X(旧Twitter)では、過激な投稿ほど拡散されやすい。これは、イーロン・マスクによる買収後に「アルゴリズムの私物化」が起きたためだ。一体どういうことか。カナダの歴史学者の著書より、Xのカラクリを紹介する――。(第2回)

※本稿は、クィン・スロボディアン、ベン・ターノフ、訳・樋口武志『マスキズム 新たな独占の時代』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。

写真=ロイター/共同通信社
米ツイッターのロゴとマスク氏のプロフィル画面=2022年4月 - 写真=ロイター/共同通信社

■極右アカウントが次々と復活

訪問者数においては最大級ではなかったにもかかわらず、常にTwitterは世論へのとてつもなく大きな影響力を持っていた。ジャーナリストは時代の動向を掴む手段として頼り、このプラットフォーム上でトレンドとなったトピックだけをもとにして記事を書くことも多かった。政治家はオンラインでのブランドを築くために利用した。

トランプは2021年にTwitterから追放されていたにもかかわらず亡霊のように存在感を示し続けており、このプラットフォームがどれほど強力なメガホンになり得るかを教えてくれる。

当然ながら、マスクによる買収は右派から広く称賛された。「意味があると感じる物事はほとんどないが、これには意味があると思う」とは極右インフルエンサーのカーティス・ヤーヴィンの弁だ※1。

※1:Curtis Yarvin, “The Twitter coup”, Gray Mirror (April 15, 2022).

買収したマスクはまず、Qアノンの信奉者、白人ナショナリスト、ネオナチなど、不適切な投稿だとして削除されていた何百もの極右アカウントを復旧させることから始めた※2。しかしこのサイト改革は、旧来のメディアのように、会社がコンテンツに対して編集権を行使すれば達成されるようなものではなかった。

※2:Brandy Zadrozny, “Elon Musk’s ‘amnesty’ pledge brings back QAnon, far-right Twitter accounts”, NBC News (December 2, 2022).

ソーシャルメディアはFoxニュースのような一方通行の放送メディアではない。つまり編集方針を書き換えさえすれば大衆が従うわけではない。そのため、技術面でのより創造的な工夫が必要だった。

■本物を証明する「青いマーク」は課金制に

マスクがおこなった最も重要な変更は、同プラットフォームの認証システムに関するものだった。もともとTwitterはユーザーの表示名の横に青いチェックマークを付け、偽物でないことの証明としていた。

このマークは著名な公人や組織のために使われてきたものだったが、マスクはそうしたアカウントからチェックマークを取り上げ、月額料金を支払う意思のある者には誰であっても認証を与えるようにした。

実際には、そうやって月額料金を支払う人の多くはマスク支持者だった。そして認証済みアカウントからのツイートはプラットフォーム上で優先されたため――彼らの投稿の表示はアルゴリズムによってブーストされ、相手への返信はどんなスレッドでも一番上に表示された――この動きは、親マスク派の声を増幅させる効果を持っていた。

マスクは伝統的な編集長の役割を引き受けるのではなく、このプラットフォームを自分の世界観を増幅する場所に作り変えたのである。そうすることで、彼は社会学者のパオロ・ジェルバウドが呼ぶ「デジタル政党」と同じようなアプローチをしていたと言える※3。

※3:Paolo Gerbaudo, The Digital Party: Political Organisation and Online Democracy (London: Pluto Press, 2019).

■「デジタル政党」は独裁化しやすい

2000年代と2010年代の選挙では、候補者や政策の選択に関する有権者の声を、デジタルツールの活用によって直接届けていくことを約束する新しい政党がいくつか現れた。ドイツ海賊党からイタリアの五つ星運動に至るまで、そうした新しい政党は、インターネットが持つ参加型という特徴が、新しい種類の参加型政治をもたらすというビジョンを掲げていた。

しかしジェルバウドの説明によれば、そうした政党は実際には独裁制になり、「巨大な支持基盤(スーパーベース)」が、その代弁者である「ハイパーリーダー」に従う構造になっていた。代議制民主主義のように制度化された枠組みが存在しないため、ひとりの人物に桁外れの権力が集まったのである。

インターネットの進化を受けながら、分散化は結局のところ独占に行き着いたのだった。マスクの「X」は、この一見矛盾するような進化を利用した。彼の作った街の広場(タウンスクエア)は誰にでも開かれているが、その広場の中心に置かれた演説台に立つたったひとりの人物、つまりマスク自身に権力を与えるような作りになっていた。

■プラットフォームを私物化するマスク

マスクはエンジニアたちに指示して自分の投稿が多くの人間に届くようにしたため、彼がひっきりなしにおこなう投稿やリポストを通して、彼をフォローしていないユーザーを含めて何百万人ものフィードにマスクの視点が着実に送られていくことになった※4。マスクがハイパーリーダーだとすれば、スーパーベースは3段階のプランを持つ「Xプレミアム」の有料メンバーたちであった。

※4:Zoë Schiffer and Casey Newton, “Yes, Elon Musk created a special system for showing you all his tweets first”, The Verge (February 15, 2023).

上位プランになるほど、使用の自由度が高く、より長文の投稿が可能で、しかも誰かへの「リプライの優先表示」も強化された※5。これは公共圏をサブスクリプション化し、会員ランクに応じて序列化したものだと言える。

※5:“About X Premium”.

このデジタル政党はグローバルなものでもあった。2023年から2025年にかけて、マスクはアルゼンチンからイタリア、ニュージーランドに至るまで、少なくとも16カ国の右派政治運動や政府を後押しした※6。

※6:David Ingram and Bruna Horvath, “How Elon Musk is boosting far-right politics across the globe”, NBC News (February 16, 2025).

マスクは、非白人の移民を白人文明にとっての致命的脅威と見なすヨーロッパの民族的愛国主義者(エスノ・ナショナリスト)たちの考えを拡散することを特別に好むようになった。

2025年9月21日、チャーリー・カーク氏の追悼式典に出席するイーロン・マスク氏(写真=Gage Skidmore/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons)

■移民批判がどんどん過激化している

オランダの極右政治家ヘルト・ウィルダースが「開かれた国境」と「大量移民」が「我々自身の文化と西洋の価値観の崩壊」を招いていると投稿すると、マスクは賛同を示すリプライを送った※7。

※7:https://x.com/geertwilderspvv/status/1742596599631446238, January 3, 2024.
https://x.com/elonmusk/status/1742826319849684997, January 4, 2024.

さらに「再移住(リマイグレーション)」を求める運動――つまり非白人移民とその子孫の追放を求める運動を展開していたオランダの極右活動家エヴァ・フラールディンガーブルックとも数十回にわたってやり取りをした。

写真=iStock.com/querbeet
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/querbeet

ミラノで起きたモロッコ人の若者による暴行事件について伝えながら「今すぐ再移住を」と要求するフラールディンガーブルックの投稿に対し、マスクは「なぜ我々の都市で犯罪のまん延が許されているのか?」と返答している※8。

※8:https://x.com/elonmusk/status/1945546893385175292, July 16, 2025.

2025年までには、「ヨーロッパのレイプ」「イギリスのレイプ」「大量虐殺的レイプ」「レイプによる大量虐殺」といった言葉を繰り返し投稿するようになり、移民問題を性暴力の問題や、より広く西洋全体への冒涜と同一視するようになった※9。

※9:https://x.com/elonmusk/status/1961844695547494661, August 30, 2025.
https://x.com/elonmusk/status/1962903682997182528, September 2, 2025.
https://x.com/elonmusk/status/1875620755104526755, January 4, 2025.
https://x.com/elonmusk/status/1875145167633887358, January 3, 2025. など。

■白人女性=多くの白人を作るための子宮?

著名な白人ナショナリストのアカウントが、中世の城塞の画像を背景にして「文明全体が自ら進んで自国の土地と女性を手放している」ことを嘆く文章を記したミームを投稿したとき、マスクはそれを引用リツイートしながら「間違いない」という言葉を添えた※10。

※10:マスクはこのツイートを2024年3月8日に投稿したが、のちに削除した。Sohrab Ahmari, “The new racist right are uniquely dangerous”, New Statesman, April 10, 2024. 参照。

クィン・スロボディアン、ベン・ターノフ、訳・樋口武志『マスキズム 新たな独占の時代』(飛鳥新社)

そうしたやり取りのなかで、白人女性はひとりの人間としてではなく、人種的純粋性の象徴として扱われていた。彼女たちの身体は、西洋の歴史的遺産をなすものと見なされ、それゆえにより多くの白人を作るための子宮を持つ存在とも見なされていた。

典型的な排外主義者と同じように、マスクは「開かれた国境」に対する懸念と、先進工業国における出生率および人口崩壊への危機感を移民の問題に結びつけて考えていた。「低い出生率はゴーストタウンを生む」と彼は記している。

「そして最終的にはゴースト文明を生む」※11。マスクは、フランスの新右翼から生まれた極右陰謀論である「大置換論(グレート・リプレイスメント)」を信じていた。

※11:https://x.com/elonmusk/status/1625580694494928897, February 14, 2023.

■自分が作ったXでさらに右傾化している

リベラルなエリートたちが共謀し、(不法移民を含めた)移民の流入を加速させて白人の人口と入れ替えようとしているという説である※12。

※12:José Pedro Zúquete, The Identitarians the movement against globalism and Islam in Europe (Notre Dame, Indiana: University of Notre Dame Press,, 2018), 146-59.

ここで言うエリートたちとはユダヤ人を暗に示すことが多く、白人排除につながる政策の黒幕として描かれる。2023年11月には、Xユーザーがユダヤ人は「対立を煽るようなヘイトを自分たちに向けるなと主張していながらも、それとまったく同じ種類のヘイトを白人に向けている」と投稿した際、マスクは「あなたは本当の真実を語った」と返信した※13。

※13:https://x.com/elonmusk/status/1724908287471272299, November 15, 2023.
Mike Wendling, “White House Criticises Elon Musk over 'Hideous' Antisemitic Lie”, BBC (November 17, 2023).

写真=iStock.com/coldsnowstorm
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しかし、マスクは自分がすでに持っている意見を広めるためだけにXを利用したわけではなかった。より重要なことに、彼は新しい意見を得るためにもXを利用していた。以前から、ソーシャルメディアは自分がすでに持っている好みの偏りが反映されるだけでなく、そうした偏った好みを積極的に生む場所でもあることは研究によって明らかになっていた※14。

※14:Nick Seaver, Computing taste algorithms and the makers of music recommendation (Chicago: University of Chicago Press, 2022).

Xを自らの右傾化に合わせて再構築したマスクは、Xという情報のフィードバック・ループに身を浸すうち、さらに急進的な右派となっていった。

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クィン・スロボディアン歴史学者、ボストン大学パーディー・スクール教授
ボストン大学フレデリック・S・パーディー・スクール・オブ・グローバル・スタディーズの国際史教授。著書に『破壊系資本主義 民主主義から脱出するリバタリアンたち』、近著に『Hayek's Bastards: The Neoliberal Roots of the Populist Right』(2025)などがある。
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ベン・ターノフ作家
マサチューセッツ在住の作家・テクノロジスト。著書に『Internet for the People』(2022)、共著に『Voices from the Valley: Tech Workers Talk About What They Do――And How They Do It』(2020)がある。『ニューヨーク・レビュー・オブ・ブックス』に数多く寄稿するほか、『ニューヨーク・タイムズ』『ニューヨーカー』『ニュー・リパブリック』などでも執筆している。
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(歴史学者、ボストン大学パーディー・スクール教授 クィン・スロボディアン、作家 ベン・ターノフ)