「一対一では絶対に会わない」坂上忍が明かす事務所のガチなコンプラ対策「世間の皆さんが僕に持っているイメージとは裏腹」

歯に衣着せぬ発言から“昭和の頑固オヤジ”的なイメージを持たれがちな俳優・坂上忍。しかし実際の彼は、世間の印象を覆すほど徹底した「令和のアップデート」を実践していた。
【映像】激怒され涙する50歳の弟子…スパルタ指導で話題のラーメン屋
ABEMA&テレビ朝日報道局の共同プロジェクトによる新たな報道検証ドキュメンタリー番組『改めて、取材しました。』(6月20日放送回)では、人気ラーメン店「王道家」の清水裕正社長による“スパルタ指導”と令和の人材育成を検証。ナレーションを務める坂上は、自身の若かりし頃の経験を振り返りつつ、個人事務所で実践しているコンプライアンス対策と、現代における独自の「距離感の保ち方」を明かした。
「何をやってもダメ出し」天才・相米慎二監督に身ぐるみ剥がされた映画デビュー作

――坂上さんにとって厳しい指導をしてくれる清水社長のような存在はいましたか?
お亡くなりになりましたが、相米慎二監督です。僕が初めて映画に出演した『ションベン・ライダー』(1983年)の監督です。とにかくOKが出ない人で、それも「〇」か「×」でしか言わない人でした。何をどうやっても「×」しか出なくて、一日潰れるという日もあったくらいです。今ではありえないですが、昔はそれだけお金も時間もあったということ。そういう“無駄だと思える時間”も作ってくれたんです。
――みんなで銭湯に行って裸の付き合いをしたこともあったそうですね。
撮影後にショーパブに連れて行かれて一般のお客さんがいる前で歌わされた事もありました。意味が分からないじゃないですか(笑)。でもね、要するに「いつまでも気取ってカッコつけてんじゃねえぞ」「俳優なんて全部さらけ出してナンボなんだぞ」という事なんですよ。なかなかOKをくれないのも含めて、時間をかけて、遠回りしながらも、僕たちガキにプロの俳優になるために必要な事を教えてくれた人でした。
――相米監督の教えはその後も活きましたか?
人間とは不思議なもので、あの作品の時はある程度は良い仕事が出来たと思います。でも、しばらく時間が経つと…戻りますよね(笑)。だからこそ要所要所でそういう人に出会って身ぐるみ剝がされないと、どうして自力だけでは難しい。身近に本質的な事を見抜いてくれる人がいれば同じ事は繰り返さなくなるので、道を正してくれる存在は必要ですよね。
「大事なことはすべて弁護士へ」世間のイメージを覆す坂上忍の徹底した令和アップデート

――相米監督との思い出は、ザ・80年代的エピソードですが、坂上さんは時代の変化と共にアップデートする事を意識されていますか?
世間の皆さんが僕に持っているイメージとは裏腹に、”そこまで時代に合わせちゃうの?”と思われるくらいきちんとやっています。事務所のスタッフとも一対一では会わない、話さない。大事な事はすべて弁護士にお伺いを立てます。ここまで弁護士と密にコミュニケーションを取る事務所はないのでは?と思うくらい、やっています。もちろん相手がダメな事をした時は、言葉は乱暴かもしれないけれど『舐めてんのか』と叱るのはあります。あと僕は何か困ったら『ウ○コ〜!』と言っちゃう(笑)。それに対してスタッフたちは『ほんとバカ…』と失笑して呆れる。それも一つのやり方なんです。長い付き合いになっていくわけですから、必然的に相手との距離も縮まるわけです。でも、そこでバカみたいに子どもっぽい事を言っていれば、お互いに一定の距離感は保たれると思う。
――清水社長の弟子に対する圧も、師弟関係の距離感を一定に保つ方法なのかもしれませんね。
僕はそう思います。清水さんも計算でやっているような気がします。たとえ付き合いが長くなろうとも、味やお客さん、店を持たせた弟子にはガチンコで向き合っている。なあなあのユルい関係にならないために、引き締めるところは引き締めて、線引きをする。それが伝わらないような相手だったら辞めてもらっても良いと思っているのでしょう。清水さんは「弟子たちの補助輪になりたい」という思いで指導されているそうですが、とても共感できます。人を育てるという意識よりも、正しい道からはみ出しそうになったときにだけ修正する。それが人にものを教える身としての役割だと僕も思うからです。
取材・文:石井隼人
写真:You Ishii
