小売り現場で続くナフサ供給不安、ばら売りや簡易包装など対策強化…イラン攻撃3か月
米イスラエルのイラン攻撃から28日で3か月となり、国内のスーパーなどで、原油から精製されるナフサ(粗製ガソリン)の供給不安の影響が広がっている。
政府は調達の多角化を図っているが、小売り現場では供給不安が解消していない。各社は調達難や価格上昇に対応し、食品包装材の削減など対策を強化している。(橋本龍二、福原悠介)
トレーを無色に
イトーヨーカ堂は今月から、東京都内の一部店舗でプラスチック容器に入れて販売していた鉄火巻きやカッパ巻きなどの巻物をばら売りに変更した。買い物客は一部紙製の袋に入れて持ち帰る。ナフサ由来のプラ使用量を減らすためで、天ぷらや焼き鳥のばら売りも始めており、店舗を順次、拡大する予定だ。
肉や刺し身など生鮮食品も順次、トレーの色を無色に変更し、ナフサから作られるインクを節約する。27日に大田区の店を訪れた40代主婦は「包装は簡易で構わない。買いやすい価格を維持する企業努力をお願いしたい」と話した。
土居仁フード&ドラッグ事業部長は「現時点では在庫でまかなえているが、調達コストが上がっており、無駄を省いていく」として簡易包装を広げる方針だ。
価格転嫁
イオンは7月発売のプライベートブランド(PB)のそば「大盛麺&つゆ」で、つけつゆ用のプラ製カップをなくし、つゆを麺に直接かけるようにしてプラ使用量を1割減らして費用を10円下げた。トレー包装をやめた商品もあり今後も拡大する。宮城県内のスーパー、ヤマトクは今月から弁当の包装材をラップから輪ゴムに変更。大阪のスーパー、越前屋はレジ袋を5円から10円に値上げした。
ただ、中小スーパーはコスト吸収に限界がある。横浜市のスーパー「セルシオ和田町店」の担当者、久保田浩二さん(50)は「食品トレーの仕入れ先は資材メーカーから3割の値上げを打診されたそうだ。値上げされれば価格転嫁せざるを得ない」と嘆く。
エチレン増産
経済産業省によると、国内のナフサ供給量の4割強は中東から輸入してきた。ホルムズ海峡の事実上の封鎖を受け、政府は米国などからの輸入を増やして穴埋めできるとしている。ただ、将来の値上がりや調達難を見越して一部メーカーなどが調達量を増やし、流通の目詰まりが生じているとみられている。
一方で石油製品の増産の動きも出てきた。プラ原料となるナフサ由来のエチレンについて、三井化学は7月から、千葉県の製造設備で稼働率を上げる方針だ。中東以外からナフサ調達が進み、市村聡社長は「取引先が求める量を供給できる」と説明した。
高市首相は27日の全国市議会議長会で、ナフサ由来の石油製品について「現場で物資不足が発生している。目詰まり対策をきめ細かく進めて、市場の混乱回避に全力で取り組む」と述べ、目詰まり解消に向けて情報提供への協力を求めた。
食品業界団体と初の情報交換会…農水省・経産省
中東情勢の悪化に伴い、ナフサ(粗製ガソリン)の供給不足が懸念されていることを受け、農林水産省と経済産業省は27日、食品関係の業界団体との情報交換会を初めて開催した。流通の目詰まりを解消するのが狙いで、業界団体から寄せられた意見を基に、両省は対策に生かす考えだ。
会議は、食品製造や流通・小売り、外食・中食など約230の業界団体に参加を呼びかけ、オンラインで開催された。冒頭のみの公開で、鈴木農相は「事業者が安心して企業活動を継続でき、国民への食料の安定供給という責任を果たせるよう情報収集・提供の場として活用してもらいたい」と述べた。
両省が現在の対応状況などを説明。約10団体から資材調達の懸念や流通の目詰まりについての声が寄せられたという。農水省は、これまで950件以上の相談を受けている。
