まつもと・ようへい 慶応大卒。三和銀行(現三菱UFJ銀行)勤務を経て2005年衆院議員初当選。25年10月から文部科学相。52歳

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 4月23日は子どもたちの読書活動への理解や関心を深める子ども読書の日。

 これにあわせ、松本洋平・文部科学相と山口寿一・学校図書館整備推進会議図書館改革プロジェクト代表(読売新聞グループ本社社長)が、子どもの読書を巡る現状や課題、必要な官民の取り組みについて意見を交わした。

身近に本がある環境作り…文部科学相 松本洋平氏

学校図書館を居心地良く…学校図書館整備推進会議図書館改革プロジェクト代表 山口寿一氏

読書体験の意義

 松本氏 小さい頃から本が大好きでよく読んでいた。初めて買ってもらった本は『こぎつねルーファスのぼうけん』。うれしくて、楽しく読んだことを記憶している。それから本は身近な存在で、暇があれば、本を読んで過ごしていた。

 読書はとにかく楽しい。物語を疑似体験でき、語彙(ごい)力もつく。文章を頭の中で映像化しながら、創造性が豊かになり、論理的に物事を考える力を育むことができる。活字を通じて人類が歩んできた道、先人たちが苦労し悩んできたことを知識として吸収し、次のステップにつなげていける。

 山口氏 本を読むことは基本的に楽しく、決して重苦しいものではない。子どもの頃は、友達の家にも自宅にも「岩波の子どもの本」という絵本のシリーズがあった。『きかんしゃ やえもん』や、外国の絵本だと『ひとまねこざる』などだ。小学生の頃の愛読書は怪盗ルパンやシャーロック・ホームズだった。

 本は想像力をかき立てる。頭の中で好きなように映像を思い描いていくのが面白い。そこが大きな意義と感じている。

スマホ時代の不読率

 山口氏 子どもたちが本を読まなくなっている。東京大学社会科学研究所とベネッセ教育総合研究所の研究調査では、小中高校の全てで2015年からスマートフォンの利用時間が大幅に増えて、SNSの利用が常態化した一方、読書時間は減少傾向にある。

 私が理事長を務める公益財団法人「文字・活字文化推進機構」の職員が、大学の卒業論文でこの調査データを分析し、子どもの読書に最も影響が大きいのは、家庭にある本の数だと推論した。不読率が上がり続けるということは、本のない家が増え続けている可能性があり、今後がとても心配だ。学校や図書館などで本を読む楽しさを伝えることが重要となる。

 例えば、読売新聞と文字・活字文化推進機構では「ビブリオバトル」という書評合戦ゲームに力を入れている。毎回盛り上がり、本の楽しさに気づく有効な対策になっている。

 松本氏 文部科学省では、学校の授業や学校図書館で読書の機会を確保していきたい。家庭も含めて身近に本がある環境を作り、本を読む素晴らしさや楽しさを、子どもたちに伝え、読書のハードルを下げることが重要だ。読書への興味関心を高め、学校教育で本を手に取るきっかけ作りができればと考えている。

学校図書館の機能

 山口氏 昔の図書室は、本を借りに行く場所というイメージだったが、現在は読書・学習・情報の三つのセンター機能が強調されている。学校図書館で調べ学習をして、教室と行き来しながら授業をするなど様々な利活用がある。学校図書館が校舎の真ん中にあれば、おのずと三つのセンター機能が発揮されるのではないか。

 松本氏 学校図書館の図書の予算は地方交付税で自治体に配分されている。文部科学省が旗を振るだけではなく、各自治体や学校現場、それぞれが重要性を認識することも大切だ。

 子どもの意見を政策に反映させる、こども家庭庁の「こども若者★いけんぷらす」を通じて学校図書館について尋ねたところ、憩いの場やリラックスできる空間にしてほしいといった声もあった。来館したくなる学校図書館にするため、学校司書をしっかり配置し、児童生徒や教職員の声、現場の課題を国や自治体が共有する体制作りも重要だ。

書店と地域の連携

 松本氏 全国的に書店は減っているが、図書館が地元の書店で図書を購入するなど連携を進めている地域では一定の成果をあげている。街の書店は文化の発信拠点としても欠かせない。

 山口氏 宮崎県都城市では、市中心部の閉鎖したショッピングモールを市立図書館に改装したところ、毎年100万人ほどが訪れるようになった。市の人口は16万人弱だ。子どもの本のフロアはゴロゴロ寝そべることができ、書棚も本を取りやすいように工夫している。

 都城市では街の書店も健在だ。読書が推進され、図書館と書店は商売敵になっていない。こうした取り組みを目指すべきだ。

 松本氏 図書館は自治体や住民の理解があったからこそ、各地域に張り巡らされてきた。地域にとって大切な知の拠点であり、人々が集う拠点だ。地域と連携しながら図書館の振興を後押ししていきたい。

 山口氏 自治体の読書推進が重要だ。公共図書館は街づくりの核になり、コミュニティーを強める。住民が知識を高め、民主主義の基盤になっていく。

 街の書店が地方議員に働きかけをして、議会で図書館の活性化策について質問をすることで、首長がこの課題に気がついて予算活用が進んだ事例がある。書店が動くことで公共図書館と地元書店の連携が進んだケースもある。そうした官民連携を促すことが機運醸成につながり、首長の意識も変化していく。

学校図書館5か年計画

 山口氏 27年度から始まる「学校図書館図書整備等5か年計画」に向けて、特別支援学校の図書館の整備や、新聞の複数紙の配備、学校司書の配置充実は大事なテーマだ。小中学校や高校に比べて特別支援学校は図書数が非常に少なく、図書館がない学校もある。特別支援学校の児童生徒の数が増え続けて図書館を教室に変えなければならないケースも多いが、具体的な対策は必要だ。

 学校司書の待遇改善も重要だ。文部科学省の調査では、学校司書のうち、正規の常勤職員は1割程度にとどまり、複数の学校を掛け持ちしている人も2割以上いた。一つの学校に学校司書が必ずいる状況にすることが必要ではないか。

 松本氏 学校司書をしっかりと配置できるよう、文部科学省でも取り組みを進めていきたい。そうすることで、学校図書館の質を高め、子どもたちに利用してもらえる環境作りも進む。

 子どもたちにはぜひ、面白そうだと思った本を手に取って読んでもらいたい。必ず発見がある。本の楽しさを一度知ったら、一生続く趣味になる。本や活字が身近にあるような環境を作っていきたい。

 山口氏 「こども若者★いけんぷらす」に寄せられた学校図書館への意見には「図書館でドーナツを食べたい」や「図書委員が先生なしで運営するのがいい」など、ユニークなものが多くあった。子どもはどういう空間が楽しく、居心地が良いかわかっている。大人の方が、官民連携で着々と手を打てば、いくらでも本を好きになる子どもを増やしていけると感じている。

 ◆子ども読書の日=2001年に施行された「子どもの読書活動の推進に関する法律」で毎年4月23日に定められた。文部科学省による、優れた読書活動を実践する学校や図書館、団体、個人の表彰など、各地で子どもと読書に関するイベントが開かれる。

 ◆学校司書=学校図書館の運営管理や教育活動の支援などを担う専門の学校職員。学校図書館法で、配置する努力義務がある。必要な資格の定めはないが、司書資格を条件とする自治体が多い。一方で、「司書教諭」は講習を修了した教諭らのことで、配置が原則義務づけられている。

1か月に1冊も読まない 高校生で5割超

 読書が好きな児童生徒の割合は減少傾向にある。

 全国学校図書館協議会の調査によると、1か月間に本を1冊も読まない児童生徒の割合「不読率」は2025年、小学生が9・6%、中学生が24・2%、高校生が55・7%を占める。いずれも10年前より、3・8〜10・8ポイント増えた。要因の一つに、スマートフォンの所持率や利用時間の増加があるとみられる。

 読書の効果は多様だ。国立青少年教育振興機構が21年に公表した調査研究によると、批判的思考力や主体的行動力、認知機能などは、子どもの頃の読書量が多い人は、そうでない人よりも高くなる傾向があった。文部科学省が毎年実施する全国学力・学習状況調査でも、読書好きであるほど平均正答率が高かった。