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トラックもリデュース、リユース、リサイクル

英国のルナズ社が開発中のゴミ収集車は、7年落ちのメルセデス・ベンツをバッテリーEV(BEV)へ変換したもの。そもそも同社は、名だたるクラシックカーを顧客の要望に応じてBEVへコンバージョンすることを得意としてきた。

【画像】ベースはメルセデス ルナズの電動ゴミ収集車 スカニアと出揃う日本メーカーのBEVも 全129枚

サステナビリティに対する取り組みとして、リデュース、リユース、リサイクルという3Rが重要なことは、ご存知の通り。ルナズは、ゴミ収集車にそれを適用させようとしている。


ルナズ・アップサイクルド・エレクトリック・ヴィークル・ゴミ収集車(英国仕様)

英国を走り回っているゴミ収集車の多くは、大きくて重たいディーゼルエンジンで走り、排気ガスを大気中に放出している。騒音も小さくない。大量のゴミを遠くへ運ぶ動力源としては優れているものの、将来的に変革が必要なことは間違いない。

そもそも、ゴミ収集車のような走り方の場合、ディーゼルエンジンはあまり適したユニットとはいえない。低速域が中心で、発進と停止を繰り返し、人間が多く住む地域を巡るためだ。

英国の調査機関の報告によると、一般的なゴミ収集車では、ゴミの回収中にアイドリングしている時間の方が長く、走行時より多くの排出ガスを放出しているという。また、ゴミの入ったバケツを持ち上げるリフトも、ディーゼルエンジンで稼働されている。

英国の地方自治体は、CO2の排出量を削減する動きを加速させている。既に少なくない廃棄物処理業者が、ゼロエミッションのゴミ収集車へ切り替える方針を掲げている。そこには、今回ご紹介するクルマも含まれることになる。

デビッド・ベッカム氏も事業へ投資

欧州の働くトラックとして主力ブランドにあるメルセデス・ベンツは、eエコニックと呼ばれる電動トラックを販売し始めた。ゴミ収集車としても、普及していくだろう。

ただし、新しいトラックを製造する過程で大量のCO2も排出される。トラックの耐用年数は長い。そこでルナズは、既存のゴミ収集車に改良を施し、電動パワートレインへ置換するというアイデアを実行し始めた。


ルナズ・アップサイクルド・エレクトリック・ヴィークル・ゴミ収集車(英国仕様)

「現在のゴミ収集車を新しい電動トラックに置き換えても、他国へ転売され、そこでCO2を排出することになります。それでは、問題が解決するとはいえません」。と説明するのは、同社を創業したデイビッド・ローレンツ氏だ。

「既存の車両をBEVへアップサイクルすることで、これを打開する必要があると考えます」。ルナズは、自社の電動化された車両をアップサイクルド・エレクトリック・ビークル(UEV)と呼んでいる。

単に、電動パワートレインへ置換するだけではない。価値を加えて生まれ変わらせる、アップサイクルという言葉に、彼らのこだわりが込められている。

詳しく確認する前に、まずルナズ社へ触れておこう。同社は起業家のローレンツと、技術者のジョン・ヒルトン氏によって2018年に創業。当初はクラシックカーの電動化、アップサイクルへ取り組んできた。

拠点を置くのは、シルバーストーン・サーキットからほど近いビジネスパーク。クライアントには裕福なクラシックカー・マニアだけでなく、同社に賛同し投資する、元サッカー選手のデビッド・ベッカム氏も含まれるそうだ。

電動パワートレイン一式を自社で開発

ルナズは、駆動用モーターやバッテリーなど、電動パワートレインの一式を自社で開発している。バッテリーパックは、自社工場で製造もしている。クライアントの車両に合わせて、必要なパワートレインを準備できる技術を有している。

同社の特長といえるのが、独自のコンセプトで車体のレストアも手掛けること。単純に古いエンジンやガソリンタンクを降ろし、駆動用モーターとバッテリーへ置き換えるだけではない。


ルナズ社のワークショップの様子

理想とするクラシックカーを頭に思い浮かべるクライアントに対し、担当者は納屋に長期間放置されてきたような傷んだ個体をあえて捜索し、ベースに選んでいるそうだ。貴重な例を、少しでも多く生き残らせるために。

手を加える車両が決まると入念に確認・評価し、問題を解決。ボディシェルまで丁寧に分解され、必要な部分が強化され、電動化を許容する土台が作られる。電動パワートレイン自体も、モデル毎に個別の特性が与えられる。

インテリアは、クライアントと意見を交わしながら担当部門が仕様を調整。オリジナルへ可能な限り忠実でありつつ、持続可能性にも配慮された素材が調達される。タッチモニターや葉巻ケースまで、多様な要望にも応えてくれるそうだ。

ただし、内燃エンジンへ戻すことはできない。特に指示がない限り、古いエンジンやトランスミッションなどは粉砕され、リサイクルへ回される。作業終了までに約2年が必要だというが、美しく仕上げられた、ゼロエミッションのクラシックカーが完成する。

この続きは後編にて。