NASA有人月ミッション「アルテミスII」宇宙船は月の重力圏へ クルーは月面観測に向け準備
アメリカが主導する有人月探査計画「Artemis(アルテミス)」で初めての有人ミッションとなる「Artemis II(アルテミスII)」。ミッション5日目を迎えた宇宙船「Orion(オリオン、オライオン)」は、アメリカ東部夏時間2026年4月6日未明(日本時間同日午後)に、月の重力圏(地球の重力よりも月の重力の影響が強くなる月周辺の領域)へ入ったとみられます。

船内用宇宙服の着用テストや軌道修正燃焼を実施
NASA(アメリカ航空宇宙局)はアメリカの現地時間2026年4月5日に開催した記者会見にて、ミッション5日目を迎えたクルーは健康で士気も高く、ミッションは極めて順調に推移していることを報告しました。
5日目は主な活動として、オレンジ色の船内用宇宙服(OCSS: Orion Crew Survival System)を無重力環境で着用するテストが実施されました。この宇宙服は打ち上げ時や地球帰還時に着用するものですが、その他にも万が一の事態で船内が減圧した際などに生命維持を提供する重要な装備です。

テストではスーツの着用や気密チェックに加えて、宇宙服を着た状態でのシートへの着席、食事(プロテインシェイクの摂取)や投薬といった、緊急時を想定したシミュレーションも行われました。
また、打ち上げ時の高い飛行精度のおかげでこれまでの2回はスキップしていた月へ向かう往路の軌道修正燃焼ですが、3回目となる「OTC-3」は予定通り実施されており、17.5秒間の補助エンジン噴射によって軌道がより正確になるよう調整されました。さらに、クルーの就寝時間を利用し、光通信システムを用いてデータを100Mbpsの通信速度で地球へ転送するテストなども行われています。

目前に迫る月面への最接近 クルーは観測を準備
ミッション6日目となるアメリカの現地時間4月6日には、いよいよ月面へ最接近するフライバイと本格的な科学観測が実施されます。
NASA科学ミッション本部のKelsey Young氏によると、クルーは約5時間にわたるフライバイ中に「Apollo 12(アポロ12号)」や「Apollo 14(アポロ14号)」の着陸地点をはじめ、地球から見て月の縁にある、月の表側と裏側にまたがるほどの巨大な衝突地形「オリエンタル盆地(東の海)」といった30のターゲットを、観測計画に従って観察・撮影します。
クルーの疲労を考慮して、観測は2人ずつのペアが交代で取り組み、望遠レンズを取り付けたデジタルカメラを用いて数千枚の画像が撮影される予定です。人間の目は立体感や微妙な色の違いを瞬時に見分けることができるとして、NASAは新たな地質学的発見に期待しています。

アポロ13号の記録更新へ “地球の出”の撮影も
今回のフライバイでは、科学観測以外にも歴史的なハイライトが目白押しです。
NASAの予測によれば、Orion宇宙船はアメリカ東部夏時間2026年4月6日13時56分(日本時間翌7日2時56分)頃に、かつて「Apollo 13(アポロ13号)」が打ち立てた人類の最遠到達記録(24万8655マイル)を更新します。そして、5時間ほど後のアメリカ東部夏時間6日19時02分(日本時間翌7日8時02分)頃に月面から約4070マイル(約6550キロメートル)の距離まで最接近し、さらにその5分後頃には地球からの最大距離となる25万2760マイル(約40万6777キロメートル)に達する見込みです。
また、Orion宇宙船が月面に最接近する時間の前後では、宇宙船から見て地球が月に隠される「地球の入り(Earthset)」と、再び姿を現す「地球の出(Earthrise)」が観察される他に、太陽が月に隠される約53分間の「日食」も発生します。地球が昇る印象的な画像の撮影だけでなく、日食の間には太陽コロナの観測も行うなど、ミッション6日目は科学的にも歴史的にも極めて重要な日となりそうです。

文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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