやや甘い味付けが多いのが特徴です。カナダの国旗にも描かれているメイプルリーフ(サトウカエデ)。先住民たちがカエデの樹液を、石のように固い「メイプルシュガー」と呼ばれる砂糖の塊にして保存したものです。過酷な冬を生き抜くための貴重なエネルギー源としていました。
鶏+野菜+魚介ダシ=カナディアン鶏白湯
また、トロントはさまざまな信仰や思想、嗜好の人々が住んでいるため、ベジタブルラーメンは必須になります。また、スープに使う動物系素材には豚を使わず、鶏メインで作っています。

調理中の郄橋さん。さまざまな人種、宗教を持つ人が多いため、スープは鶏メインで作る
「RYUS NOODLE BAR」のシグニチャーメニューである「RYUS鶏白湯ラーメン」は、良質な鶏と野菜を長時間弱火で煮込み、一晩熟成。翌日、一気に強火で炊き上げて白湯に仕上げます。

鶏白湯スープは鶏の旨みと野菜ポタージュの甘みに、魚介ダシのコクを融合させたカナディアン鶏白湯
長時間かけて抽出した鶏の旨みと、野菜ポタージュの甘み、そして凝縮した魚介ダシのコクが調和した鶏白湯は、日本では味わえない独自性に富んだ、まさに“カナディアン鶏白湯”です。
麺はスープとのバランスを考え自然な旨み、甘みを出すようミネラル豊富な全粒粉を使用した中細のストレート。チャーシューは、豚バラ、低温調理した鶏の2種類を使用。ほかには、水菜、メンマ、白キクラゲ、ゴマ、レモンゼスト(レモンの皮のすりおろし)という構成です。

麺は全粒粉を配合した中細のストレート麺
コロナ禍の休店を経て、泣く泣くラー博を卒業
「RYUS NOODLE BAR」はコロナ禍のなか、一時休業もとりながら2021年の6月にラー博を卒業しました。店主の高橋さんには、「東京オリンピックの年に日本でラーメンを作りたい」という思いがありましたが、コロナ禍でトロントの本店も大変な状況になり、“泣く泣く卒業”というカタチをとられました。卒業セレモニーも、トロントとオンラインで行いました。
そのような状況もあって、新横浜ラーメン博物館30周年企画「あの銘店をもう一度」では、コロナ禍のうっ憤を晴らすべく、2024年2月1日から約1カ月ご出店いただきました。高橋さんは、現在トロントで別ブランドのラーメン店も展開されており、今後の活躍を楽しみにしております。
※店主・高橋さんの「高」の字は本来はしご高です
■RYUS NOODLE BAR
786 Broadview Ave.Toronto ON M4K 2P7

カナダ・トロントにある「RYUS NOODLE BAR」
『ラー博30年 新横浜ラーメン博物館 あの伝説のラーメン店53』

『ラー博30年 新横浜ラーメン博物館 あの伝説のラーメン店53』
『新横浜ラーメン博物館』の情報
住所:横浜市港北区新横浜2−14−21
交通:JR東海道新幹線・JR横浜線の新横浜駅から徒歩5分、横浜市営地下鉄の新横浜駅8番出口から徒歩1分
営業時間:平日11時〜21時、土日祝10時半〜21時
休館日:年末年始(12月31日、1月1日)
入場料:当日入場券大人450円、小・中・高校生・シニア(65歳以上)100円、小学生未満は無料
※障害者手帳をお持ちの方と、同数の付き添いの方は無料
入場フリーパス「6ヶ月パス」500円、「年間パス」800円
新横浜ラーメン博物館:https://www.raumen.co.jp/
