タイヤのサイドが切り裂かれていました

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―[道路交通ジャーナリスト清水草一]―

 先日、カーマニアの友人が運転するクルマに乗っていた時、タイヤが道路端のキャッツアイ(道路鋲)を踏んでしまった。

 踏んだ瞬間、「ガガガッ」というショックがあり、「ひょっとしてタイヤが損傷を受けたかも」と思ったら、間もなくインパネに「タイヤ空気圧警告」が点灯。これはマズイとクルマを道路脇に止めて確認したところ、左前のタイヤのサイドウォールが裂け、完璧にパンクしていた。

 タイヤサイズは、18インチの40扁平。かなり薄いタイヤだったので、キャッツアイとホイールにサイドウォールが挟まれる形になり、何か所か裁断されたようにズタズタの状態だった。

 実は私も、同じ場所でキャッツアイを踏んだことがあり、その時はサイドウォール内部のカーカス(骨組み)が一部切れ、タイヤにコブができてしまった。結局タイヤ交換となったが、ゆっくりなら走ることはできた。

◆キャッツアイを踏んでパンクが増えたのはなぜ?

 しかし今回は、タイヤのサイドが完全に裂けていた。装着タイヤは、パンクしてもある程度の距離を走れるはずのランフラットタイプだったが、パンクの際は剛性のあるサイドウォールで車重を支える構造なので、サイドが裂けてしまってはどうにもならず、救援のローダーを呼ぶしかなかった。

 キャッツアイにもいろいろなタイプがあるが、友人が踏んだのは、日本全国多くのセンターラインなどに埋め込まれている、上から見ると平行四辺形をしたタイプだ。

 調べると、高さはちょうど5cm(土台の厚み6.5mmを含む)という設計である。反射板で道路の境界を示しつつ、これを踏むと衝撃が発生してドライバーに知らせる。同時に、斜めの設置形状によりクルマを車線の内側へ押し戻す力が働き、はみだしを防ぐ効果があるという。

 しかし、キャッツアイを踏んでパンクしたという事例はかなり多く、しかもかなりの勢いで増えているが、背景にはタイヤの低偏平化がある。

 近年、タイヤの低偏平化が進み、一般的なファミリーカーでも、そこそこの偏平タイヤが装着されるようになった。

 たとえば新型カローラを例に取ると、上級グレードには、215/45R17というサイズのタイヤが装着される。これだとサイドウォールの高さは10cmもない。高さ5cmのキャッツアイをそれなりの速度で踏めば、スポーツカーとは程遠いファミリーカーのカローラでも、パンクしてしまう可能性はある。

 もちろん、キャッツアイの存在意義は、「踏まないように誘導すること」にあり、そもそも踏んではいけないものではあるが、それにしても、踏んだらパンクしてしまう物体がそこら中に埋め込まれているというのは、安全上どうなのか? 「パンクすれば速度が落ちるから安全じゃ?」と思うかもしれないが、パンクしてもその場に止まるわけではない。逆にパンクによってコントロールを失う可能性もあるし、故障車を発生させることにもなるから、安全上はどう考えてもマイナスだ。

◆タイヤの低扁平化に対する国土交通省の見解は……

 そのあたりを国土交通省の「道の相談室」に尋ねてみたところ、「キャッツアイは、パンクさせようとして設置されているわけではありません。あくまでも注意喚起とはみだし防止が目的です」との答え。

 では、「近年のタイヤの低偏平化によって、パンクするようになってしまったということですね?」と尋ねると、「そうですね……。そういう面はあるかもしれません」と自信なさげだった。その担当者は、そもそもキャッツアイを踏んでパンクする事例があることを初めて聞いたという雰囲気だった。

 タイヤの低偏平化は自動車メーカーが勝手に進めたことで、国交省はあずかり知らぬだろう。しかし、どんなモノも時代によって変化していく。キャッツアイの形状は、現在のクルマにとって、一種の凶器になっている。

 なにせ全国に設置されているものなので、それを交換するのは大変な作業だし、すぐには到底不可能だろうが、そろそろ規格を変更して、更新するものから順次でいいですから、パンクさせないキャッツアイに取り換えていただけないものでしょうか。安全のために。

取材・文/清水草一

―[道路交通ジャーナリスト清水草一]―

【清水草一】
1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中。清水草一.com