健康はお金では買えない!? マッサージ通いは不健康の始まり
マンションより一戸建て。軽自動車よりSUV。洋服を買うならファストファッションよりデパートで……。高年収世帯が冒しがちなムダ遣い、見栄消費を総点検。本当に満足度の高いお金の使い方、教えます。
「健康はお金では買えない」という常識が揺らいでいる。最近は所得と健康の関係について研究が進み、「低所得層の子どもは病気になりやすい」「低所得者の要介護者は高所得者の5倍」などの“健康格差”が世界的に訴えられるようになってきたのだ。
高級ジムで個人トレーナーをつけて体を鍛えるのは富裕層の特権であるし、健康診断を受けるにも保険適用外のため安くない費用がかかる。もはや健康はお金で買う時代になってしまったのだろうか……。健康づくりに詳しい中京大学スポーツ科学部の湯浅景元教授は、その考えを否定する。
「健康を維持するのは、1に運動、2に食事、しっかり禁煙、最後に薬。この中でもっとも大事な運動を正しい方法で行えば、健康につながります。フィットネスクラブでお金をかける運動をしても、家庭でお金をかけない運動をしても本質は同じ。ただし費用対効果の高い後者が、一番いいと言っていいでしょう」
無料で行えて効果のある運動は、いくつもある。筆頭は「歩く」だ。
「歩くとき、人間の体は上下動します。これが1歩ごとに負荷になって、心臓や筋力を自然に鍛えていることになります。毎日1万歩に相当する運動を続けている人とそうでない人では、 年間7万〜8万円の医療費の差が出るという調査報告もありますね。そして意外にも『立つ』のも実は立派な運動。膝を曲げて立てば、脚にかかる重さが体重の2倍3倍になって、それだけで肉体が変わってくる。お金がなくてジムの器具を使えなかったり時間がない人は、地球が与えてくれる重力を最大限に利用すればいいんです」
こうした運動や生活活動による効果を倍増させるには睡眠も大切だ。成長ホルモンが分泌される23時前に寝ると、より運動の効果が得やすいという。
「歩く」「立つ」「寝る」にほとんどコストはかからないが、若干の投資をする余裕がある者に対して、湯浅さんは、今話題の“立って仕事ができる”スタンディングデスクを勧める。
スタンディングデスクは、軽くカーブしてるのが正しい状態である首が、ゆがんだ姿勢によってまっすぐになってしまう現代病の「ストレートネック」を解消。すでに欧米では、座り仕事は体にダメージを与えるとして、立ったまま仕事をするスタイルが広がりだしているという。スタンディングデスクは日本の家具量販店やネットでも扱っており、日曜大工に自信があれば、木材を買って数千円で作ることも可能だ。
「健康に対して過剰にお金をかける必要はありませんが、どれだけのお金をかければいいかは意識してもいい。たとえば将来かかる医療費を3万円と考えれば、歩くために1万円のスニーカーを購入しても元が取れる。そうやって計算して、お金をかけるときはなるべく少なく、という考え方でいいのでは。健康を害して苦痛を感じるということは、お金では解決できない、“大きな出費”ですからね」
今後どんなにデフレになったところで、「健康はお金で買える」時代はしばらくはこないようだ。
■隣の出費診断!
[Aさん]マッサージ vs [Bさん]スポーツジム vs [Cさん]ジョギング
[Aさん]月3回のマッサージ通いは、ゴルフのスコアのため
……41歳/年収900万円/独身
1回1万円のマッサージに月3回通い、足30分+ボディ60分の90分コースで心身ともにリラックスする。贅沢だとも感じるが、すべては、趣味のゴルフにグッドコンディションで臨むため。しかし毎晩のように飲みに出かけ、日付が変わってから帰る生活が当たり前のせいか、体重は学生時代から20kg増。筋肉をほぐしても、コースを回っていると膝や腰がすぐ痛くなる。ゴルフだけで月10万円の出費だが、独身のせいか、散財している意識はなし。ボーナス以外給料は全部使い、通帳もチェックしない。「もちろん将来は結婚したいですよ。でも今はゴルフが恋人かな」。
[Bさん]週3回のスポーツジム通いで、元はしっかり取る!
……夫38歳/妻33歳/長男5歳/長女2歳/年収1500万円
高校生の頃から腕立て伏せを趣味にしていた、筋金入りの筋トレ好き。大学時代はアメフト、社会人になってゴルフもこなしたが、現在は少々のジョギングとジム通いに専念する。家から徒歩圏内の24時間制ジムに週3回通い、月8000円とウエア代に年間で1万円ほど支出。早朝もしくは会社帰りに通うことが多く「土日に時間を使わないので、妻の不満もほとんどありません」。昨年までは有名高級ジムに月9000円を払って利用していたが、マシンがさほど充実していないことに不満を覚えて、今のジムに変更。だんだんお金をかけないで鍛える方向に向かっているような気もする。
[Cさん]ストレスがなくなり、健診の結果も良好に
……夫40歳/妻38歳/長男3歳/年収600万円(妻300万円)
週に数回、近くの川沿いや街なかを走るのが習慣の市民ランナー。年1回のペースでジョギングシューズを予算1万円内で買い替える。その他の出費は長年かぶっていた帽子が汚いと妻に捨てられ、新しいものを2000円で購入したぐらい。エントリー代が1万円弱かかるマラソン大会にも何度か参加したが、あまりに長い距離を走るのは体に悪いと感じ、最近は控えている。外を走るのが気持ちいいため、ジムで走るという発想はなし。自分の好きなときにやれるという理由で始めたジョギングも、コンスタントに走ることでストレスが解消し、健康診断の結果も良好。
■FP山口京子さんの結論●保険料を増やすより、現在の健康に投資を
Aさんのマッサージは、健康維持というよりレジャーに近いような……。心地よさを買っているようなものだから、この人はタクシー代のような隠れ支出も多そう。おそらく仕事、ゴルフ、マッサージが微妙につながっているかと思いますが、心の中で一度“必要経費”の位置づけになった支出は、減らすのが難しいもの。早めに頭を切り替えるべきです。将来結婚する気もあるようなので、「ゴルフ代の年間支出120万円で、子どもが私立の学校に行ける」と考えてみては。
その点、Bさんは朝と夜、生活の中にジムを習慣として取り入れているので、支出としてムダがありません。ジム費もそれほどの値段ではないし、満足度も高いはず。ジョギングも走りながら仕事のアイデアが浮かぶという経営者も多いですし、健康以外に得られることがあるのはコストパフォーマンスが高いといえます。ジムやジョギングでどれだけ病気を予防できるかはわかりませんが、保険料を増やすより、現在の健康に投資する考えは健全です。
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名古屋市生まれ。フリーアナウンサーから上京を機にFPに転身。テレビ、ラジオ、雑誌などで活躍。著書に『5ステップで貯まらん人を脱出 FP山口京子式 家計簿いらずの貯まるお財布メソッド』『「そろそろお金のこと真剣に考えなきゃ」と思ったら読む本』など。
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(鈴木 工=文・構成 向井 渉=撮影)
