「なめんじゃないよ!」 島崎和歌子が「オールスター感謝祭」で大説教 30年番組を背負う覚悟が視聴者に刺さった理由
参加希望者の少なさに激怒
4月4日放送の「オールスター感謝祭’26春」(TBS)で、司会の島崎和歌子が名物企画「赤坂5丁目ミニマラソン」の参加希望者の少なさに激怒したことが話題になっている。出演者の中で参加希望者がわずか9名しかいなかったことが明らかになると、島崎は感情をあらわにして、演説口調で出演者一同を強く叱責した。【ラリー遠田/お笑い評論家】
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【レア写真】ビジュアル、ガラリ…20代の頃、島崎和歌子“密着”ショット
「一番の花形のイベントですよ。何年やってると思ってるんですか。私も走りたい。冗談じゃないですよ! 30年、30年やっております。赤坂五丁目商店街の皆様のお力、赤坂の消防署、警察の皆さんも、この番組のために協力していただいております。それをあんたたち、9名だなんて! 赤坂の商店街の皆様に、私は、私は、面目が立ちません! 走りたい方は一般の方でもたくさんいらっしゃるんです。なめんじゃないよ!」

熱のこもった彼女の「お説教」にスタジオ全体が温かい笑いに包まれ、視聴者にも大反響を巻き起こした。単なる生放送中の事件として消費されたのではなく、その言葉が長年司会を務める彼女の番組への愛情がにじむものとして受け止められた。
この出来事が印象的だったのは、島崎の言葉が、出演者への苛立ちというより、長寿番組を背負ってきた責任感の表れとして響いたからだ。「オールスター感謝祭」は1991年に始まったTBSの大型生特番であり、「赤坂ミニマラソン」は番組の柱の1つとして位置づけられている。島崎は番組の初回から司会を務めてきた。
つまり、あの説教は、その場のノリで突然飛び出したものではなく、30年以上番組の現場に立ってきた人間が、自分の体に染み込んだ番組の重みを半ば反射的に言葉にしたものだったのだ。
ここで重要なのは、島崎の発言が「テレビの作り手側の論理」をむき出しにした点であるということだ。今のテレビをめぐる言説空間では、視聴者の感想や批評はSNSにあふれている。だが、番組を維持するためにどれだけの人が動き、どれだけの段取りと協力の上に1つの企画が成立しているのかということは、出演者や制作者の立場から公に語られることが少ない。島崎はそこを一気に可視化した。
地域を巻き込んだ「祭り」
赤坂の商店街、消防署、警察といった具体的な協力者を挙げながら怒ったことで、ミニマラソンが単なる賑やかしの企画ではなく、地域を巻き込んだ一種の「祭り」であることが伝わった。視聴者はあの叱責を通じて、普段は裏に隠れているスタッフの苦労や地域との関係性を初めて実感することになった。
島崎の大説教が悪い印象を与えず、面白いものとして受け取られやすかったのは、彼女のキャラクターによるところも大きい。彼女はアイドル、女優、タレントと活動の幅を広げながら、バラエティの第一線で活躍を続けてきた。キャリアを重ねても偉そうな雰囲気を出さず、親しみやすい雰囲気を保っている。
初回から「オールスター感謝祭」の司会を任され、芸人、俳優、アスリートといったさまざまな属性の人が大勢集まる生放送の現場を回してきた。タレントとしての基本的なスキルだけではなく、力強さと繊細さと抜群のコメディセンスを兼ね備えていたからこそ、彼女はそこで自分の役目を果たすことができた。
そんな彼女は、テレビの影響力が大きかった時代の作法を体に刻み込みながらも、令和の視聴者にも届く形でそれを提供できる貴重な存在である。威圧感を与えずに愛のある説教をしているからこそ、それが面白いと思われるし、主張が押しつけがましくならない。彼女の言葉にはエンターテインメントの最前線に立つ者ならではの躍動感があった。
今回の「公開説教」が大反響を呼んだのは、単に島崎が感情的になったからではない。長寿番組の重み、地域やスタッフへの敬意、生放送を成立させる現場の情熱を、彼女が短い言葉の中に込めたからである。視聴者はそこに番組を愛している人の本気を見た。島崎和歌子は番組の歴史を背負い、テレビの「熱」を視聴者に伝える存在として今も機能しているのである。
ラリー遠田(らりー・とおだ)
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『松本人志とお笑いとテレビ』(中公新書ラクレ)など著書多数。
デイリー新潮編集部
