「トイレで浣腸液を500mlも注入」「乳首や陰部をつまむ修行も…」自称“神とつながる力を持つ”男(65)による被害、2人の女性が告発に踏み切るまで
〈「まず、先生の尿を飲むように」ホテルで始まった異様な“修行”…「子宮のオーラが黒い」と言われた女性(28)を支配した自称霊能者の鬼畜な手口〉から続く
芸能関係の仕事に悩んでいたA子さん(当時28)は、知人女性B子さんの夫を通じて、自称“神とつながる力を持つ”大野勝彦被告(当時65)と出会った。大野被告は「子宮にたまった悪いエネルギーを取り除き、良いエネルギーを注入する」と称し、A子さんに“修行”と呼ばれる行為を繰り返していた。A子さんは当初、それを運気を好転させるための儀式だと信じ、従っていたという。
【画像】「乳首や陰部をつまむ修行も…」芸能関係の女性(28)を支配した自称霊能者の大野勝彦被告
しかし、その関係は長くは続かなかった。ある出来事をきっかけに、A子さんの中で決定的な違和感が生まれていった――。
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大野被告に不信感を抱くようになったきっかけ
それから1カ月後の2023年1月18日に会ったとき、「先生、1年で1000回というのは現実的ではありません。もう少し減らしてもらえませんか?」と頼むと、「じゃあ、100回にしよう」とあっさり撤回してくれた。
同年1月20日、その仕切り直しで大野被告に会ったとき、A子さんに不信感を抱かせる出来事が起こった。A子さんが口腔性交しようとしたとき、陰茎にカピカピの白い液体のカタマリが付着していたのだ。

現場となったホテル (筆者撮影)
「これ、もしかして前の女性の体液ですか?」
「そうかもしれないね。目をつむって舐めなさい」
A子さんはその日も3セットをこなすことになったが、他の女性の体液のカタマリを舐めてしまったことがショックで、それ以来、急激に修行に対する意欲を失った。
次の予定の日も仕事が入ったことを理由に断り、大野被告から誕生日の旅行に誘われたが、それも断った。
大野被告への不信感が募っているとき、仮想通貨の勉強会の仲間でもあった知人女性にそのことを相談したところ、「それは犯罪だよ」と指摘されて目が覚めた。
もしかしてB子さんも同じ目に遭っているのではないかと思い、連絡を取ってみたところ、やはり同じ目に遭っていた。B子さんが法廷で証言したところによると、大野被告から受けた被害は次の通りだ。
子どもが欲しいと相談したら「私とつながりなさい」
「流産を2回したが、子どもが欲しいので相談した。すると『神とつながりのある私とつながりなさい』と言われた。浴室で飲尿し、ベッドで乳首や陰部を強くつねられる修行をした。全身を舐めるように言われ、お尻の穴も舐めた。私が上になり、避妊具を着けずにセックスした。ホテルの部屋はツインベッドだったが、神と近い方が効果的と言われ、添い寝した。翌朝にも修行を1セットした。次の修行の予定日を確認し、『私のことはご主人様と呼びなさい』と言われた」
B子さんはこのときのことを日記につけていて、〈自分に対して頑張ったねと言ってやりたい。まさかの展開だったけど、先生を信じてる〉と書いていた。
それから2カ月後、同じホテルで再び大野被告と会った。
「また飲尿から始まったが、『今日の修行は浣腸です』と言われた。これで子どもが流れなくなると。トイレで浣腸液を500mlも注入され、1時間もトイレにこもることになった。そこからはいつも通りで、乳首や陰部をつまむ修行を終えた後、全身を舐める修行を終え、私が上になってセックスした。先生には『忍耐力のアップにつながる』と言われた」
A子さんから連絡を受け、警視庁に被害届を提出
この日の日記には〈我慢して頑張ったね。今日も感謝の気持ち。修行で強くなったね〉と書いていたが、この日を境に修行に行くのが嫌になってしまい、夫にセックスのことは秘密にして、修行の内容を伝え、大野被告からの誘いを断った。
そこへA子さんから連絡が入り、弁護士などに相談した後、警視庁に被害届を出した。
同年8月8日、警視庁はA子さんに対する準強制性交等の疑いで大野被告を逮捕した。続いて同年8月29日、B子さんに対する同容疑で再逮捕した。大野被告は当初は「強制したわけではない」「女性から頼まれてしたかもしれない」などと供述していたが、再逮捕後は黙秘に転じた。
2025年8月21日、東京地裁で初公判が開かれた。法廷に現れた大野被告は車椅子に乗ったヨレヨレの老人だった。人工透析を受け、両目はほとんど見えないという。
「身体的接触は行っていない」起訴状の内容を否定
裁判長から罪状認否を問われると、「起訴状で言われたことはまったく違います」と述べた。弁護側が補足したところによると、「A子さんやB子さんとの間で身体的接触は行っていない。A子さんやB子さんを抗拒不能の状態に陥れたこともない。A子さんやB子さんと性交、または性的行為も行っておりません」と主張した。つまり、行為そのものが存在せず、A子さんやB子さんは周囲の人たちの話で大野被告に特別な力があると信じたわけで、大野被告がそのような誤解をさせたわけではないと言うのだ。
いったい大野被告とはどういう人物なのか。
「特徴と言われても困るような普通の人」
逮捕時に警視庁が発表した住所は愛知県一宮市になっていた。かつてこの場所で『有限会社大野商会』を経営していたが、2008年11月に代表取締役を辞任している。閉鎖謄本によれば、事業内容は食品販売、化粧品販売、美容機器販売、医療用機器販売などで、産廃の収集運搬業なども手掛けていた。近所の人が言う。
「宅配を利用した通販をやっていたようだ。娘さんが2人いて、1人は九州、もう1人はオーストラリアに嫁いだと聞いた。奥さんとは何年か前に離婚したと聞いた。特徴と言われても困るような普通の人で、町内会の役員をやってもらったこともある。こちらにいたときは神様の神の字も聞いたことがありませんでした」
大野被告の住居の大家も次のように話す。
「事件後に娘さんの1人が来て、荷物を片付けていたようだ。今も賃貸契約は続いていて、家賃が滞ったことはない。こちらで生活しているときも電気がついている日が1カ月に1度あるかないかという生活をしていた」
2026年1月20日と2月5日、大野被告の被告人質問が予定されていたが、いずれも「やめときます」「何も話しません」などと言って、中止された。東京地裁詰め記者が話す。
「A子さんとB子さんの証人尋問が終わってから、大野被告は『被告人質問は拒否します』と表明していたのですが、検察側に懲役10年を求刑されると、『やっぱり話したいことがある』と言い出し、弁護士と打ち合わせして、最終意見陳述をするという話もありました。しかしその後、大野被告の病状が悪化し、保釈されて入院したことから、それも立ち消えになり、判決期日が指定されました」
同年5月28日、東京地裁に出廷した大野被告は最終意見陳述のやり直しを求め、次のように述べた。
「ホテルの部屋に行ったのは『どうしても人には聞かれたくない』『内緒にしてほしい』と言われたから。それで私が持っている力を提供してほしいと言われた。これまでどういうことをしてきたのか聞かれたのは事実だが、『自分にもしてくれ』『自分もそうなりたい』と相手から求めてきた。
私はそんな気はまったくなかった。自分も良くなりたいということだけを主張してきた。言葉だけのアドバイスで済むかと思ったら、望みが大きい。それで求められた。それが現実の話です」
さらに大野被告は被告人質問のやり直しを要求。その理由は「言われていることがあまりにも矛盾していた」「どうせ聞いてもらえないだろうと思い込んでいた」「体調が悪く、声が出なかった」などと述べた。
同地裁の島戸純裁判長は合議した結果、「被告人質問は行わない」と決定した。すでに論告弁論を終え、大野被告の最終意見陳述の内容と大きく異ならないと判断されたからだ。
その上で同裁判長は「被告人は2人の被害者より30歳以上年上であり、自由な意思決定で性交に同意することはおよそあり得ない。神とつながっているという被告人の言動等により、修行の一環であると誤信し、抗拒不能の状態に陥っていたものと認められる。被害者らはおよそ望まない被告人との性交を合理的に説明している。切実な願望、不安につけ込み、繰り返し性行為に及んだことは強い苦痛やトラウマを与え、その犯行手口からも刑事責任は重い」と断罪し、懲役8年を言い渡した。
(諸岡 宏樹)
