ガラス時代にはあり得なかった劣化! ヘッドライトの黄ばみはスタイリッシュさを追求した代償だった

この記事をまとめると
■空力特性を突き詰めたことでクルマのデザインは箱型から流線形へと進化してきた
■デザイン処理のためにヘッドライトレンズの材質もガラスから樹脂に変化した
■樹脂製のヘッドライトレンズはメンテナンス作業が必要だ
ボディフォルムの変化とともにヘッドライトレンズの素材も変わった
旧車が人気を集めているが、たとえば旧車といわれるクルマと現代のクルマを時系列に沿って見比べていくと、そのスタイリング、デザインの変化が手にとるようにわかっておもしろい。その進化の様子を、ひとことでいってしまうと、言葉は古いが「流線形化」と表現してもよいだろう。
たとえば、1980〜90年代のモデルを見ると、2ボックスといわれるクルマのボディフォルムは、ひと目でわかるふたつの箱で構成されている。3ボックスにしても同様だ。ところが、現代のクルマを見ると、形態的には2ボックスだが、ボディ側面から見たボンネットラインとキャビン(ウインドウ)ラインの区別が難しいほど一体化されている。

こうしたボディフォルムの変化は、空力特性を突き詰めてきた結果の産物なのだが、デザイン処理でもっとも大きく変わってたのがヘッドライトまわりだ。その昔のヘッドライトといえば、丸形2灯/4灯(この2タイプが圧倒的な主流)、角形2灯/4灯ですべて前面はガラスレンズで構成されていたが、ボディフォルムが変化するにつれ、ヘッドライトも定形の真円形から異形といわれる変則的な形に変わってきた。
この異形ヘッドライトの普及とともに変わってきたのが、ヘッドライトのレンズ材質だ。かつてはガラス製だったものが、成形の自由度に大きな特徴をもつ樹脂製に変わり、現在はほぼポリカーボネイト製となっている。

従来の丸形、角形の定形ヘッドライトは、形状的にボディ面の延長として一体化したデザイン処理は出来なかったが、形状に自由度のある樹脂製異形ヘッドライトが使えるようになったことで、クルマのフロントデザインは飛躍的に進化することになった。このため、フロントエンドからウインドウトップまで、ひと筆書きのような滑らかな連続したラインでクルマをデザインすることができるようになったわけである。
多彩なデザインを実現するもメンテナンスが必要になった
ところが、この樹脂製ヘッドライトは、経年変化によってレンズの曇り(黄ばみ)が発生するという、ガラスレンズでは見られなかった弱点を露呈することになった。もちろん、その変化は3〜4年という短いスパンではなく、10年近い期間となる場合もあるが、経時変化によって確実に劣化することが明らかになったわけである。

太陽光線に含まれる紫外線が主な劣化原因で、これを避けるため、新車時にはレンズ表面に劣化を防ぐコーティングが施されているが、これも経年変化で落ちてしまい、徐々にレンズは曇って(濁って)しまうことになる。曇りの発生したレンズは、レンズ表面を研磨することで復活させることができ、この作業を行う専門店もいくつか存在している。
研磨と再コーティングにより、しばらくの間はレンズの透明度を保つことはできるのだが、経年変化で再び曇って(濁って)しまうことになる。実際に作業したことはないが、樹脂レンズのコーティング剤が市販され、新車時から定期的にコーティング作業を行い、曇りが発生、ひどくなった段階で研磨作業によりレンズ面を復活させたら、半年に1度程度の間隔でコーティングを行う予防策で、透明度を保つことができる。

ユーザー心理としては、経年変化の影響を受けないガラスでレンズを作ることはできないのだろうか、と考えたくなる。実際のところ、ガラス製レンズの製造は物理的に可能だが、実際問題としては非現実的な例となってしまう。
樹脂製レンズの大きな特徴として成形の自由度を上げたが、ガラス製でも異形レンズを作れないわけではない。樹脂製レンズは、原料を加熱して金型に流し込み、それを冷却する射出成形が大量生産に向き一般的な手法となっている。

ガラスレンズの生産でも、射出成形の手法が使えれば問題ないのだが、実際には、樹脂の溶融温度が200〜350℃であることに対し、ガラスの場合は1200〜1400℃と高く、流動値も低いこと、またガラスは性質的に脆く、離型もむずかしいため、複雑な形状の成形に射出成形は向かないことになる。もちろん、細心の作業によるワンオフ的な生産であればできないこともないが、現実的には無理だという結論に落ち着くことになる。
スタイリッシュなボディデザインを可能にした樹脂製のヘッドライトレンズだが、長期間その性能(透明度)を維持するには、研磨・コーティングというメンテナンス作業が必要であることを覚えておきたい。


