ハイスペ婚の履歴書【夫】:上位3%の美女しか愛せない、エリート渉外弁護士の歪んだ愛
好き、じゃなきゃ結婚できない。
でも好き、だけでも結婚できない。
東京で勝ち組でいつづけるには生まれ・学歴・収入・ビジュアルが複雑に絡んでくる。欲望と打算と、認めたくない妥協と。
勝ち組と言われる結婚をした夫婦たちは、どう折り合いをつけハイスぺ婚に至ったのか?
披露宴で聞かされる新郎新婦の馴れ初めなんて、正直もう聞き飽きた。ハイスペ婚の真実、知りたくない?
超絶美女である美香が「結婚してあげた」と思っている夫、剛の本音とは…?

年収1,500万円の渉外弁護士、剛(36歳)の場合
パレスホテルの『グランド キッチン』に現れた剛は、一見弁護士とは思えない、スポーツが好きな少年の様な雰囲気を残したままの男だった。
その雰囲気のせいか、一目で高価だと分かるスーツを着ていても、どこか違和感がある。しかし、そんなことを一瞬で忘れさせる快活な口調で、自身の結婚に至るまでのことを話し始めた。
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遅い時間に、すみませんね。
海外から戻ってきても、パートナーになるまでは働き詰めで。ここはオフィスに近くて、遅くでもしっかりご飯が食べられるから気に入っているんです。
朝は美香が買っておいてくれるソイジョイ、昼は秘書の子に1,000円渡してお弁当を買ってきてもらってるから、夜位は好きな物食べようってね。美香はホテルでしか食事をしたがらないから、外食する時はホテルのレストランを使うようにしてるんです。
あ、もう美香には会ったんでしたっけ?じゃあ、僕が詳しく話すこともないでしょう。僕は美香の美貌に惚れぬいているんです。男ならみんな分かってくれると思うんですが。
僕も実家は千葉で。と言っても、美香とはそこで意気投合したわけじゃなくて、何ていうか目指している方向が一緒だったんですよね。もてるモノを使って東京で一流の生活をするっていう。
親父は普通のサラリーマンで、バブル崩壊後、不景気の煽りをモロに受けて苦労しているのが、子供心にも分かったんです。
僕が高校生の時なんてボーナスがかなりカットされたみたいで、お袋がパートに出だしたんですよ。家の近くだと同じマンションの人達に見られるからって、わざわざチャリで隣の駅まで通って。
…なんかやりきれなかったですね。
そのとき、女に同情されるような男になりたくないって強く思いました。だから僕は、男として一人前になるには国家資格を取ろうと決めたんです。
でもガリ勉だった訳じゃなく、中学の頃から周りにいる可愛い子を片っ端から口説いてました。そうすると中には付き合える子もいて、大学までなんだかんだ可愛い彼女をきらしたことはなかったですね。
リア充の学生生活×国家資格=超絶美女?
ただ司法試験前はさすがに彼女とかに構っている余裕はなくて。今の事務所に入って落ち着くまで3年間位は、彼女を作りませんでした。
大手事務所勤務の渉外弁護士になった途端、お食事会の誘いは増えたんですけど、僕ら、平日は9-27時、土日もオフィスにいるんですよ。ハズレのお食事会は絶対行きたくなくて、ほとんど断ってました。
ちなみに、司法試験予備試験の合格率って何%か知ってます?
…3%台なんですよ。それを突破したんだから、上位3%の美女じゃないと相手にしたくないですよね。
感じ悪いって思うかもしれないですけど、努力してきた結果ですから。みんな口には出さないだけで、同じ様なことは思っているはずです。
で、僕の本音を分かってくれてる修習時代の同期に「すっごい美人が来るから」って言われて行ったお食事会で美香と出会ったんです。
彼女はすっごい美人って言葉に収まらないくらい、とにかく今までに出会った女の子の中でズバ抜けて綺麗で可愛かったんですよね。これからどんどん稼いで東京で一流の生活をするのにハクをつけるには、この女しかいないって思いました。
美人って、男にとって諸刃の剣なんですよね。
隣に居てくれるだけで自尊心を満たしてもくれるし、プライドを打ち砕かれたりもする。
僕は10代の頃に、可愛い子を口説き落としたっていう成功体験をしておいて本当に良かったです。お蔭で美香の圧倒的な美貌の前にも、卑屈にならず全力で口説けましたし。
会社の同期に、ずっとガリ勉で学生時代に彼女なんていなかったっていう奴、結構いるんですけど、可愛い秘書の子がいても、相手にしてもらえないんじゃないか、振られたら格好悪いって委縮してるんです。
そういう奴に限って「女は見た目じゃない」とか言うけど、ただの負け惜しみですよね。

付き合って3か月目の美香の誕生日に初めて泊まりのデートに誘ったら「リッツじゃなきゃ嫌。お誕生日プレゼントはボッテガのバッグが欲しい」って言われて。もちろん美香の高貴な美貌には一流のブランドが相応しいから、喜んで一緒に買いに行きました。
結局『ガストロノミー ジョエル・ロブション』でのディナーも入れて50万円位使いました。美香はロブションの空間にもしっくり馴染んで女優みたいでしたね。
それに初めて触れた美香の躰は柔らかくて滑らかで…とにかく今までの女の子とは全然違いました。ますます美香の虜になって、28歳と早めの結婚にも迷いは全くありませんでした。
美人を口説ける男が真の勝ち組。と信じてきたが…?
8年経った今でも、美香と過ごす夜は飽きないですね。
どんなに疲れて帰っても、美香を見ると何ていうのかな…生命力が漲るんです。ただ綺麗なコってのはいくらでもいるけど、美香の美貌は男の本能に訴えかけるんですよね。
それは、結婚式でも思いました。
うちの事務所の弁護士連中がみんな、美香を見て内心何を思っているか、男同士だから言わなくても分かります。
みんな「こんな女と…」って顔をしてて、僕は弁護士になった時よりも、今の大手事務所に入所した時よりも、勝った!っていう感情に満たされました。
この間まで4年間、社費留学でヨーロッパに行ってたのですが、美香の美しさはグローバルなモノなんだと分かったのも嬉しかったですね。イタリアでもフランスでも、男はみんな美香をねっとりとした眼差しで見るんです。金髪女性を差し置いて。
だから、8年経った今でもこの結婚には満足しています。
相変わらず睡眠時間を削っての激務ですけど、美香も息子も、そのモチベーションになってくれています。美香の欲しい物を全部買ってやれてる訳じゃないけど、少なくともお袋みたいな思いはさせてないですからね。

ただ…一足先に米国留学から帰ってきた同期の西園寺がパートナーになっていて、正直焦ってるんです。同期の中でも、特段優秀だった訳じゃない西園寺がなんでって。
あいつは嫁さんが一部上場企業の創業者一族の娘さんで、やっぱりそのお蔭なのかなあって邪推しちゃうんですよね。
帝国ホテルの盛大な結婚式に呼ばれた時、有名な政治家が乾杯の挨拶をしてたりして圧倒されたけど、ここだけの話、西園寺の嫁さんはお世辞にも美人じゃなくて、勉強して収入も地位も手に入れて、何でこの女なんだろうって思ってたんですが。
それに…まだ美香にも言えてないんだけど、実は取引先の企業への出向を命じられたんです…。パートナーになれないまま今の事務所にも残れないし、先輩達を見てると、出向からの転籍が既定路線みたいで…。
前に、美香にふざけて転籍になったらどうする?って聞いたら、「冗談じゃないっ」って怒っちゃいましてね。どうやって切り出そうか悩んでるんです。
…え?離婚を切り出されたらどうするかって?それはないと思いますよ。
だって、選んだのは僕ですから。
◆
その後、二人はどうなったのだろうか。
剛から出向の話を聞かされた美香は、案の上、激怒したらしい。
今までで一番の喧嘩になり、美香は離婚に向けて弁護士に相談したそうだ。しかし、「夫が浮気した訳でもないので慰謝料はもらえない可能性が高い」と弁護士に冷たく告げられ、美香は怒りのやり場を失う。
仏頂面の美香を「怒っていても可愛い」と満足気に抱きしめる剛。そう言われると条件反射で可愛い笑顔を戸惑いと共に浮かべてしまう美香。
互いの歪みが見事に一致して、きっと歪んでいることに気付かないまま、剛と美香はこれからも結婚生活を続けるのだろう。
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弁護士なのに逆玉?華麗なる一族に婿入りした男。
