by Marco Verch Professional Photographer and Speaker

アメリカ農務省(USDA)とノースカロライナ州立大学の研究者は2019年8月20日付けで、食べ物の洗浄に関する調査報告を発表しました。その中で、実験から得られたデータを基に「生の鶏肉は調理する前に水で洗ってはいけない」と警鐘を鳴らしています。

(PDFファイル)Food Safety Consumer Research Project:Meal Preparation Experiment Related to Poultry Washing

Experts Are Warning People Not to Wash Their Chicken. Here's Why It's So Dangerous

https://www.sciencealert.com/here-s-why-washing-raw-chicken-is-dangerous

生の鶏肉はカンピロバクター・サルモネラ・ウェルシュ菌といった、食中毒を引き起こす細菌に汚染されている危険があります。厚生労働省の「(PDFファイル)平成30年食中毒発生状況(概要版)及び主な食中毒事案」によると、2018年に発生した食中毒事件1330件のうち、カンピロバクターによる食中毒は全体の24.0%、ウェルシュ菌によるものが2.4%、サルモネラによるものは1.4%だとのこと。特にカンピロバクターの事件発生件数は、アニサキス、ノロウイルスに続いて第3位となっています。

研究チームは300人の被験者を募集し、鶏もも肉とサラダを含む食事をノースカロライナ州立大学の試験用キッチンで調理させました。被験者は2つのグループに分けられ、片方のグループには鶏肉を安全に調理する方法がメールで知らされましたが、もう片方のグループには一切情報を与えなかったとのこと。

すべての被験者は過去に鶏肉を洗ったことがあると認めていて、その理由として「鶏肉は調理前に洗うのが当たり前だから」「鶏肉のぬめりを取るため」「家族がそうしていたから」と述べたそうです。そこで、研究者は実験に使う鶏肉に「無害で追跡可能な大腸菌」を付着させ、その事実を被験者に隠したまま調理させました。

事前に「調理する前に鶏肉を洗ってはいけない」という鶏肉の安全な調理方法をメールで知らされていたグループでは、メンバーの93%が指示通りに鶏肉を洗わず調理しました。しかし、情報を一切与えられなかったグループでは、鶏肉を洗わずに調理したのはわずか39%だったそうです。

以下の画像は、鶏肉を洗った後のシンクの画像。左は通常の光の下で撮影したもので、きれいに掃除されているように見えます。しかし、特殊な光の下で撮影した右の画像を見ると、シンクの周りには、鶏肉を洗い流した水が飛散して大量の汚れが付着しているのがよくわかります。

また、研究チームはできあがったサラダから大腸菌がどれだけ検出されるかを調査。水で洗わなかった鶏肉を使ったサラダの場合は、20%の割合でサラダから大腸菌が検出されたとのこと。そして、水で洗った鶏肉を使ったサラダの場合、26%の割合でサラダから大腸菌が検出されました。つまり、鶏肉を水で洗うことは衛生的に全く効果がないどころか、より悪影響を及ぼす可能性が実験から示唆されたというわけです。

一方で、鶏肉を調理前に洗わなくても20%のサラダから大腸菌が検出されたことについて、研究者は「参加者が手や調理器具を正しく洗浄していないことが原因」と予想。衛生的な調理を行うためには以下の点に注意すべきだとUSDAは主張しています。

・果物や野菜などを取り扱ってから、最後に肉の調理を行うべき。

・生肉専用のまな板を使うべき。

・生肉は洗うべきではない。

・生肉を触った後は、他の食べ物を触る前に少なくとも20秒間は石けんで手を洗うべき。

・食品温度計を使って、食べる前に鶏肉が少なくとも73℃でしっかり加熱されていることを確認するべき。

USDAの食品安全検査サービスの管理者であるカルメン・ロッテンバーグ氏は「生の肉や鶏肉を水で洗ったりすすいだりすると、キッチンの周囲に雑菌が広がってしまうため、食中毒のリスクが高まる可能性があります」と警告。さらに「また、生の食品を素手で扱った直後に20秒間手を洗わないことも同じように食中毒のリスクを高める危険性があります」と警鐘を鳴らしました。

なお、厚生労働省は、カンピロバクターの殺菌には中心部を75℃以上で1分間以上加熱、サルモネラの殺菌には75℃以上で1分間以上加熱が必要と報告しています。また、ウェルシュ菌が増殖しないようにするためには10℃以下か55℃以上での保存が重要ですが、増殖するための芽胞は100℃で1〜6時間の加熱にも耐えることがあるとのことなので、加熱殺菌を過信しないよう注意が必要です。