「美人で“適度に働く子”が、男の理想」エリート商社マンの本音に愕然とした女
男女平等社会と言われて久しいこのご時世に、大学時代の最終章ともいえるのは4年時の「就職活動」。
この時の選択は、その後の人生を大きく変えるGATE(入口)だ。
これは、若さと美貌、また裕福な実家というバックグラウンドを兼ね備えた女子大生たちの、22歳(就職内定時)・23歳(社会人1年目)・27歳(社会人5年目)時点の人生を描いたものである。
果たして22歳時の選択は、その後の人生にどう影響をもたらすのだろうかー?
今回は、そんな葵の就職活動後をのぞいてみる。“バリキャリ”を目指して奮闘する葵の社会人1年目とは?

「おい、新入社員の配属見たか?!ミス青学だった由美ちゃん、エネルギー部門だってよ。」
「まじかー、俺タイプだったのに。エネルギー部門の奴ら、羨ましい。ま、でも俺ら金属資源部門には、ミス学習院の千佳ちゃんがくるってさ、万々歳じゃん。」
6月。葵の務める総合商社では、入社時導入研修が終わり、いよいよ新人たちが各部門に配属され、OJTが始まる。
この時期に社内でもっぱら噂になるのが、新人一般職たち(特にミスコン出場履歴やメディア活動経歴があればある子ほど)がどの部門に配属されたかということだ。
巷では、「顔選考」と噂されているほど美人揃いの、葵が勤める総合商社。
公言こそしないものの、そこに勤める誰もが、それを自明のことだと認識している。
そのため、毎年この時期になると、社内は「どの美人一般職が、自分たちの部署に来てくれるのか」の話題で、ひと盛り上がりするのが常である。
一方で葵は、そんな社内の内情をどこ吹く風としながら、配属されたプラント部門にて、これから始まる仕事に燃えていた。
一般職にゃんにゃんOLとはかけ離れた?葵の働き方
プラント部門に配属された葵のOJT担当となったのは、4つ上の先輩である直人であった。
同期の一般職の多くが、契約書の中身のチェックや、請求書の処理といった「総合職」のサポート的な仕事で定時に帰っていく中、葵だけは異なった。
総合職である直人は、自身が担当するほとんどの業務に葵を同行させ、仕事を教えてくれた。葵も、そんな直人に応えようと必死で業務を覚えようと努力するようになっていった。
一般職としての業務はもちろんのこと、総合職として直人がどのような立ち居振る舞いをしているのかを観察した。
また常に自分だったらどうするかを考え、分からないことは自分なりに調べ、会議の内容等を理解しようとした。
優しく頼りになる直人と、素直で一生懸命な葵、部門内で認められるほど2人は良き仕事のパートナーとなった。
ときには、一般職である葵の月間残業時間が、総合職のそれを超えたこともある。
「プラント部門の新人一般職の子、今月の残業時間、俺らより長いらしいぜ?」
「まじかよ。なんで一般職が?」
「なんでも、総合職に職種転換狙っているんだって。成城大出身で就活では狙えなくて、一般職に落ち着いたらしい。」
「すげぇな。うちの一般職なんて、女として強かに生きてくってイメージなのに、わざわざ総合職目指すなんて。」
働き始めたその年の終わり頃には、葵は社内で、ちょっとした有名人になっていた。
「ねぇー葵ってば、社内で有名になってるよ!“総合職より働く一般職”って。今日、私たちお食事会行くんだけど、葵も行かない?たまには息抜きしようよ。」
ちょうど、部内経費処理を終わらせた葵に声を掛けてきたのは、由美と千佳である。

「年明け初のお食事会よ!いきましょうよ。」
―お食事会かぁ。たまには、いいのかも。
そう思った葵は、2人についていくことにした。
金曜日の銀座『THE APOLLO』には、葵たちと似たような男女構成比のテーブルがちらほら見受けられた。
「みんな本当にかわいいねぇ。今日は来てくれてありがとう。」
ミスコン優勝のタイトルを持つ由美と千佳。ミスコンタイトルはないけれど、2人に負けず劣らずの正統派美人の葵。また何より、今の総合商社の「一般職」という肩書は、それ自体が「選ばれた美人」であるという自己紹介と等しい。
3人を前にすると、食事会の相手である男性陣はみな、嬉しそうな笑みを浮かべた。
2人にこっそり尋ねてみると同業他社―つまりお相手は、商社マンであった。
まだまだ古風な男性陣の意見に不満を感じて…?
「由美ちゃんたちみたいに、美人で、でも適度にきちんと働いているっていうのは、男の理想だよねぇ。」
3対3のお食事会で、男性の1人が、葵たちのことを褒める。

―適度に……?
葵は心の中でつぶやく。相手はきっと全面的に、葵たちのことを褒めているのだろう。雰囲気からして悪意は全く感じ取られない。
しかし葵は、その言い回しが気になった。無意識のうちに人が発する言葉には、その人の本音が含まれているものだ。
「皆さんは、将来結婚したら、女性には家庭に入って欲しいですか?」
葵は自然と、そう聞き返していた。
「そうだねぇ。働いていてもいいけれど、駐在とかにはちゃんとついてきてほしいし、子育て中は、仕事を休んで、家事と育児をしてほしいね。そう思っている男子がほとんどじゃないかなぁ。」
「分かる、分かる。あと出来たら男のプライド的に、自分の収入は超えないでほしいよね(笑)。男のプライド的に。」
そんな会話をしている中、葵はふと由美と千佳の方を見てみる。
2人とも、にこにこととびきりの笑顔で、話を聞いており、相槌を打っている。まるで、それが当たり前だと信じて疑わないかのように。
―男のプライド、かぁ…。まるでうちの両親みたい。
葵は、ふと自分の家庭とその環境を振り返った。
秘書として働いていた母。父に見初められて、結婚を機に寿退社した。それは、母なりに幸せであったのかもしれない。それでも、葵の目に映っていた母は、いつも父の顔色を伺いながら生きていた。
時代は変わり、「専業主婦」というものは珍しくなってきたのかもしれない。
しかし、「家事・育児は女性がするもの」「経済的に男性より上位に立たないのが、男女間のルール」といったような意識は、未だ根強い。
そんなルールは、まっぴらごめんだった。
―私は、私の好きなように生きて、それを応援してくれる人がいいし、パートナーにもそうであってほしい。
結局この日のお食事会は、由美と千佳が2次会へと参加し、葵は適当な理由をつけて帰宅したのであった。
尊敬する先輩からの意外な告白とは…?
お食事会の一件以来、葵はより一層仕事に励むようになっていった。出来るだけ早く、総合職への職種転換試験を受けたかったからだ。
「葵ちゃん、今日も頑張っているね。」
終業間近に、そう声を掛けてきたのは、直人である。
「6月の配属以来、10カ月OJTを担当してきたけれど来月からは2年目だね。いよいよ先輩だ。OJT卒業祝いとして、よかったら今度ご飯でもどう?」
直人から、このように誘われるのは、珍しい。葵もお礼がしたいと思い、二つ返事で了承した。

◆
その週末の土曜、2人はマンダリンオリエンタルの『ケシキ』にて卒業ディナーを共にした。
食事も終盤に差し掛かった頃、直人が、窓から見える東京の街並みをもの言いたそうに見つめていることに気づいた。
「先輩、どうかしましたか?」
「おれ、年度が変わる来月からシンガポールに駐在することになった。」
直人は葵にそう告げ、葵は驚きつつもお祝いの言葉を述べた。
「これまでありがとうございました。ぜひ送別会させてくださいね!」
「ありがとう、葵ちゃんもこれからも頑張ってよ。10か月間、葵ちゃんを見てきたけれど、とても優秀だと思うからさ。」
思いがけない直人の言葉に、葵は素直に顔がほころんでしまう。
「葵ちゃんは、将来どうなりたいの?」
そう尋ねてくる直人に、葵はこう言った。
「私は、自分の力で、自立して生きられることが目標です。実は、総合職を狙っていて…。」
葵の答えを予想していたかのような表情をした直人は、優しい笑顔で答える。
「葵ちゃんならきっと大丈夫だよ、お互い目標に向かって頑張ろうね。」
翌月、部内で盛大に送別会が開かれ、直人はシンガポールへと旅立っていった。
一方の葵は、また忙しい日常へと戻っていったのである。
▶Next:8月19日 月曜更新予定
「一般職から総合職へ」自分の目標は自分で掴みとるという葵は、現代的なバリキャリOLとなれるのか?
▶明日8月13日(火)は、人気連載『もう1人の私』
〜自分でも戸惑うような意外な一面を、誰しもが持っている。自分でも気づかない“もう1人の自分”とは…?続きは、明日の連載をお楽しみに!

