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秋田の最低賃金が3月31日に引き上げられました。

これまでの時給951円から80円アップして1,031円になっています。

物価が高騰する中での大幅な引き上げ、労働者と経営者に話を聞くとその受け止めは対照的でした。

最低賃金について話し合う審議会の会長を務める学識経験者の見解も通して新年度の議論の展望、そして、この先の在り方について考えます。

■アルバイトの大学生たちは

あす1日からの新年度で大学4年生になる3人に話を聞きました。

それぞれアイスクリーム販売店や飲食店などでアルバイトをしています。

高谷美智瑠さん
「3月16日から給料が上がりますよっていう紙を給料明細とは別途でもらってうれしくて写真撮りました」

最低賃金の引き上げに伴い、960円だった時給が80円上がって、1,040円になりました。

3人全員がかけもちでバイトをしていて、賃金上昇の額やタイミング、それに伝え方は様々です。

林敬仁さん
「最低賃金が上がるのと一緒にお店の商品の値段も上がったので、それに伴ってちょっと上がった」

佐々木れおさん
「最低賃金も上がって給料が上がるので、その中で、より熱心に働いてほしいみたいな話が行われるのかなとは思っています」

県全体の平均給与の底上げにつながると期待されている最低賃金の引き上げ。

高谷美智瑠さん
「秋田とか東北のほうは1,031円とかだけど、やっぱり東京とか都心のほうは1,200円とかめっちゃ超えるから。SNSとかでバイト募集みたいな、そういう広告流れてくるときに1,200円から1,500円とか書かれてると、やばい秋田やばいなって」
林さん
「低いって感じちゃうよね。わかる」
高谷さん
「県外出身としてはちょっと気になるところ」

佐々木さん
「生活費を稼ぐために働かないといけないけど、このバイトに使う時間をもっと勉強とか研究に充てられたらいいのになって思うんですけど」
林さん
「秋田で1,500円とかだったら、そのバイトの時間減らしても稼げるから、その分勉強だったり趣味だったりに充てれる気はするね」

高谷さん
「秋田のことを考えるにあたって、魅力とかもそうなんですけど、そこに人生を置くってなったら、やっぱりお金のことも考えるってなって、最低賃金を考えると、都心とかほかの他県に比べたら、低いっていうほうにちょっといっちゃうので、もうちょっとこう、余裕があれば、上がっていってくれたら魅力をより感じるようになるんじゃないかなとはちょっと思います」
佐々木さん
「僕も高谷さんと同じ意見で地域格差がなくなることを祈っております」

林さん
「地域差があると、やっぱどうしても東京に行きたくなっちゃう。その生活費とか、もちろんそっちのほうがかかるっていうのもわかるけど、やっぱ働く上で、同じ時間で働いて、稼ぐ値段が違うってなったら、そっちに行きたくなる気持ちもわかるし、秋田とかは伝統的なものとか、そういうものがあったり、都会よりは…都会の新しいもの新しいものっていう感じよりかは伝統的なものも多いのでそういうところを守っていくためにも地域の秋田とかの最低賃金をもうちょっと上げてくれると、そういうところにも手を出しやすいというか」

学生たちの関心も高い最低賃金。

秋田は今と同じ仕組みになった2002年度は605円でした。

それ以降は、一度の据え置きを除いて毎回引き上げられていて、今年度の80円アップはこれまでで最も大きい上昇幅に。

引き上げ後の最低賃金、1,031円はもちろん過去最高額です。

一方で、秋田の物価を示す指数も近年上昇傾向にあります。

特にここ数年は際立って上がっていて、各分類を総合した値が、去年=2025年は2002年と比べて17パーセント近く高くなりました。

■スーパーの経営者は

物価の高騰と最低賃金の上昇。

大きな影響を受けるのは経営者側です。

秋田市や潟上市などでスーパーを展開するナイスは今月、最低賃金引き上げに先立ち、パートタイム労働者の時給を1人当たり80円引き上げました。

ナイス追分店 奥山浩樹店長
「人件費のほうがかかり増しになるというところが1つ大きい問題になってきます。あと2つ目が年収制限が今のところ変わっていませんので、働ける時間が限られますので、人手不足というのはより拍車がかかります」

この店舗は経験値などによる昇給で、すでに最低賃金を上回っている従業員の時給も、その差を維持するために合わせて引き上げました。

昇給の対象はおよそ100人。

人件費の増加は1か月あたり80万円を超えます。

賃金上昇に伴い、いわゆる年収の壁を超えて社会保険料の支払いが生じないようにと、働き控えをする従業員が出る懸念も。

物価高の影響で仕入れ値が上がるなど経営の厳しさが増すなか、最低賃金の引き上げが重くのしかかります。

奥山浩樹店長
「時給が上がった以上に、やっぱり値段の方にそれを反映、なかなかしづらいところがありますので、なので経費ばっかり増えるばっかりというところが苦しいところですね」

店はセルフレジの導入でできるだけ人手がかからない運営をするなど、対策を進めています。

■新年度の展望と今後の最低賃金のあり方は

県は賃金引き上げを行う経営者を支えるため、去年8月25日から3月31日までの間に、時給を1,000円以下から1,031円以上に増やした中小の事業者を対象に、支援金を出しています。

こういった支援事業について鈴木知事は去年9月、「短期間で急な賃上げに対するかなり特別的な決断」と述べました。

鈴木知事
「やっぱり秋田県あげてしっかりと経営者層の意識が変わってもらってですね、どんどんチャレンジしていかないと、これまで通りの仕事はできないんだというような意識啓発にも力を入れるべきだと私は思ってます」

地域経済について詳しい秋田大学の臼木智昭教授は、最低賃金について労働者と経営者などが話し合う審議会の会長を務めています。

今後の見通しは。

秋田大学 臼木智昭教授
「秋田県でいうと大台の時給1,000円というのをひとまず超えましたので、じゃあ次はということになると金額うんぬんでこの辺の金額というよりも、やっぱり今年も全国最下位というようなそういうのを何とか避けられないかというようなそういうご意見も強くなるような気はしていますけど」

臼木教授は新年度の最低賃金の議論について、労働者側が物価高騰に追いつくような賃金上昇を求める一方、経営者側は、中東をはじめとした国際情勢の急変を踏まえて、慎重な姿勢が強まるのではないかとみています。

そのうえで、1円2円の差を争って「最下位になるとダメ」という価値観に縛られる必要はないという考えを示しました。

臼木智昭教授音
「一つの目安としては最低賃金が上がれば秋田県内の自分たちが住んでいる地域の賃金も底上げされていくという感覚はお持ちいただいてもいいんですけれども、決してその最低賃金が例えば最下位だからといって自分たちが働いてもらっている給料が、もうじゃあ来年から最下位という話ではないなくてですね。皆さんの所得自体が上げ幅が少し低いとか高いというのがあるかもしれませんけど、それだけを気にしすぎてですね地域の経済うんぬんというふうにして考えすぎてしまうとちょっとミスリードといいますか誤解が生じてしまう可能性があるんです」

臼木教授は、所得の向上から県経済全体の好循環を生み出す指標の一つとして、最低賃金をとらえるべきだと指摘しています。

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全国一律、または経済状況が似た地域で一律にするべきだという考えもある最低賃金、その論点は多岐にわたります。

新年度もまた、その在り方について、秋田でも活発に意見が交わされることになります。


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