「TURNフェス5」の夏:福祉、ものづくり、アートとさまざまに体感する

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アートプロジェクト「TURN」によるフェス「TURNフェス5」が8月に東京都美術館で行われた。今年で5回目となるこのイベント、会場では、作品の展示を見るだけではなく、ワークショップやトークイベントなど、アートを体感できる要素があふれていた。

◎TURNとは?
TURNは世代や性別、国、住環境、障害の有無など、さまざまな"違い"が出会うことで起こる相互作用を表現として生み出すことを目的するアートプロジェクトだ。東京2020オリンピック・パラリンピックの文化プログラムを先導する位置づけで2015年に始まり、2017年度からは東京2020公認文化オリンピアードとして実施されている。


TURN [https://turn-project.com/]
https://turn-project.com/timeline/event/5610


アーティストとコミュニティによる出会いと共働活動(「TURN交流プログラム」)、日常的に実践する場「TURN LAND」としての地域での展開、その発信(「TURNミーティング」、「TURNフェス」)という4つのプログラムを循環することで、日常でまだ表面化されていない課題やニーズを訴求し、協働して解決していこうというもの。


TURNの活動イメージ


TURNの活動
TURNフェスはTURNを体感するものとして年1回のペースで開催されている。今年も、そのTURNフェスが東京都美術館で開催された。アートと福祉、アートと社会課題と言うと、ちょっと構えてしまいがちだが、"フェス"というタイトルのとおり、会場は動線もなく、なんとなく緩い雰囲気が漂う空間になっている。


4日目の会場の様子、会期中に行われたワークショップの作品なども展示されている



















4日目の会場の様子、会期中に行われたワークショップの作品なども展示されている




会場の中には、自由にまったり過ごせるスペースも用意されていた。まさにフェス




以降では、TURNフェス5で何が行われていたか、いくつか紹介していこう。


◎未来言語ワークショップ
未来言語ワークショップは「みえない」「きこえない」「しゃべれない」状態でのコミュニケーションを体験するワークショップ。グループになって、それぞれ引いたカードに従い、その状態になってみる。

ある種のロールプレイのようなものだが、「みえない」カードを引いた人はアイマスクを、「きこえない」カードを引いた人はイヤフォン、「しゃべれない」カードを引いた人はマスクをして、自己紹介など、相手に「何かを伝える」ことに挑戦する。

目が見えて、耳も聞こえる、言葉を発することもできる。それがいつもの状態で、そこで当たり前にできることが当たり前にできなくなったとき、「どうしたら伝えられるか」を考え、グループメンバーで補完し合って課題をクリアしていく。

よく「相手の身になって考えよう」というが、なってみないとわからないことは多い。このワークショップ、ルールはシンプルだが"体感できる"ことはすごい。「何がコミュニケーションの壁となっているのか」を考えるキッカケになる。


未来言語ワークショップ






◎La Manoの糸
手仕事で社会とつながりを得ることを実践するクラフト工房「La Mano」の展示では、綿花から種を取り除き、糸にする作業などが体験できた。

綿花の塊を木の器具に通し、回転させることで種と綿を分けていく。種と分けた綿を棒に巻きつけ回転させながら糸によっていく。


綿花から糸にする








大量生産の時代、こうしたプロセスはブラックボックスになって、消費者である私たちにはもうわからなくなっている。綿花からどうやって糸になるのか。本格的な道具ではなく、その仕組みを再現した器具だが、だからこそ体験してみることで、どういうプロセスなのかがわかって非常におもしろい。

◎くしゃくしゃにした紙の上に道を見る
TURN5のテーマは「Pathways 身のゆくみち」、人それぞれに異なる道(行き方/生き方)を、さまざまな表現、体験で発見していこうというものだが、アーティストの岩田とも子さんのワークショップ「意識の散歩」はくしゃくしゃにした紙の折り目に道を辿っていくという参加型の企画。


意識の散歩



参加者が自分だけの道を作って、"散歩"していく


折り目をなぞって、道を描きながら、どんなところを進んでいるのか。知らないところなのか、空想の場所なのか、意識を散歩させていく。

来年のTURNフェスはいよいよ2020年ということで、規模を拡大して行われる予定だ。


執筆 大内孝子