仲野太賀(小一郎(豊臣秀長)役)×吉岡里帆(慶役)特別対談!――『NHK大河ドラマ・ガイド 豊臣兄弟! 後編』

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仲野太賀×吉岡里帆 特別座談

喪失の先に見えた、夫婦の光。

小一郎(こいちろう)の誠意に触れ、積年の憎しみを捨て去った慶(ちか)。

心を通わせ、“真の夫婦(めおと) ”になった2人をこれまで何度も共演している仲野太賀さんと吉岡里帆さんが演じています。

夫婦の歩みと今後について、2人の息の合ったトークをお届けします。

『NHK大河ドラマ・ガイド 豊臣兄弟! 後編』より

『NHK大河ドラマ・ガイド 豊臣兄弟! 後編』

小一郎と慶に共通するのは大切な人を失った心の痛み

仲野 慶が羽柴小一郎長秀(豊臣秀長)に嫁ぐ第13回の脚本を初めて読んだとき、「こんなに過酷な夫婦のスタートはなかなかない」と思ったんです。

吉岡 私もそう思いました。慶にとって小一郎は、夫を討ち死にさせた織田軍の武将。羽柴家に嫁ぐ悔しさや無念さ、何より「この人には絶対に弱みを見せない」「指一本だって触れさせない」気持ちで演じました。

仲野 小一郎としても、愛する直(なお)を亡くしたばかり。次など考えられないのに、いつの間にか政略結婚が決まってしまった。心を開かない慶とどう歩み寄るんだろうというスタートでした。

吉岡 でもじつは、最初から小一郎に優しさを感じていました。

仲野 えっ、そうなんですか?

吉岡 はい。慶が嫁いだ日に、秀吉さんと寧々さんが「慶は自分たちを恨んでいる。毒を盛るかもしれない」と小一郎に忠告したとき、小一郎は慶をかばってくれて。しかもそのあと慶からさんざんきついことを言われたのに、慶のことをいっさい否定しませんでした。「この人にほだされるもんか」という芝居をしつつ、心は動いていました。

仲野 そんなふうに思ってくれていたんですね。小一郎は愛する人を失う痛みを知るからこそ、慶が抱える憂いや寂しさをくみ取りたいと思っただろうし、シンパシーのようなものを感じていた気がします。とはいえ物語上では第13回から第19回まで、この夫婦に進展はなく……。

吉岡 そうなんですよね。第19回までは夫婦のシーンもそれほどなくて、慶が一人で悶々とする時期が続きました。

仲野 つらかったよね……。

吉岡 つらかった……。羽柴ファミリーになじめないシーンはとくに。ともさんと口げんかをするシーン(第18回)で、なかさんを見る芝居をするのもアリだったんじゃないかと、撮影後もずっと引っかかっていて。

仲野 着物を選ぶシーン?

吉岡 そうそう。慶が、あなたたちには着物の価値がわからないというようなことを言うシーンで、なかさんにはそんなことを言うんじゃなかったという感情を見せればよかったな、と。太賀君が「撮り終わったあとに後悔することがある」と言っていたでしょう?

仲野 うん。

吉岡 まさに、それ! もっとこんなアプローチもできたかもって。たとえ劇中で描かれていなくても、慶が小一郎や羽柴ファミリーに心を動かされる瞬間はたくさんあったと思うんです。だからこそ、少しずつ慶の心がほぐれていく過程をさらに大切に演じられたのに、と。

仲野 指一本も触れさせないと誓ったときから第19回までに約8年が経っていますからね。

吉岡 そういえば、心を閉ざしている慶が、食事をとる小一郎のそばに控えて淡々と給仕するシーン(第19回)のときのこと。太賀君が脚本にない「あ、ホタル!」というセリフを足したとき、「天才!」と思いました。

仲野 あははは!

吉岡 突然「ホタル」と言われたら、ツンとしている慶でも思わず見たくなるよな、と。いくらこの夫婦でも、8年間ずっとギスギスした関係だったわけではないはず。そんな2人のなんともいえない温度感がわかる、おもしろい提案だなぁって。

仲野 あのシーンは脚本に「慶の様子を盗み見る」というニュアンスのト書きがあったので、どう見ようかと考えているうちに、慶の気をそらすことを思いつきました。「あ、鳥!」でもいいけど、ホタルのほうが情緒があるし、つい見たくなっちゃう。慶の反応も気になって。

吉岡 実際にはいないホタルを一瞬探しちゃいました(笑)。

仲野 「慶でもホタルは見たいんだな」と、別の顔をかいま見られた気がしました(笑)。放送されるかわからないけれど(取材時)、提案を吉岡さんも制作陣も受け入れてくれて、ありがたかったです。

夫婦で抱きあった瞬間、欠けていたピースが埋まった

吉岡 結婚から8年を経て、慶は小一郎から直さんという存在がいたことを明かされます。

仲野 一方の小一郎は、慶が愛息の与一郎(よいちろう)をずっと遠くから見守っていたことを知ります。

吉岡 そのとき小一郎がかけてくれたセリフの「一人でよう耐えられた」というひと言を実際に聞いて、あらためて太賀君はすごい俳優さんだと思いました。心からねぎらって痛みを分かちあってくれていると感じられるお芝居だったんです。

仲野 僕も吉岡さんの芝居に助けられました。夫婦が心を通わせるシーンで、慶が小一郎に触れるという、脚本にない動きをしてくれたんです。

この続きは、発売中の『NHK大河ドラマ・ガイド 豊臣兄弟! 後編』でお楽しみいただけます。

本書は「撮り下ろし座談」をはじめ、豪華出演者インタビュー、あらすじ、登場人物関係図、美術・衣裳特集など内容満載。さらに、ゆかりの地特集、マンガで読む秀長の生涯、しつもん箱など分かりやすい歴史解説ページも充実。劇中写真も多数で、家族みんなで読めるドラマガイドです。

取材・文=髙橋和子 撮影=平岩 享
仲野さん:ヘア&メイク=高橋将氣、スタイリング=二村 毅
吉岡さん:ヘア&メイク=林 由香里、スタイリング=黒崎 彩

仲野太賀(なかの・たいが)
1993年生まれ、東京都出身。2006年、俳優デビュー。主な出演作に、ドラマ「コントが始まる」「新宿野戦病院」、映画「ポンチョに夜明けの風はらませて」「母さんがどんなに僕を嫌いでも」「すばらしき世界」「十一人の賊軍」など。26年12月25日、映画「SUKIYAKI上を向いて歩こう」が公開予定。NHKでは、連続テレビ小説「虎に翼」、「拾われた男 LOST MANFOUND」「シミュレーション~昭和16年夏の敗戦~」など。大河ドラマは「風林火山」「江~姫たちの戦国~」「いだてん~東京オリムピック噺~」などに出演。

吉岡里帆(よしおか・りほ)
1993年生まれ、京都府出身。主な出演作に、ドラマ「御上先生」「ガンニバル」、映画「見えない目撃者」「ハケンアニメ!」「正体」「九龍ジェネリックロマンス」「ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。」など。NHKでは、連続テレビ小説「あさが来た」、「しずかちゃんとパパ」「ひらやすみ」など。大河ドラマは初出演。