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エントリーグレードが最も好印象

テスラの中型クロスオーバー、モデルYが欧州市場で価格改定された。それを機に、今回はシングルモーターで後輪駆動となる、RWDのステアリングホイールを握った。

【画像】価格改定で訴求力アップ テスラ・モデルY RWD 競合クラスの電動SUVと比較 全161枚

テスラに限らず、高価格帯にある量産車の場合、エントリーグレードが最も好印象な仕上がりにあることは珍しくない。費用対効果に優れ、訴求力が高いことが多い。特にポルシェのラインナップなどで当てはまるが、このモデルYにもその考えは合致する。


テスラ・モデルY RWD(英国仕様)

よりパワフルでラグジュアリーなことを好む理由は、筆者も理解できる。反面、クルマの本質として備えるべき機能からは、離れてしまう傾向がある。シンプル・イズ・ベストだと思う。

加えてモデルYの場合、四輪駆動のロングレンジやパフォーマンスと、後輪駆動のRWDで価格差も大きい。大幅な値下げにより、モデルY RWDの英国価格は4万4990ポンド(約724万円)からと、競争力を高めてきた。

2022年にモデルY RWDが英国へ上陸した時点での価格は、約5万2000ポンド(約837万円)だった。短期間で、ここまで大きく変更される例は珍しい。ちなみに最近のテスラは、市場によっても価格設定に差がある。

足取りが軽くドライビング体験は好ましい

同社は世界各地に生産拠点を持ち、同じモデルでも搭載する駆動用バッテリーが違う場合がある。市場によってバッテリーEV(BEV)の普及率も異なり、販売を競う相手も異なる。それらを踏まえれば、理解できることではあるだろう。

欧州市場にやってくるモデルYは、中国の上海で生産される。英国には、ボルボC40やBMW iX1、ヒョンデ・アイオニック5、トヨタbZ4X、ジャガーIペイス、アウディQ4 eトロンなど、同クラスの電動クロスオーバーが数多く存在している。


テスラ・モデルY RWD(英国仕様)

特に最大のライバルといえるのは、路上での存在感が強く車内空間にもゆとりがある、ヒョンデ・アイオニック5だ。不思議なことに韓国製のこちらも、4万2665ポンド(約687万円)からのエントリーグレードの方が魅力的だったりする。

モデルY RWDの航続距離は、WLTP値で455km。四輪駆動のロングレンジに約100km及ばないが、現在の水準では短くない。0-100km/h加速も遅れるとはいえ6.6秒で、決して遅いわけではない。

急速充電能力は、RWDで最大170kWまでと充分。上位グレードの場合は、最大250kWに対応する。

実際、モデルY RWDを英国の一般道で走らせてみると、能力が高いことがわかる。足取りが軽く、ドライビング体験は好ましい。テスラは運転のしやすさを特長とするが、車重が増えるロングレンジより、まとまりは僅かに高い。

ライバルに劣らない活発な個性

筆者が特に評価したいのが、アクセルペダルの操作に対する加速の具合。安定性が高くなる四輪駆動ではないため、発進時は駆動用モーターのトルクが抑えられている。最大値の42.7kg-mが発揮されるのは、トラクションが充分と判断された時だけだ。

不自然さを生む制御にも感じられるが、優れた動力性能を巧みに発揮できる、数少ないBEVだといっていい。爽快に走れる。


テスラ・モデルY RWD(英国仕様)

フロントタイヤを駆動するメカニズムが省かれることで、ステアリングフィールも好印象。ステアリングホイールは適度に小さく、操舵感の重み付けは自然。レスポンスは少々クイックすぎるものの、気を使うほどではない。

ロータスのシャシーを流用した、かつてのテスラ・ロードスターのような感触を得ているわけではないが。

車重は1909kgと軽いとはいえず、全高も低くないクロスオーバーではある。だが、先述のライバルと比較して、動的な仕上がりでは勝っている。活発な個性を備えている。

モデルYで気になる点といえるのが、低速域での乗り心地。テスラのモデル全般にいえることだが、少し落ち着きが足りない。

今回の試乗ではツギハギだらけの市街地から高速道路まで、様々な道を運転してみたが、ヒョンデ・アイオニック5のような秀でた快適性に並ぶことはなかった。とはいえ、購入動機を減じさせるほどではないだろう。

価格が見直され訴求力を大幅に上昇

キーカードの仕様に、筆者は馴染めなかった。モデルYのドアをロックする場合、カードをセンターピラー部分に当てる必要がある。しかし、クルマから降りた後のカードの置き場には悩むし、乗る時はつい忘れがちだった。

淡白なインテリアも、好き嫌いが分かれると思う。モダンなハイテク感には溢れているものの、実際に押せるハードスイッチはほぼなく、雰囲気は冷たい。温かみのある居心地の良さとは、方向性が異なる。


テスラ・モデルY RWD(英国仕様)

少なくとも内装の知覚品質は、他のテスラより高いように思う。試乗車にはオプションのブラック・レザーが贅沢に用いられ、通常はホワイトのプラスティック製トリムが与えられる場所には、ウッドパネルがはめられていた。

大幅に価格が見直されたモデルY。ベースグレードのRWDは、確実に訴求力を増したといえるだろう。

テスラ・モデルY RWD(英国仕様)のスペック

英国価格:4万4990ポンド(約724万円)
全長:4750mm
全幅:1920mm
全高:1624mm
最高速度:217km/h
0-100km/h加速:6.6秒
航続距離:455km
電費:6.4km/kWh
CO2排出量:−g/km
車両重量:1909kg
パワートレイン:永久磁石同期モーター
駆動用バッテリー:57.5kWh
最高出力:352ps
最大トルク:42.7kg-m
ギアボックス:シングルスピード