経済への影響もさることながら、日本の米国に対する立ち位置は、より難しい状況にある。今回のイラン攻撃は核開発を未然に防ぐ効果があったとはいえ、米国やイスラエルの正当防衛とは言い難く、法的解釈では国際法違反が濃厚だ。しかし、日本政府は直接的な批判を控える。唯一の同盟国である米国を非難できるはずもない。

 米国は中東に空母をはじめとする戦力を集中させる傾向にあり、その分、東アジアの安全保障体制が手薄になる懸念もある。間隙を縫うように中国、北朝鮮、ロシアが東アジアで軍事活動を活発化させる可能性もあり、イラン情勢は文字通り日本にとって「対岸の火事」ではなくなる。


うごめく「派閥」

 こうした内外情勢をよそに、衆院選で急激に議席を増やした自民内では、大勝の余韻に浸るかのような雰囲気が漂う。単独政党として過去最多の316議席を獲得したことで、派閥の復活を彷彿(ほうふつ)させる動きが顕在化している。

 派閥パーティー収入の不記載事件で首相(自民総裁)だった岸田文雄が派閥の解消を表明したのは24年1月だった。以後、現副総裁の麻生太郎率いる麻生派をのぞく6派はすべて解散した。

 その麻生派には衆院選直後、新人議員11人を含め18人が入会し、計60人に膨らんだ。党本部は新人議員66人に対し座学で「教育」をしているが、形式的な内容にとどまっている。政治家としての具体的な振る舞い、支持者との関係構築、資金調達の方法などを学ぶために派閥入りした議員が多いとみられる。

 不記載事件の舞台となった旧安倍派では、幹事長代行の萩生田光一、選対委員長の西村康稔の呼び掛けで2月26日に約20人が集まり、会合を開いた。前々回の衆院選で落選し、2月の衆院選で復活した議員が中心だ。復活組以外の議員にも呼び掛けて、今後も懇親を深める見通しだ。

 旧岸田派は、岸田と総務相の林芳正派に分かれた形となっている。今も総裁選出馬への野心を隠さない林が勢力拡大のため新人議員らの「獲得」にいそしむ一方、岸田を政権時代から支えてきた元官房副長官の木原誠二らは防衛相の小泉進次郎とも近く、定期的に懇親会を開催する。岸田、林の両勢力が連携している気配はない。

 元幹事長の二階俊博が引退した旧二階派は、今回の衆院選で返り咲いた元総務相の武田良太を軸に連携を深める。3月5日に開いた旧二階派メンバーによる会合には約20人が参加し、武田をトップとする「研究会」を発足させた。

 旧茂木派に所属していた参院幹事長の石井準一(参院千葉選挙区選出)は、同じ千葉県選出の政調会長、小林鷹之(衆院千葉2区)を支援するグループの結成を検討し、外相の茂木敏充も旧茂木派の一部と引き続き会合を定期的に重ねる。

 政界を引退した元首相の菅義偉を慕う議員によるグループ「ガネーシャの会」も事実上、活動を再開した。菅が目をかけた小泉を将来的に首相とすべく、勢力固めを図っている。

 かつて自民は派閥同士が切磋琢磨し、各派閥の領袖が入れ替わるように首相を務めることで、自民勢力による「疑似政権交代」を続けた。それが自民の長期政権を可能にし、活力の源だったともいえるが、今回の動きが派閥復活に直結するかどうか。世間の目を気にしつつ、「自民の春」はしばらく続きそうだ。(敬称略)

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