見事なゴール。このロングカウンターの破壊力があるからこそ、日本はハイプレスに固執する必要がなかったわけだ。選んだ戦術に説得力を与える、先制ゴールだった。
 
 先制後の日本は、鎌田を中心にある程度ポゼッションし、時折カウンターで脅威を与えつつも、基本的には約70分にわたってイングランドの攻撃を凌ぐ展開になった。相手は終始、伊藤洋輝と渡辺の背後、ポケットと呼ばれるペナルティエリアの両角スペースをねらってきたが、パラグアイ戦やブラジル戦で失点の原因となったこのスペースを、今回は日本が完璧に封じた。

 たとえば28分、伊藤は対面する相手サイドハーフのロジャーズがボールを呼び込もうとタッチライン際へ開いた時、一旦は追撃しようとした。ところがその瞬間、ボランチのアンダーソンが、外へ流れた伊藤の裏を取ろうとポケットへ走り出す。ここでスルーパスを食らって崩されていたのが、これまでの日本だった。

 しかし、伊藤はアンダーソンの飛び出しに気付き、ロジャーズ追撃を止め、中へ絞ってポケットを塞ぐ。その結果、ロジャーズは大外でフリーでボールを受けることになったが、そのエリアに脅威はない。伊藤は未然に、危険なスペースに蓋をした。

 こうやって一歩間違えれば危機を生む状況を、淡々と、平然とこなしていく伊藤は、スコットランド戦のパフォーマンスを含め、前回W杯からの大きな成長が見られる。鈴木淳之介の勢いあふれる守備も魅力ではあるが、これほどの強豪が相手なら、バイエルンの環境で揉まれている伊藤の経験を頼りにせざるを得ない。
 
 また、徹底したポケット潰しは伊藤だけでなく、両ウイングハーフにも見られた。堂安はもともと守備がうまく、以前から中央のカバーに目を光らせていたので印象に変わりはないが、イングランド戦で目を引いたのは左サイド、中村の攻守だ。スルーパスへの対応、中央のカバーリングなど、今までは怪しかった守備の印象を覆す試合になった。

 日本の守備向上により、ねらっていたポケットを取れず、効果的な攻撃を繰り出せないイングランドは、後半に両SBを高い位置へ上げ、深く押し込んで来た。

 前半はあまり目を向けなかったコーナーフラッグ際のスペースを突き、伊藤や渡辺を外へ引っ張り出そうとしてきたが、日本はボランチがカバーし、クロスへの空中戦を含めて対処した。メンバーが交代した直後に関しては、カバーの微妙な遅れが気になったが、声を掛け合って修正していた。

 そして終盤の空中戦も凌ぎ切り、日本は1−0で勝利。序盤からミドルゾーンに引く展開になったのはブラジル戦も同様だったが、そこで失点せず、隙のない守備で我慢できたのは今回の大きな成果だろう。

 価値ある、いや、意味ある勝利だったのではないか。カタールW杯のドイツ戦、スペイン戦やブラジル戦とは違い、今回は後半の勢いで呑み込んだわけではない。強豪を相手に、先行逃げ切りというベストな勝ち筋を見出した。また、カタールW杯のクロアチア戦は先制しつつもリードを守り切れず、1−1に追いつかれたが、今回は1−0のまま逃げ切った。

 強豪を相手に、”普通に勝つ”。日本代表はまたひとつ、新たな扉を開けた。

文●清水英斗(サッカーライター)

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