徳川家広さん

 各界の皆さんにお薦めの本を紹介していただく特集「あなたに贈る本」は今回、徳川記念財団理事長の徳川家広さんに3冊を選んでもらいました。

徳川家広さんからのメッセージ

 2025年は戦後80年。終戦時には、これほど長く平和が続き、日本が再び戦争をしようとは考えなくなることを、予想していなかったのではないでしょうか。80年前と現在をつなぎうる、新旧の良書を選びました。

徳川家広さんお薦めの本ルポ 戦争トラウマ 日本兵たちの心の傷にいま向き合う

後藤遼太/大久保真紀 朝日新書 1045円

 戦争の恐ろしさは、生命財産の破壊もさることながら、暴力のすさまじさが生存者の心に容易に癒やされない傷を残すところにある。平和になった後も、戦時の恐怖がよみがえり、生存者の家族の生活までも破壊していくのだ。

地には平和を

小松左京 角川文庫 748円

 もしも81年前の8月15日に日本が降伏しなかったら、どれほど恐ろしいことになっていたのか? この疑問に答える表題作を読めば、私たちが生きる現実のありがたさが痛感されるだろう。他の収録作も傑作ぞろいである。

新版 おくのほそ道 現代語訳

松尾芭蕉 潁原退蔵/尾形仂訳注 角川ソフィア文庫 1210円

 松尾芭蕉は関ケ原の合戦から80年が経過した頃に、活動を本格化している。平和が完全に定着したことを実感した人たちが俳句という新しい表現形式を生みだした。「奥の細道」は、私たちの現在の詩でもあるのだ。

お話を聞いた人徳川家広(とくがわ・いえひろ)

 1965年、東京生まれ。慶應義塾大経済学部卒。米ミシガン大院(経済学)と米コロンビア大院(政治学)で修士号取得。この間に国連食糧農業機関に勤務。2000年に帰国し、文筆家として活動。21年から現職。徳川宗家第19代当主。

=朝日新聞2026年6月11日掲載

お知らせ

 ◆特集「あなたに贈る本」は、新聞や出版、書店業界の情報紙などを発行している文化通信社(東京都千代田区神田錦町)と協力して作成しています。各界のみなさんが薦める本をまとめた「先輩の本棚」「読書のススメ」、子ども向けの絵本などを紹介した「ボクニキミニ」という同社発行の冊子から選んで、毎月第3木曜日にお届けします。著名人が本への思いなどを語るロングインタビューは随時掲載します。
 本の価格は税込みです。
 文化通信社は、本欄で紹介している著名人が選んだ本や絵本を並べた私設図書室「ほんのもり 駒込本家」を東京都豊島区駒込で運営しています。築65年の古民家を改装し、コーヒーを楽しみながら森の音に包まれて黙読するための空間です(100分間入れ替え制・ウェブ予約が必要)。同社が運営するオンラインコミュニティー「ほんのもり」の会員は無料または割引料金で利用できます。このコミュニティーでは、読書好きが交流するイベントや「駒込本家」で開催される読書会にも参加できます。いずれも詳細はこちらのURLでご確認ください。